オビエドの元スペイン代表MFサンティ・カソルラが、スペイン紙『マルカ』のインタビューに応じた。

 まるで両足に魔法を宿したようなボールコントロールと、フットボールを楽しむ姿でサポーターを魅了する“太陽”は、始まりのクラブで充実の時間を過ごしている。スペイン北部アストゥリアス州に生まれ、地元オビエドのカンテラに入団。2001年にビジャレアルカンテラに移り、18歳でトップチームデビューした後は、マラガの黄金期を築き、アーセナルにも在籍した。スペイン代表としても2度のEURO優勝を経験するなど、輝かしいキャリアに。ただその暗部には、右足切断の危機と9回に及ぶ手術という大ケガに泣き続けた日々もある。それでも、“太陽”は必ず昇るのだ。約2年間止まっていた時をピッチで再開させると、スペイン代表に返り咲くほどの復活を遂げた。そして今シーズン、セグンダ(スペイン2部)が定める最低賃金の年俸と、ユニフォームの売り上げの10パーセントをカンテラに投資するという契約で、オビエドに復帰している。

 セグンダ第21節終了時点で、10位につけるオビエド。ただ、初白星は第8節で、一時は降格圏に低迷。またカソルラ自身も、コンディション面から初出場が第7節となるなど、序盤戦は苦境に陥った。トップハーフで前半戦を折り返した今、リーグ戦8試合に出場したカソルラは「とてもポジティブ。色々なことが少しずつ起こったけどね。最初数カ月はコンディション不良で欠場が続いたし、その間はチームも不調で、ピッチ内から手助けすることができなくて大変だった」と告白。続けて「グループと一緒に仕事をするようになり、また監督交代が行われたことで結果が上向いた。その後にケガで数試合欠場するという不運はあったけど、それを除けば、すべてにとても満足だ。ここに到着してから、素晴らしい経験をさせてもらっている」と振り返った。

 また、カソルラは「人々の愛情は、フットボーラーに対する尊敬の上にあるものなんだ。故郷のオビエドだけでなく、これほど多くの愛情を受けるとは想像していなかった。エルデンセ、アモレビエタ、サラゴサ…どこに行っても、人々は僕に愛情を示してくれた」と口にするとともに、「代表チームで尊敬を集めたのは事実だけど、どんなタイトルよりも、人々の愛情こそが最高のトロフィーだ、といつも言ってきた」と強調している。

 プロキャリア21年目のシーズンに挑んでいるカソルラは先月、39歳の誕生日を迎えた。甘苦で彩られた冒険については「すべてがあっという間だった。最初のEUROでのプレーも、アーセナルとの契約も、ビジャレアルでのチャンピオンズリーグも、まるで昨日のことのように覚えている。この世界での出来事は、とても早いんだ」と回想。さらに「39歳の僕は故郷に戻ってきたけど、引退してからの方がもっと楽しめる、と思うことも多々あるよ。すべてがあっという間で、自分が成し遂げたことを受け止める時間がないからね。でも、できる限りはキャリアを伸ばそうと思う。結局は自分の好きなこと、やりたいことで、体と頭が楽しめる限りは続けるつもり」と現役続行の意思を明かした。

 オビエドとの現行契約は来夏まで。年齢的にも1年1年が勝負となるなかで、否が応でも“引退”という選択肢も視野に入れなければならないが、カソルラは「引退が怖い。日々の生活、トレーニング、チームメイトと過ごすこと、試合当日の緊張、遠征がとても好きな僕にとってはね…。終わりが近いと悟ったとき、決断の一歩を踏み出さなければならないとき、それは簡単なことではない」としつつ、「今は近くにも遠くにも見えないけど、すべてに備える必要があるんだ」と心構えを語っている。

 太陽は必ず昇る。反対に必ず沈むものでもある。だからこそ今、故郷のクラブで輝く39歳カソルラの活躍を目に焼き付けておきたい。

今夏からは故郷・オビエドでプレーするMFカソルラ(写真はビジャレアル時代) [写真]=Getty Images