文=酒井政人

JBpressですべての写真や図表を見る

1区で佐藤圭汰が大逃げ!?

 新年へのカウントダウンが始まり、箱根駅伝を目指す指揮官たちの〝悩み〟が深くなっていく。そのひとつが区間配置だ。ライバル校の動向を予想しながら、チーム内のベストオーダーを考えていくことになる。

 そんな状況で2年連続の「駅伝3冠」を目指す駒大の〝スピードスター〟から仰天コメントが飛び出して、指揮官たちを困らせている。12月15日に行われたオンライン取材会で佐藤圭汰(2年)が大胆な〝大逃げ宣言〟をしたのだ。

「1区で絶対に区間賞を獲得して、区間新を出したい。5㎞を14分00秒のペースで行きたいと思っています」

 1区の区間記録は前々回大会で中大・吉居大和が樹立した1時間00分40秒。佐藤が予告通りに5㎞14分00秒ペースで突き進むなら、そのスピードに対応できる選手を1区に配置しないと大きく引き離されてしまう。各校の指揮官たちはどう読んでいるのか。

 あくまでも11月20日頃に取材したときの話だが、前回2位の中大・藤原正和駅伝監督は駒大のオーダーをこう予想していた。

「オーソドックスに考えると、鈴木芽吹君と篠原倖太朗君で2区と4区をまわして、佐藤君を3区に使うんじゃないでしょうか。山は前回も好走した山川拓馬君と伊藤蒼唯君。復路は安原太陽君、赤星雄斗君、花尾恭輔君あたりが軸ですけど、そのなかで一番調子の良い選手を1区に使えば、出遅れることはないでしょう。強いなというのが一番の感想ですね」

 駒大勢は11月25日八王子ロングディスタンス10000mで佐藤が日本人学生歴代2位の27分28秒50(U20日本記録)、鈴木が同3位の27分30秒69、篠原が同5位の27分38秒66をマークするなどエース3人が絶好調だ。

 前回は篠原が3区、鈴木が4区を担い、佐藤は出走しなかった。ただし、当初は佐藤が3区で、篠原が7区の予定だったという。しかし、佐藤が直前に体調不良(胃腸炎)になったため、篠原が3区に入り、7区には安原が起用された。なお佐藤は前回3区で「日本人最高記録」を目指していた。

 國學院大・前田康弘監督も母校・駒大についてはエース3人の配置を「1区(篠原)、2区(鈴木)、3区(佐藤)でしょうね」と予想。そして中大については、「1区でかき乱してくる可能性があるんじゃないですか」とエース吉居大和(4年)の1区起用を気にしていた。

 果たして優勝を狙うチームはどんなオーダーを組んでくるのか。

駒大、中大、國學院大のオーダーを予想

 まずは王者・駒大。今季は佐藤の区間(出雲と全日本は2区)で明確なリードを奪って、悠々とレースを進めるのが勝ちパターンになっている。佐藤は過去の最長レースが全日本2区の11.1㎞。もし1区に入った場合、5000mで現役日本人学生最高の13分22秒01を持つ吉居駿恭(2年)らが候補に挙がる中大は迷うことなくついていくだろう。背後にピタリとつけられるのは佐藤も嫌なはず。一方、3区なら自分ペースで走りやすい。佐藤の持ち味を生かすなら1区より3区の方がいいだろう。

 2区は上りが強い主将・鈴木が濃厚。篠原はライバル校の動向を見ながら、1区もしくは4区に入るのではないだろうか。もし中大・吉居大和が1区に入っても、篠原なら十分に対応できる。1区がそれほどハイペースにならないと読めば、4区に配置して、リードを広げる役割を担うはずだ。

 では、28年ぶりの総合優勝を狙う中大はどうか。

「2区はエースがやるべきだと考えていますので、大和か中野翔太が担うことになるんじゃないでしょうか。3区もタイム差が出る区間なので、どちらかを配置するのが一番オーソドックスかなと思っています」と藤原監督は話していた。

 前回は2区吉居大が区間歴代8位の1時間6分22秒で走破。3区中野も〝連続区間賞〟でトップを駆け抜けた。1区は前回1区を4位と好走した溜池一太(2年)と吉居駿が候補で、どちらかを復路にまわす見込みだ。そして2年連続で9区を好走している湯浅仁(4年)を往路に投入したい考えを持っている。

 いずれにして吉居大でトップを奪って、中野でリードを広げるのが〝勝利の方程式〟になるだろう。吉居大は2区が有力だが、佐藤や篠原が1区に来ないと読めば、絶対エースを1区に起用して、2区は中野か湯浅で逃げ切るという戦略も考えられる。どんなオーダーで勝負を仕掛けにくるのか。

 前回4位の國學院大は伊地知賢造(4年)、平林清澄、山本歩夢(ともに3年)の3本柱が強力だ。特に平林は前回も2区を好走しており、全日本は各校のエースが集結した7区で区間賞。今回は2区で「1時間6分台」を狙っている。3本柱を1~4区に投入して、「てっぺん」を目指す戦いを繰り広げるだろう。

 箱根駅伝の「区間エントリー」は12月29日に行われる。補欠競技者との交替は1日最大4名(全6名)で、正競技者同士の区間変更は認められない。なお前回は駒大が当日変更で4名(3、5、6、8区)、中大は3名(2、3、7区)、國學院大は4名(1、2、4、10区)を交替している。おそらく主力選手は補欠登録して、ギリギリまで戦略を明かさないようにするだろう。

 指揮官たちの眠れない日々はまだまだ続くが、ファンとしては各校のオーダーを予想するのも箱根駅伝の楽しみ方になりそうだ。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  箱根駅伝の「シューズ争い」に異変?ナイキが独走する中、今年はプーマが躍進

[関連記事]

箱根路を終えた駒大・田澤廉、大八木弘明監督と歩んだ4年間と目指す場所

箱根駅伝の常識を打ち破った中大・吉居大和の爆走「花の2区」の新たな攻略法

2023年11月25日、八王子ロングディスタンス、右から駒大の佐藤圭汰、鈴木芽吹、篠原倖太朗