2023年夏に北米で公開されるや『ミッドサマー』(19)の1.6倍のオープニング興収を叩きだし、『ヘレディタリー/継承』(18)を超えてA24ホラー史上最大のヒットを記録した『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』が公開中だ。

【写真を見る】あまりの残酷さに驚愕の声…衝撃のラストに観客が騒然

登録者数682万人(2023年12月27日現在)のYouTubeチャンネル「RackaRacka」を主宰するオーストラリアの双子YouTuberダニーマイケル・フィリッポウ監督がメガホンをとった本作は、2人の才能に惚れ込んだA24のもとで早くも続編の製作が決定している。公開直前に行われたMOVIE WALKER PRESS試写会にも映画ファンの申し込みが殺到。当選したユーザーらが新感覚の恐怖を体験した。

本稿では、この試写会で実施したアンケートに記された、映画ファンの偽らざるホンネを一気に紹介していこう。前半では、まだ作品を観ていない方に向けたネタバレなしの注目ポイントを、そして後半では、劇中に張り巡らされたさまざまな“謎”についての考察や解釈をネタバレありで深掘りしていく。すでに作品を観たという人も、これを読めばさらに気になるポイントが見つかり、もう一度劇場に足を運びたくなること間違いなしだ!

※本記事の後半には、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

■“90秒憑依チャレンジ”、あなたはやってみたい?

母を亡くした痛みを抱え、父とも気まずく、日々寂しさを感じていた17歳のミア(ソフィーワイルド)。ある時彼女は、高校の同級生たちの間で流行している“憑依チャレンジ”の集まりに興味本位で参加する。そこでスリルと背徳感、高揚感を味わったミアは、たちまち“憑依チャレンジ”の虜に。そんななか、親友のジェイド(アレクサンドラ・ジェンセン)の家で再びパーティを開くことになり、ジェイドの弟ライリー(ジョー・バード)も参加するのだが…。

“90秒憑依チャレンジ”のルールはいたって簡単。呪物の“手”を握り、「話したまえ(Talk to Me)」と唱えて霊を招き入れるだけ。ただし制限時間は90秒。90秒以内に手を離すことで霊を祓わなければ、自身のなかに霊が居座り、永久に支配されてしまうので注意が必要だ。

どんな儀式にもルールはつきもの。それを破ってしまえば最後、取り返しのつかないことになる。劇中では、ライリーが憑依チャレンジに臨んだ矢先、ミアの亡き母を名乗る霊が出現。母と少しでも長く話をしたいと願ったミアは、“90秒”のルールを破ってしまう。それをきっかけに、周囲で次々と恐ろしい出来事が起こり、ミアはどんどん追い詰められていく。

「呪物がないと参加はできないけど、比較的ルールは簡単だなと思いました」(女性・20代)

「みんながおもしろがってチャレンジしていたら、きっとやってみたくなっちゃうかも」(女性・40代)

「自分なら絶対やらないなと思いながら見ていた」(男性・20代)

日本でも1970年代以降に子どもたちの間で「コックリさん」が大ブームとなったように、いつの時代もどこの国でもこうした“降霊”の儀式は若者たちのあいだで流行るもの。そのキャッチーな恐怖の入り口に、試写会を訪れた観客たちも興味津々。「自分なら“90秒憑依チャレンジ”をやってみるか?」「もしルールを破ってしまったらどうしたらいいのか?」。そんなことを考えながら観るのこの映画の楽しみ方の一つではないだろうか。

■SNS時代を描く“リアルさ”に、共感の声が続々

観客の半数近くが印象に残ったシーンとして回答したのは、やはりすべての恐怖の始まりとなる“90秒憑依チャレンジ”のシーン。「本当に憑依されているような感じだった」(男性・20代)や「憑依された時の別人格の演技がとても良かった」(男性・20代)といったコメントからもあるように、キャスト陣が見せる生々しい表情に恐れおののいたようす。

また「普通そこまで鮮明に描写しないようなシーンが、トラウマになるくらい印象に残った」(男性・20代)や「音と映像の迫力で生々しくて怖かった」(女性・20代)と、ホラー映画には欠かすことのできない恐怖描写も好評。

その一方で、「恐怖シーンももちろん怖く、ただ怖いだけではなくストーリー性が重くて入り込んでしまいました」(女性・20代)というコメントも。家族や友情など、誰にとっても身近なドラマ性がこの作品のリアリティを高め、恐怖をより増幅させているのだろう。

本作でメガホンをとった“フィリッポウ兄弟”ことダニーマイケル・フィリッポウ監督は1992年生まれ、現在31歳の双子の兄弟。2013年にYouTubeチャンネル「RackaRacka」を開設し、これまでに総再生回数15億回以上を記録している。

これが長編映画監督デビューとなった2人は、日本のホラー映画からも影響を受けたことを公言している。2人がお気に入りの作品として挙げているのは、Jホラーブームの火付け役となった中田秀夫監督の『リング』(98)と、独特な世界観でカルト的人気を誇る黒沢清監督の『回路』(01)の2作品。その影響が本作にも如実にあらわれているのか、「リング的な後味の悪さが良かった」(男性・20代)や「意外と死人が出ない、Jホラーっぽいところがよかった」(男性・20代)という声も見受けられた。

いまや若い世代にとっては映画以上に身近なメディアとなっているYouTube。そこで活躍するうえでは、その時その時で世の中が求ているものに敏感に反応しながら、常に表現をアップデートしていく必要がある。YouTuberとして大成功を収めたフィリッポウ兄弟の感度の鋭さは本作にも確かに反映されており、「現代のリアルな孤独を細かく写し出している」(女性・20代)など、若者描写のリアリティに驚いた観客が続出。

「SNSだったり、友人の感じがリアルだった」(男性・20代)

SNAPCHATなど、SNSで過激さをましてしまうところ。仲間内のクローズドな恋愛模様」(男性・20代)

「10代特有の青春・恋愛や友人関係の葛藤が見事で、日本とさほど変わらないんだなと感じた」(男性・10代)

「人間関係に対してナイーブなところは時代変わらず」(女性・40代)

「SNSに夢中で他人の気持ちを蔑ろにするシーンはリアルだと思いました」(男性・20代)

「悪ノリで取り返しのつかないことになってしまうシーンが、現実でも起こりそうで怖かった」(女性・20代)

また、友人との付き合い方や、大勢でいるからこそ味わってしまう得体の知れない孤独感。家族との向き合い方など、SNS全盛の時代に限らない若者特有の心理に共感するコメントも続々寄せられている。

「危なそうなことでも周りの子がやってると仲間はずれになりたくないという思いから、つい試してみちゃうところが10代らしかった」(男性・10代)

「ミアが浮いていたのにもかかわらずチャレンジに参加するシーンは歯がゆい感覚になった」(女性・20代)

「家族との距離感、思春期に感じるふとした孤独感、異性との友情、ホラー抜きのシーンは共感できることがたくさんあり、涙しました」(女性・20代)

「母親の絶対的存在、母の言うことは絶対、認めてもらいたい。そんな気持ちだったのかな?と感じました」(女性・40代)

さてここからは、観客によって解釈が分かれたクライマックスシーンや続編への期待について、ネタバレも含めながらでチェックしていこう。

※これ以降、本記事はストーリーの核心に触れる記述を含んでいます。未見の方はご注意ください。

■残された“謎”にさまざまな解釈が。○○は○○○○だった!?

本作の劇中には、たくさんの謎が散りばめられている。答えが提示されるものや、なんとなくわかるものもあれば、なにも触れられないままになっているものもあり、すでに映画を観た人の多くが誰かと語り合いながら考察を重ねたいと考えているのではないだろうか。

試写会の来場者のなかにも「監督はこの作品を通じてどのようなメッセージを伝えたかったのか。また、みんなは何を受け取ったのか」(男性・20代)と、他者の視点が気になって仕方がないという声が。ここからは、観客がどのシーンや登場人物に引っ掛かりを覚え、議論したい/語り合いたいと思ったのかを一気にピックアップしていこう。そこに着目しながら2回目や3回目を観れば、なにか新たな発見ができるはずだ。

まずもっとも多くの観客が気になったのは、ジェイドの弟のライリーについてだ。彼が“90秒憑依チャレンジ”に参加し、ミアの母親の霊を呼び寄せたことから悲劇は始まる。突如として自傷行為に及んだライリーはなんとか一命を取り留めて入院。しかし一度居座った霊は憑いて離れない。終盤でミアが病室を訪れるシーンでは変わり果てた姿となり、衝撃的なラストへとつながる。

観客からは「ライリーにミアの母の霊が憑依した理由について」(女性・20代)や「なぜライリーが選ばれた?」(男性・20代)、「90秒を超えていたにしても、ライリーには霊を惹きつける何かがあったのでは」(男性・20代)と、根本の部分について深読みする声もあれば、後半の展開の真相が気になったという声も多数。

「ライリーはどこに行っていたのか」(女性・20代)

「弟の今後が気になりました」(男性・20代)

「最後のボス的霊は外界でどのような存在なのか。ライリーから出てこれた理由を掘り下げたい」(男性・20代)

「乗り移っていた本元のおじいさん!?みたいなおばけは何者なんだろうと思った」(女性・40代)

ライリーをめぐる終盤の描写については、心理学を学んでいるという方からこんな意見も。「統合失調症の事例に似ていると感じました。後半のミアが霊と会話しているシーンなど」(女性・20代)。また、詳細が明かされないままのミアの母親の死の真相も「ミアの母親の死因は本当に自殺だったのかどうか」(女性・20代)、「母の霊の真実」(男性・10代)、「ミアの母親が結局どのようにして死んだのか」(男性・10代)と、議論が後を絶たない重要ポイントだ。

これらの“謎”が、そのまま続編へとつながるのか。「ミアのその後が気になります。ミアが死界でどう行動するかが楽しみです」(男性・20代)と、今作から直結したストーリーが続編で展開することを期待する声もある。このままミアを主人公にしたストーリーが描かれるのか、それともライリーをはじめとしたほかの登場人物にフォーカスが当たるのか。別の視点や過去の物語など、さまざまなパターンの続編が予想されている。

「様々なテーマでやるといい。もっと深掘りしてほしい」(男性・20代)

「色々な国で文化の違いからくる恐怖が見たい」(女性・40代)

「手についてもっと知りたい」(女性・40代)

「手を軸とした新たな若者たちのドラマに期待します」(男性・60代)

「手がどういった経緯でああなったのかを描いてほしい」(女性・20代)

こういった声からもわかるように、“ミアのその後“と“手の正体”が、観客が続編に期待する大きなポイントとなっているようだ。はたしてフィリッポウ兄弟は続編で我々にどんな物語と恐怖を見せてくれるのだろうか。

まだ本作を観ていないという人はもちろんのこと、すでに観た人ももう一度映画館に足を運んで細部まで目を凝らし、自分なりの解釈で誰かと熱く語り合ってみてほしい!

文/久保田 和馬

話題のA24ホラーを、ネタバレありで完全ガイド!/[c] 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia