12月21日、『バルダーズ・ゲート3』がPlayStation 5で発売となった。

参考:【画像】『DOS2』と『バルダーズ・ゲート3』の世界観

 界隈での評判や「Game Of The Year」の受賞などから同タイトルを知り、プレイしてみたいと感じたフリークも多いはず。本稿では、『バルダーズ・ゲート3』を開発・発売するLarian Studiosに着目し、同社の看板タイトルである『Divinity: Original Sin』(以下、『DOS』)『Divinity: Original Sin 2』(以下、『DOS2』)との共通項、そしてヒットに影響を与えたであろう新たな要素について考えていく。

■Larian Studiosが贈る、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』ベースのRPG『バルダーズ・ゲート3

 『バルダーズ・ゲート3』は、「世界初のロールプレイングゲーム」とされているテーブルトークRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、『D&D』)をベースにしたファンタジーRPGだ。プレイヤーは、固有の人物的背景があらかじめ用意されている「オリジンキャラクター」、種族や名前、外見、能力を自由に設定できる「カスタムキャラクター」のどちらかから操作する主人公を選択。冒険のなかで幾度となく訪れる重要な局面を自身の決断とダイスの目によって乗り越え、物語の結末へと歩みを進めていく。

 開発・発売を行っているのは、ベルギーの独立系スタジオ・Larian Studios。洋ゲーに詳しい人には、「Divinity」シリーズを手掛けたことでよく知られる企業だ。昨今、台頭する“独立系”だが、同社はすでに20年以上の歴史を持つ。これまでに『Divine Divinity』や『Beyond Divinity』『Divinity II』『Divinity: Dragon Commander』『DOS』『DOS2』といった作品をリリースしている。

 特筆すべきは、その多くがユーザーから高評価を獲得している点。(『バルダーズ・ゲート3』を除いて)直近に発売された『DOS2』(2017年9月発売)は、Steamプラットフォーム上にて「圧倒的に好評」という最高のレビューランクへと分類されている。つまり、『バルダーズ・ゲート3』で同社が勝ち取った成功は、「たまたま当たったラッキーパンチ」ではなく、「長い歴史のなかで積み重ねられてきた経験を集約した結晶のようなもの」であると考えられるだろう。

 上述のラインアップからもわかるとおり、Larian Studiosはずっと「Divinity」の名にこだわり続けてきた。あえてそこに分類されない作品を発表した意図について、「『DOS2』が十分な評価を獲得したことでシリーズに区切りがついた」という見方ができると同時に、「『バルダーズ・ゲート3』に(あえてシリーズから脱却させるほどの)並々ならぬ思い入れがある」という想像も可能なはずだ。

 PS5版バルダーズ・ゲート3』の価格は、7,800円(税込)。なお、同パッケージの発売に合わせ、2024年1月5日までの期間、SteamではPC版の10%オフセールも開催されている。

■『バルダーズ・ゲート3』に感じる『DOS』『DOS2』の息吹

 先にも述べたとおり、開発・発売元のLarian Studiosは『DOS』『DOS2』を制作したスタジオとして知られている。これらもまた『バルダーズ・ゲート3』と同様に、ファンタジックな世界観、攻略に対する自由度の高さを強みとした作品たちだ。

 あえて『バルダーズ・ゲート3』との違いを挙げるとすれば、それは前者がオリジナルの世界観を持つ一方で、後者は『D&D』をモチーフとした世界観を持つ点。つまり、それ以外の部分に関しては、多くが両者の共通要素であるということになる。同タイトルの面白さを支える戦略的なターン制バトル、疑似リアルタイムで行われていくオンラインマルチプレイ、キャラクターの生まれや能力値が物語の進行に対して持つ影響力なども、両作から踏襲している要素だ。

 また、類似するほかの作品にはあまり見られない特徴として、『DOS』『DOS2』には「すべての登場人物が個別のインベントリを持ちつつも、仲間キャラクターに関しては実質的にそれを共有する」という性質もある。基本的にアイテムは所持する本人しか装備・使用ができないが、仲間には自由にアイテムを渡すことができる。この点もまた、『バルダーズ・ゲート3』に脈々と受け継がれている両作のエッセンスのひとつだ。シミュレーションRPGのようにフィールド上での立ち位置が重要となる3作のバトルシステムにおいて「自身の立ち位置を生かし、ともにプレイする誰かの代わりにアイテムを拾得できる」という点は、ロールプレイへと没頭させるための大切な要素となっている。

 一方、ストーリー部分に関しては「ダイスで運命を決める」という点が、両者の明確な違いである。テーブルトークRPGの特徴にインスパイアされた同要素は、『バルダーズ・ゲート3』の最大のアイデンティティだと言えるだろう。そのようにして展開していく物語が同タイトルのひとつの魅力であり、『DOS』や『DOS2』以上に『バルダーズ・ゲート3』が評価された理由でもある。

 いかにも洋ゲーらしく、和ゲーに慣れた日本人からすると、ややとっつきづらいゲームデザインを持つ『バルダーズ・ゲート3』が海外を中心に話題を呼び、「Game Of The Year」を受賞するに至った背景には、日本国内以上に海外でテーブルトークRPG、さらには『D&D』が支持されてきたことも多分に影響しているのだろう。その前提には、プレイヤーがそうした世界観に没頭できるだけの完成されたシステムがあった。そこに世界観やグラフィック・演出面の良化がくわえられていたからこそ、同タイトルは文字どおり、2023年を代表する1作となり得たのではないだろうか。

 PS5版の発売、日本語へのローカライズをきっかけに、『バルダーズ・ゲート3』を手に取るフリークも多くいると想像する。誰にでもおすすめできるような遊びやすいタイトルではないが、もしそのゲーム性に魅了されたならば、ぜひ『DOS』『DOS2』もプレイしてみてほしい。決して小さくはない、「Divinity」シリーズとのつながりを感じてもらえるはずだ。

 なお、Steamプラットフォーム上ではPS5版バルダーズ・ゲート3』の発売に合わせ、『DOS』『DOS2』もまた、セール価格で販売されている。2024年1月5日までの期間であれば、前者を75%オフの995円、後者を70%オフの1,494円(ともに税込)で購入できる。

(文=結木千尋)

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