原因不明の心身の不調に「もしかしてうつ病かも…」と疑ったけれど、本当にこの症状で精神科にかかっていいのかわからない……。

【漫画】『誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド』を読む

2022年に「軽度から中度のうつ」と診断された、イラストレーター・コミックエッセイストのハラユキさん。そうした自身の体験をもとに、うつ病の兆しから受診、うつ抜けまでを振り返ったコミックルポが「誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド」だ。

精神科医の監修のもと、うつ病の当事者となったハラユキさん自身の視点での疑問や迷いも漫画として描いている同作。気持ちの落ち込みを感じてからさまざまな気分転換を試みるも改善せず、状態の深刻さを確信したハラユキさんは、間を置かずに精神科に受診の予約をとったそう。

その選択がとれた背景には、知人の精神科医から精神科の基本を聞いていて“心の壁”が取り払われていたことが大きかったという。今回は著者のハラユキさんに、作中で精神科の敷居の高さや病院選びについても焦点を当てた思いを訊いた。

■「必ず描こうと思った」病院選び。当事者目線だからこそ見えるもの

――知人の精神科医のK先生とのやり取りの中で、精神科への「心の壁」が取り払われていたそうですね。以前はどんなところが敷居が高いと思われていたのでしょうか?

【ハラユキ】敷居が高いというより、「気持ちが落ち込む」のは誰でもあることなので、どこからが医療にかかるべきなのか、その見極めが難しいなと思っていました。あと、希死念慮が強いとか、命の危機にあるくらいじゃないと行かない場所だと思っていたかもしれません。この本の監修の星野先生が、本の中で「病院は、自分に生じた辛い変化がどんな状態なのか意見をもらう場所」という表現をされてるのですが、この表現は、とても的確だと思っています。精神医療は、まずは「いろんな患者を診てきたプロから意見をもらう場所」として捉えるほうが、そのハードルも下がるのではないでしょうか。

――ハウツー本では意外と省略されがちな「病院選び」を、精神科医の目線から一般的な選び方を紹介しつつ、あくまでハラユキさんがどういった過程で選んでいったか、迷ったかを辿って漫画にされているのが印象的でした。

【ハラユキ】病院選び、省略されがちですよね。でも、本当に多くの人が悩むポイントだし、回復できるかどうかの大きなキーポイントだとも思うんです。同時期に私は息子の新型コロナ後遺症治療もしていて「病院によってこんなに治療の知識が違って、いい先生だとこんなにあっさり治るんだ!」という経験もしました。なので、病院選びについては、必ず描こうと思ったんです。特に、精神医療は、数値などで判断できない分野な分、先生の考え方の差が激しいと私は思っています。相性のよしあしが大事な分野でもあるし、病院の見極めは本当に大事です。

――精神科では「クチコミは参考にならないかも?」と感じられたそうですね。普段の病院選びではネットのクチコミも参考にされているのでしょうか?

【ハラユキ】病院のクチコミは多少はチェックします。ひどいクチコミしかない病院は怖いし、行きたくないからです。でも、いろんな意見があるのは当然なので、多少、批判コメントが混ざっていても気にはしてません。そして、私が見た限り、メンタルクリニックのクチコミは批判のコメントが激しいものが多いなあと感じました。やはり、それはメンタル治療中の人が書き込んでいるというのも影響してるのかもしれません。なので、参考にはしつつ、でもそれを鵜呑みにはしない、くらいの距離感がいいのではないでしょうか。

――K先生のおすすめする病院の中から、実際に受診する病院を選ぶまでで気付いたことを教えてください。

【ハラユキ】おすすめの中からこの病院を選んだのは、ここがいちばんアクセス的に通いやすかったのと、WEBサイトから感じる雰囲気も悪くなかったからです。

個人的には、精神科に限らず、病院を選ぶときは、WEBサイトから感じるものを大事にしています。自分がそのとき求めている治療に力を入れているかどうかのチェックはもちろん、サイトのデザインや言葉選びみたいなものからも、相性は多少は探れるんじゃないかと思っているからです。サイトのデザインがゴージャスすぎたりファンシーすぎたり、きれいすぎる広告文句が並びすぎている病院には惹かれません。デザインがおしゃれじゃなくてもいいので、知性とやさしさと品を感じるサイトの病院に惹かれます。

取材協力:ハラユキ

病院探しも一大事!うつ病を疑ったイラストレーターが精神科の受診に至るまで