ディズニープラスの「スター」にて、完全オリジナルファンタジー・アドベンチャー大作「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」が独占配信中だ。本作は“現実世界”と“異世界”=ウーパナンタで起こる物語を、実写とアニメを交錯させながら描く意欲作。空想の世界にふける孤独な少女、ナギ(中島セナ)の前に突然、ウーパナンタのドラゴン乗りの少年、タイム(奥平大兼)が現れる。彼は崩壊の危機にある故郷を救うため、行方不明の英雄、アクタ(新田真剣佑)を捜して次元を超えてやって来たのだ。かくして、出会うはずのなかった少年少女の運命が交錯し、世界の命運をかけた壮大な冒険がスタートする!MOVIE WALKER PRESSでは本作の魅力を発信する特集企画を展開中。折り返しに差し掛かっている本作だが、実は、物語の全貌が見えてくるのが今日から配信のエピソードなのだ!本稿ではこれまでの展開をいっきに振り返り前半を総括しながら、展開が大きく動きだす第4話までを、ライターのイソガイマサトがレビューする。

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※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

第3話まででちりばめられた点がつながり、物語の全容が見え始める

第1話では「現実世界」に住む、生きづらさを感じている女子高校生ナギと、アニメで描くウーパナンタで繰り広げられる、大冒険スペクタクルが交互に描かれた。漫画家である母を亡くした過去を持つナギは、幼いころから音に色が付いて見えたり、突然意識を失うようにして不思議な夢を見ることから、同級生たちにも嫌厭され、周囲に溶け込めない日々を送っている。

一方ウーパナンタでは、ドラゴンの声を“聴く”ことができる“ドラゴン乗り"たちが、世界を崩壊に導く恐ろしい敵、ジャイロ(声:津田健次郎)を倒すべく活躍。タイムは、英雄アクタが率いるアクタ空団に所属する少年だが、声を聴くことができず落ちこぼれ扱いの“ドラゴン乗り"だった。それでも兄弟のように慕うアクタと固い絆に結ばれていたが、いよいよ挑んだジャイロとの決戦の最中、タイムをかばったアクタが行方をくらませてしまう。空団の仲間もアクタは死んだと絶望するのだが、なんとアクタの姿は現実世界にあった!という驚きの展開で、混沌とした状態に突入したまま締めくくられる。

続く第2話では現実世界において、ナギの亡くなった母親、ハナ(田中麗奈)が取り憑かれたようにドラゴンの絵を描いていたことが明かされる。そしてウーパナンタのタイムは、“理(ことわり)の外”=現実世界の研究者、サイラ(SUMIRE)に協力を仰ぎ、アクタを救うために理の外へ行く決意をする。そんなアクタは、現実世界で驚きの姿に変貌を遂げており、動画配信者としてリスナーの相談に乗っていたり、自暴自棄になって酒におぼれる日々を送っていた。だが、国選弁護人、虹咲(成海璃子)と出会ったことでその心情にも変化が。

そして終盤、タイムは理の外へ行くためにはジャイロドラゴンボンズの泡に飛び込む方法しかないと決断する。ジャイロと対峙し、意を決したタイムと時を同じくして、母の部屋に入ったナギ。そんな彼女の目の前に、突然タイムが相棒のドラゴン、ガフィン(声:武内駿輔)と共に出現するのだった。

そして第3話では、タイムが現実世界に来た事情を聞いたナギとソンが、アクタ捜しに協力。配信者としてのアクタを信望する男から情報を得て、見た目も思考も変わりはてたアクタと、神奈川県横須賀市の猿島で再会するまでが描かれた。もはやアクタにウーパナンタに戻る意志はなく、現実世界に理想の楽園を作り、生きようとしていた。一方で第2話に登場した不穏な雰囲気の男、柴田(森田剛)が謎の男たちとコンビニをアジトにすべく占拠。彼らの正体と目的とは?

このように、物語の輪郭を点描のように少しずつ露わにした全8話で構成される本作だが、前半のクライマックスとも言える第4話では、個々の点がしっかりと線を作り、作品全体の構造やそれぞれのキャラクターの思考、誰がなんのために、どういう戦いに挑もうとしているのかがようやく明らかになってくるから、身体が自然に前のめりになる。

■ウーパナンタを救うことを断念したアクタと、コンビニ店員・柴田のまさかの正体…

アクタとタイムが暮らしていたウーパナンタはジャイロが支配し、危機的な状況に。ところが、先述のとおりアクタにはかつての英雄の影もなく、ウーパナンタに帰ることも守ることも断念。タイムに向かって「夢を見てないで、現実を見ろ。守るべきものを見つけるんだ」と言うと、自分を助けてくれた虹咲のお腹に新しい命が宿っていることを明かす。

一方、そんなアクタに絶望したタイムは半人前ながら自分の手でウーパナンタを救うべく立ち上がり、現実世界に居心地の悪さや疎外感を覚えていたナギも「タイムといるとなにかが変わる気がする。私にも手伝わせて!」と言って行動をともにするようになる。さらに、柴田の正体が10年近くも前に現実世界に飛ばされ、ウーパナンタを取り戻すために暗躍している伝説の“ドラゴン乗り”=スペースであることが彼の狂おしい過去と共に明かされる。

まさに役者が揃った!という感じだが、彼らのそれぞれの願いと想いが交錯するドラマを、実写とアニメで、現実世界の横須賀とアクタが創造した猿島の「アクタ村」、異世界のウーパナンタを舞台に描くこのめくるめく壮大でスリリングな世界観は本作でしか味わえないものだ。

■現実世界を支配するため、タイムへの接触を図る柴田ことスペース

アニメで描かれていたタイムやアクタ、スペースが同じビジュアルのまま生身の肉体で躍動する姿にもワクワクさせられる。ナギとタイムがガフィンに乗って空を飛ぶシーンも楽しいし、初めて飲んだラムネのシュワシュワっとした喉越しや自動ドアに驚くタイムもユーモラスで微笑ましい。

けれど、正体を明かしたスペースがタイムに「(ウーパナンタに)戻る方法を知りたいかい?」と不穏な言葉を投げかける第4話の終盤では暗雲が立ち込め、一気に緊張感が走る。地響きとともに、スペースは「オマエは人間たちの心を許しているようだが、それは間違いだ!」と続け、「我々がこの世界を支配する」と宣言。恐ろしい形相でまさに戦いの狼煙を上げる怒涛の展開に!

■猿島と共に宙に浮くアクタの目的とは?

とんでもない決意をするのは彼だけではない。

アクタが「さあ、やるか!」と言うと、猿島が宙に浮かび上がる。はたして、それはなにを意味するのか?しかも、ウーパナンタから、彼らの世界では「理“ことわり”の外」と言われている現実世界の研究者のサイラ(SUMIRE)までやって来て、「あなたがナギね」と、まるで彼女を捜しにきたようなことまで言うから、人々の思惑が絡まり合いますます目が離せなくなる。新たに“現実世界側”となったサイラの目的はいったいなんなのか?

ただ、はっきりしているのは、全員が守るべきもののためなら戦うことも辞さない、それぞれの正義で動いているということだ。第4話はそれらが激突することを予感させながら終わり、様々な不安やいくつもの謎が残しながら、第5話への期待を煽る。観る者はなにがなんだかわからないまま、気がつけば「ワンダーハッチ」ワールドに引きずり込まれ、愛と冒険の旅をしているというわけだ。

はたして、異なる正義がぶつかり合うこの現実世界で、タイムはウーパナンタの危機を救うことができるのか。スペースが口にした「ウーパナンタに戻る方法」とはいったいなんなのか。アクタが作り上げた理想の楽園が意味するものとは。そして、すべての鍵を握るナギの、本人すら知らない秘密とは…?

そのすべてが気になって仕方がない。第4話でアクセルを一気に踏み込む人が多くなるのは間違いないだろう。

文/イソガイマサト

ナギたちの日常に、アニメーションで描かれたウーパナンタの物語が差し込まれていく/[c] 2023 Disney