2024年1月から、アルバム『世界/WORLD』を提げて全国ツアー『人、々、々、々』を回るCRYAMY。そのツアーに出演する対バン相手との対談シリーズ、第2弾に登場してくれるのはシンガーソングライターの小林私だ。かねてよりCRYAMY・カワノのファンであることを公言する小林だが、彼とライブハウス叩き上げのバンドマンであるカワノはどのように交わり、どんなところで共鳴しているのか。不思議なグルーヴの会話をお楽しみいただければと思う。

── 小林さんはカワノさんを尊敬しているということをことあるごとに口にされていますよね。

小林 いろいろなところで吹聴してます(笑)。

── 出会いはいつだったんですか?

小林 2年前ぐらいにTOKIO TOKYOでライブをご一緒したのが最初でしたね。イベンターさんがツーマンを組んでくださって。それが初の邂逅でした。僕はもともとCRYAMYが好きだったんで、「今日で嫌われるんだろうな」って思いながらライブに出ました(笑)。

── でも嫌われなかった?

小林 嫌われなかった(笑)。そこから仲良くさせてもらうようになって。

── カワノさんはその時小林私という存在は知っていたんですか?

カワノ 恥ずかしながら、一緒にやるってなった時に初めてちゃんと曲を聴かせてもらって。それで純粋に曲がかっこいいなと思いました。ライブもすごくかっこよくて。声がかっこいいじゃないですか。素晴らしいなと思って、楽屋でいろいろおしゃべりして仲良くなりました。僕も明るく喋るのあまり得意ではないというか、気を使って喋るタイプなんですけど、小林くんもわりともの静かな感じなので、初対面の時から落ち着いて喋れたんですよ。それで「今どきの若者なのにこんな落ち着いた方がいるのか」と(笑)。

── それで仲良くなって、ごはんとかも行くようになって。

小林 そうですね。僕らふたり、身なりが一番汚い時期で(笑)、食べる場所探し歩いた結果、きれいなビルの超きれいなパスタ屋さんみたいなのに入っちゃって、一番端っこの席に案内されました。

カワノ メニュー見ながら「高えな」って言って、俺、素パスタでいいやってなんもトッピングしてないやつを頼んだ記憶がある(笑)。

── (笑)CRYAMY小林私って、そもそも出てきたところが違う感じがするから、交わっているのが面白いなと思うんですよね。

小林 片や叩き上げ、片やインターネットですから。

カワノ 僕はインターネットに詳しくないからよかったのかもしれない。単純に出てきた音楽と声がすごくかっこいいなと思ったんです。アコースティックギター弾き語りをやるシンガーの方って、表現が難しいけどフォークっぽいというか、ストロークでコードを弾いて、8ビートでみたいなのが多い中で、小林くんはスイングみたいなリズムで組み立てていて、そこにめちゃめちゃハマる渋い声で歌っていて。ステージ上での喋りも面白いじゃないですか。俺、さだまさし好きだから。初めてさだまさし観た時、3時間ライブやって、体感2時間半喋ってたから(笑)。

小林 僕はそんなまとまった話は1回もしたことない。思いついた漫画の話をポンと置いてるみたいな感じなんで。

── 小林さんはCRYAMYのことはどういうきっかけで知って、どういうところがいいなと思ったんですか?

小林 僕は高校生の時にYouTubeで「テリトリアル」のMVを観て。なんてギターの音がデカいんだと思って、そっからめっちゃ聴くようになったのが最初ですね。ちょうど「月面旅行」のMVが出るちょい前か、出たちょい後ぐらいのタイミングだった気がする。

── 実際に会ったカワノさんの印象はどうでした?

小林 意外と小柄だなって思った(笑)。

カワノ よく言われるんですよ。高く思われることが多いから。

小林 細長そうなイメージがあったけど、小さい可愛らしいフォルムしてる(笑)。

── 小林さんのライブって独特じゃないですか。

カワノ うん、独特ですね。

── それはCRYAMYがやってることとも違うし、世の中にいる他のアーティストとも違うと思うんですけど、その面白さみたいなものって、カワノさんから見てどういうところにあると思いますか?

カワノ 僕はまず曲が面白いなっていうのが第一。かつ、サポートメンバーとかを従えるわけでもなく、ちゃんとひとりで完結できるっていう。ある意味緊張感があるじゃないですか、演奏にも歌にも。他の音があったりとか誰かに任せるとか、たとえばバンドでもそうなんですけど、ギターボーカルなんかギター誰かに任せて歌えば分担できて楽じゃないですか。でもそれをしないから生まれる緊張感みたいなのもあると思っていて。小林くんはライブの印象でちょっとコミカルな見られ方をすることももしかしたらあるかもしれないんだけど、ちゃんとそういう緊張感が自分の中に残る感じがして、そこが僕は面白いなと思う。

小林 マジで、カワノさんしか言ってくれないですからね。曲に関してはカワノさんにしか褒められたことないまである(笑)。僕はもうライブがあれだから、ちゃんとしたライブをやってきたバンドからしたら完全に気持ち悪いだろうなって思うんです。だからCRYAMYと初めてライブをやった時は前日まで普段のまま行くか、完全に嘘ついて、しっぽり歌って帰るかっていうのをめちゃめちゃ迷ってましたね。でももういいか、やっちゃえって思って、いつも通り出た。

── 憧れのバンドを前にカッコつけようとしたんですね。

小林 今みたいにカワノさんのパーソナリティーとかをちゃんと知ってたら、何も疑いなくそのまま出てたと思うんですけど、全然知らなかったから。めっちゃ怖いと思ってましたからね。

── でも、確かに小林私のライブに緊張感があるというのはそのとおりで、だからあの緩急の落差も生まれるんだろうなと思うし。

カワノ 見てる人はきっとそこに何かを見出してると思う。

── 小林さんから見たCRYAMYのライブはどういうものですか?

小林 ワンマンを観に行かせてもらうと、アンコール3回やって全部で3時間くらいやったりしてるんですよ(笑)。何回「世界」やるんだと思いながら、でもあの長さだからこそ没入していくというか。それこそアンコール3回くらいやった時も、アンコール1回目でまだ(フジタ)レイさんとカワノさんが服着てたまま出てきたから、「これは絶対もう1回アンコールやるな」と思って。脱いでから終わるから、もうちょいかかるなと覚悟しながら観てたんです。長いライブ観てるとだんだん腰とか痛くなってくるし、膝にもくるし、でもそれをみんな自分の体に持っておきながら、でも観てるみたいな状態、空間はCRYAMYにしか作れないものだという気がします。

再録でさらに長尺になった「世界」とかも、途中の長い間奏というか、歌ってないパートがあるじゃないですか。あれも最初「間奏入ったんだな」って思って聴くんですけど、自分の中で「終わったな」って思ってもまだあるんですよ。その時間がだんだん長いとかを通り越して自我と向き合う時間みたいになってくる。それを、ライブハウスに自分で動いて行って、その場で振動を感じて、周りに人がいるというストレスもあって、体はずっと立ちっぱなしっていう酷使の仕方をしてるっていうストレスもあって。その中でだんだん自分と向き合う時間みたいなのが生まれてくる時が結構ある。あとカワノさんのMCもめっちゃ好きです。すごく優しいことをずっと言ってる時もあれば、同じ人とは思えないぐらいのこと言ってる時もあるし、「何言ってんだ、これ」みたいな時もあれば「分かるな」みたいな時もある。

── それはでも小林私のライブもそうですよね。その日思いついたことを喋っている感じ。それによって、結果的に客の9割がポカンとしていてもいい、という。

小林 うん、空間コントロールをしたくない気持ちはめちゃくちゃ一緒です。みんなで僕が喋ったことにみんなでガハッと笑われるよりは、ポカンの方がめちゃくちゃ安心する。ここにはいろんな人がいっぱいいるんだなって思えるから。ウケたらウケたでうれしいですけど、煽動はしたくないなと思いますし。

カワノ 煽動したくないのは本当にそうだね。

── だから、そういう整った空間みたいなのがやっぱり嫌いなんですよね。おふたりともワンマンライブが嫌いだっていうことで有名ですけど(笑)。

小林 「ワンマンが嫌い」って話もよくしますね(笑)。

カワノ 嫌なんですよね、ワンマンは。

── 万事用意されてる感じが嫌ってことなのかなあと。

小林 そうですね。あとなんか、自分が好きなやつばっかり集まってんのも、ちょっと怖い。

カワノ 僕も自分のこと興味がない人、なんならちょっとバカにした感じで冷笑するような目で見てくる人っていうのもいるのが自然なことかなというのがすごくある。そういう環境に身を置いておかないと、変に勘違いしちゃうじゃないですか。それが嫌だからっていうのもあるし、あと単純にアンコールが終わらなくて長くなってしまうから。

小林 僕、そこは真逆ですよね。アンコールを一切やらないから。

── 先日のPK Shampoo主催の『PSYCHIC FES』ではカワノさんの体調不良による出演キャンセルを受けて小林さんが急遽代打でステージに立つということもありました。

カワノ 本当にありがたかった。前にふたりで焼肉を食いに行ったときに、冗談で「俺は死ぬかもしれない」みたいなことを言ってたんですよ。

小林 CRYAMYシカゴに行く前ですよね。

カワノ そう。「クソ忙しくてもうダメだ、死ぬかもしれない」とか言って笑ってたら、本当に死んだっていう(笑)。

小林 シカゴ行ってる間も連絡を取ってて、「死なないでくださいね」とか言ってたんですけど。

── 実際、CRYAMYの代わりにライブをやるというのはどうでした?

小林 久々にめちゃくちゃちゃんと緊張しましたね。全然緊張しないほうなんですけど、代打で出るっていうのがあんまりないことですし、こっそりCRYAMYの曲もやったし。

── CRYAMYの「物臭」をやったんですよね。

カワノ (PK shampooの)ヤマト(パンクス)からも連絡が来て、「小林くんやってくれたよ」って。本当に僕の方が恐縮なんですけど、代打とはいえ自分のステージで、ちゃんとお気遣いをいただいて。それをすごいうれしかった。本当にありがとうございます。

── 小林私がそうやって誰かの代打みたいな形でライブをやるっていうこと自体がかなりのレアケースでしたね。

カワノ 側から見たらインターネットでずっとやってたやつとライブハウスでやってたやつとっていう状態だから、知らない人からしたら意味わからなかったでしょうね。

── でも知ってる人からしたらこれ以外はないって感じですよね。それがわかってるから小林さんに声がかかったわけだし。でも確かに、ふたりは何がよくて一緒にいるのかっていうのは気になります。

小林 結局、根底に根暗がない人とはそこまでの仲になれないじゃないですか。この人は奥底で気持ち悪いんだ、みたいな喜びというか。CRYAMYのイベントに呼んでいただいた時にカワノさんに紹介してもらって、(時速36kmの)ヒデアキさんと初めて喋った時のことをいまだにめちゃくちゃ覚えてるんですけど、初対面だったからどう喋ろうって思ってたら、そのうちカワノさんが席を外しちゃって。ちょっと気まずいじゃないですか。そこで沈黙を破った最初のヒデアキさんの一言目が「『わたモテ私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)』観てる?」だったんです(笑)。その瞬間、俺はこの人が大好きだと思って。

カワノ あいつはそういうところあるんだよな。小林くんはすっと仲良くなったけど。

小林 コミュニケーションとしては完全に間違ってるじゃないですか。僕に対しては大正解だっただけで。僕も『わたモテ』はめちゃめちゃ好きだし、でも「『わたモテ』好き」って言わないほうがいいのも分かってるし。でもそんなヒデアキさんと仲良くしてるカワノさんっていうので、そこの信頼もようやく見えてきたというか。僕たちはキモオタの仲間なんだって感じましたね。

── 今回、小林さんがCRYAMYのツアーに出るわけですけど、このメンツの中でも異色な感じがする人もいるかもしれません。

小林 バンドじゃないですし、ちょっと文脈も違うし。

カワノ だからこそ意義深いですよね。しかも、ライブ前日の1月18日が小林くんの誕生日で。

小林 25歳になるんですけど、一番新品の僕をお届けします(笑)。別に変わらないですけど。ありがたいですね。「OKです」ってすごい勢いで言いました。たぶんカワノさんからの誘いじゃなかったら断ってるスケジュールだったんですよ。僕、誕生日の前後は基本休みたいので。

カワノ 本当に申し訳ない

── 楽屋にケーキ用意しましょう。

小林 いえいえ、大丈夫です。そういう日じゃないです。でも、何度も誘ってもらってるんで、今度はいい加減僕が呼ばないとって思ってます。僕が自主でやると場所がホールとかになりがちなんですけど、CRYAMYはハコで観たいなと思っちゃうから、ライブハウスでやるときは呼びたいと思います。

── 小林さん、自分のライブで関係ないCRYAMYのライブの告知してたりしますもんね。

カワノ あれは本当に申し訳ない。ノリで作った野音のTシャツもわざわざ買ってくれて、しかもライブ映像がちゃんと残るライブで着てくれたらしくて。怒られるんじゃないかなと思ったけど、でも素直にすごくうれしいです。あんまり応援されたりとか慕われるようなバンドではないから。なんか派閥ってあるじゃないですか。そういうのを作るような人たちからはすごく嫌われてるので……。

── 小林私はそういう派閥とか関係ないところからきていますからね。

小林 そうですね、まったく関係ない。ライブハウス上がりでもないですし、全然知らないんです。

カワノ そういう関係って結構疲れちゃう、というか僕が好きではないので結果的に薄くなってしまったけど、そのぶん、それこそ今回のツアーでお声掛けをさせていただいてるみなさんはプラットに人として付き合えてる人たちなのかなって思う。

── 人同士の付き合いってことで、小林さんの誕生日もしっかり祝いましょう。よくあるじゃないですか、ライブ中にケーキが出てきたりするやつ。

小林 いやいや、サプライズとか好きじゃないんで(笑)。Twitter(現:X)とかで「今日誕生日なんです」って言うのも恥ずかしくて。

── この対談がインターネットに載るので、CRYAMYのファンはみんな知ることになりますから。

小林 僕の誕生日、マイメロディと一緒ですから(笑)。マイメロディビートたけし、それから僕の父親と一緒。その三すくみです。

── たけしマイメロが一緒なんだっていう(笑)。

小林 そこですよね。あとおすぎも一緒ですし、必然的にピーコも一緒。

── 曲者ばっかりって感じ。

カワノ 俺、米倉涼子と一緒。

── 米倉涼子ビートたけしの対バンということで。

カワノ ダンカンこのやろう!」って感じでお付き合いいただければと。いいんですかね、こんな終わり方で(笑)。

Text:小川智宏 Photo:山本佳代子

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<公演情報>
CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』
DAY0『HAPPY? NEW YEAR』 ※ワンマンライブ
1月5日(金) 東京・下北沢DaisyBar ※SOLD OUT

CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』
1月8日(月・祝) 長野・松本ALECX  w/SuU、Hue's
1月13日(土) 宮城・仙台MACANA w/JIGDRESS
1月19日(金) 埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3 w/小林私
1月21日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA w/Khaki
1月28日(日) 大阪・Yogibo META VALLEY w/a flood of circle
2月10日(土 )愛知・名古屋CLUB UPSET w/pavilion、突然少年
2月11日(日) 京都・磔磔 w/Helsinki Lambda Club、Hammer Head Shark
2月24日(土) 広島・4.14 w/鋭児
2月25日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room w/鋭児、天国注射
3月2日(土) 福岡・LIVEHOUSE CB w/LOSTAGE
3月3日(日) 熊本・Django w/LOSTAGE
3月15日(金) 兵庫・神戸太陽と虎 w/Analogfish、KING BROTHERS
3月16日(土) 香川・高松TOONICE w/Analogfish
3月20日(水・祝 )福島・club SONIC iwaki w/時速36km
4月6日(土) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE w/w.o.d.
4月7日(日) 石川・金沢van van V4 w/w.o.d.
4月14日(日) 北海道・札幌SPiCE w/時速36km
料金:前売4,000円/当日4,500円
※オールスタンディング、入場時ドリンク代が必要
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-tour/

CRYAMY特別単独公演『CRYAMYとわたし』
6月16日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
料金:全席指定2,500円
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-yaon/

<リリース情報>
CRYAMY 2nd フルアルバム『世界/WORLD』
発売中
価格:CD 3,000円、カセット 3,500円(税別)

■収録曲
1.THE WORLD
2.光倶楽部
3.注射じゃ治せない
4.豚
5.葬唱
6.待月
7.街月
8.ウソでも「ウン」て言いなよね
9.天国
10.人々よ
11.世界

CRYAMY 2nd ALBUM Digest Movie

関連リンク

■CRYAMY公式サイト:http://cryamy.tokyo/
小林私公式サイト:https://kobayashiwatashi.com/

左から)カワノ(CRYAMY)、小林私