インターネット上の誹謗中傷が社会問題となり、侮辱罪をめぐる法改正もなされましたが、いまだ被害はやみません。特に、芸能人や有名人に対する誹謗中傷が問題視されています。


こうした中で、弁護士ドットコム株式会社(東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎)は、弁護士ドットコム(R)の一般会員1355名を対象に、2023年版の誹謗中傷に関する実態調査を実施しました。

■ 調査概要

調査機関:自社調査(弁護士ドットコム(R)一般会員を対象)

調査方法:弁護士ドットコム(R)一般会員を対象にアンケートを実施

調査対象:弁護士ドットコム(R)の一般会員1355名

調査期間:2023年11月22日12月5日

■ 結果サマリ

■ 芸能人や有名人への誹謗中傷コメント、3.5%が経験


芸能人や有名人に誹謗中傷をしたことがあるかを尋ねたところ、「ある」と回答した人が3.5%にのぼりました。

■ 芸能人や有名人への誹謗中傷、半数超が「X」利用


芸能人や有名人の誹謗中傷を投稿したソーシャルメディアを尋ねたところ、「X(旧Twitter)」が最も多く52.1%、次いで「匿名掲示板」が20.8%、「Instagram」と「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」が12.5%、「YouTube」と「ブログ」が8.3%、「Facebook」と「LINE」が6.3%、「TikTok」が2.1%、「その他」が8.3%となりました。

■ 83.3%が「容姿や性格、人格に関する悪口」


誹謗中傷については、法的に明確な定義が定められているわけではありません。今回のアンケートでは、投稿した誹謗中傷の内容について、4種類に分類し、選択肢を提示しました(複数回答可)。

芸能人や有名人に誹謗中傷を投稿したことが「ある」と答えた人のうち、83.3%は「容姿や性格、人格に関する悪口」でした。「虚偽または真偽不明情報を流す」は12.5%、「プライバシー情報の暴露」と「脅迫」は10.4%でした。

■ 動機の41.7%「その人物が事件、不祥事を起こしたから」


芸能人や有名人に誹謗中傷を投稿した動機を尋ねた(複数回答可)ところ、「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」が60.4%でもっとも多く、「その人物が事件、不祥事を起こしたから」が41.7%と続き、投稿した当時には、正当なものだと認識していた実態が浮き彫りになりました。

■ 具体的内容「元アイドルの顔の変化、体型について書いた」

「誰についてのどのような誹謗中傷コメントを投稿しましたか?」という質問には、「元アイドルの番組での態度や、顔の変化や体型について」(40代・女性)、「女優の不倫に絡めて人格を否定するようなコメントをしてしまった」(30代・女性)など、私生活や外見に関することについてSNSに書き込んでしまったとの回答がありました。


他には、次のようなコメントも寄せられています。

・YouTuberの生配信にて、臭いとコメントしてしまったこと。元々視聴者でそういったノリができていたため、しても問題ないと思った(10代・男性)

・アイドル事務所の性加害問題で、事務所擁護をした女性タレントの発言が腹立たしく過去の経歴、素性など書き込みした(60代・女性)

・女性タレントについて頭が悪い、図々しいと書いた(50代・女性)

・違法薬物を使用して逮捕された女優の悪口を書いた(30代・その他)

■ 一般人へ誹謗中傷経験は5.2%


今回のアンケートでは、芸能人や有名人だけでなく、一般人(芸能人や有名人以外)に誹謗中傷したことがあるかどうかも質問しています。「ある」と回答した人が5.2%いました。


ちなみに、集計結果を合算して、芸能人・有名人と一般人のいずれかに誹謗中傷したことが「ある」と回答した人は7.2%となりました。

■ 一般人への誹謗中傷、「X」と「匿名掲示板」が抜きん出る


一般人への誹謗中傷について投稿したソーシャルメディアを尋ねたところ、「X(旧Twitter)」が最も多く38.6%、次いで「匿名掲示板」が37.1%で、両者が抜きん出て高くなりました。

他には、「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」が10.0%、「Google Mapの口コミ欄」が8.6%、「LINE」が7.1%、「Facebook」と「YouTube」と「ブログ」が4.3%、「Instagram」が2.9%、「TikTok」が1.4%、「その他」が20.0%となりました。


芸能人や有名人と同様に、投稿した誹謗中傷の内容について4種類に分類し回答してもらいました(複数回答可)。


一般人に誹謗中傷をしたことが「ある」と答えた人のうち、「容姿や性格、人格に関する悪口」が77.1%、「プライバシー情報の暴露」が17.1%、「虚偽または真偽不明情報を流す」が11.4%、「脅迫」が4.3%となりました。

■ 一般人への誹謗中傷、理由は「正当な批判・論評」「正義感」


一般人への誹謗中傷の動機を尋ねたところ、「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」が50%でもっとも多く、次いで「その人物の間違いを指摘しようとする正義感から」が41.4%となり、正義感から意図せず加害者になっている人が多い実態が明らかになりました。

■ 具体的内容「お客様の声で、匿名で中傷するようなコメントを書いた」

「誰についてのどのような誹謗中傷コメントを投稿しましたか? 」という質問には、職場の人間関係、家族や知人との対人トラブルについて書いてしまったとの声が寄せられています。

・私も書かれたから同じことをした。書かれた人の気持ちも考えてみたらいいと思ったから(40代・女性)

・お客様の声で、匿名で中傷するようなコメントをしてしまった(30代・女性)

・職場の握りつぶされた不祥事を匿名掲示板に投稿した(50代・男性)

・知人女性のダブル不倫相手の会社の口コミにコメントしました(50代・男性)

・馴れ合いコミュニティのメンバーを『頭が悪い』『これからどんどん人が離れていくだろう』と批判した(30代・男性)

・夫が元勤めていた会社への誹謗中傷。ブラック企業で残業代の未払いがあり過ぎて、腹が立ったから(40代・女性)

■ 34.7%が誹謗中傷の「被害経験」あり


回答者全体に対して、これまでに誹謗中傷を受けたことがあるかを尋ねたところ「ない」が65.3%、「ある」が34.7%と、30%強の人が誹謗中傷被害者と回答しました。


被害者に誹謗中傷の内容を尋ねたところ、「容姿や性格、人格に関する悪口」が56.6%、「虚偽または真偽不明情報を流す」が53.2%、「プライバシー情報の暴露」が35.1%、「脅迫」が24.0%、「その他」が11.7%と続きました。


その他の回答には、「家庭環境について悪口を書き込まれた」、「取引先への一斉告発メール」がありました。


誹謗中傷を受けたソーシャルメディアを尋ねたところ、「匿名掲示板」が35.1%、「X(旧Twitter)」32.3%、「LINE」が15.1%、「Facebook」が10.2%、「ブログ」が9.1%、「YouTube」が6.2%、「Instagram」が6.0%、「Google Mapの口コミ欄」が4.0%、「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」が2.8%、「TikTok」が0.2%、「その他」が28.9%となりました。


その他の回答には、「wechat」「teams(チャット)」「ホスラブ」などがありました。

■ 誹謗中傷への厳罰化、67.3%が「必要」


昨年、誹謗中傷被害対策として侮辱罪が厳罰化されましたが、さらなる厳罰化が必要かを尋ねたところ、「必要」が67.3%、「不要」が9.2%、「わからない」が23.5%となりました。

■ 厳罰化には「表現の自由を奪う」と批判も

「誹謗中傷について、ご意見・体験談等があれば自由にご記入ください」という質問では、「言論の自由が奪われかねないと危惧している」(男性・40代)として違法となる基準を明記するべきとの声、「匿名での投稿はなしにすべきだと思います」(男性・40代)と、実名制を呼びかけるものがありました。


この他、次のような回答がありました。

・誹謗中傷は悪いと思うが、言う方にも言われる方にも理由はあるし一方的な事を決めつけるのは表現の自由を奪うと思います(男性・30代)

・告発と侮辱と誹謗中傷の境目が難しい気がする。私は告発だと思っているが、相手は侮辱や誹謗中傷だと思っているかもしれない。ある程度の線引きがなされないと、内部告発がなされなくなるのではないだろうか(男性・30代)

・匿名だからと言ってなんでも書いていいわけではありません。開示請求自体はワンクリックでできるレベルにして欲しいです。実際自殺者も出ているのですから、もう少し厳罰化してもいいかなと思います(女性・40代)

・誹謗中傷するなら堂々と住所氏名を公表する覚悟をしてから、するべきだと ネット上はあまりにも無責任過ぎます 意見交換は大いにするべきだと思いますが(女性・50代)

・曖昧な部分も多いので弁護士会などが一定のガイドラインみたいなのを作ってもいいと思う(男性・20代)

・ネット上の誹謗中傷等は、匿名で相手をとことんまで追い詰める、卑劣極まりない行為。被害者の方のことを考えると、規制を強化してほしいと思います。決して、他人事ではない問題です(女性・50代)

プロ野球の応援をSNS上でよく行っています。選手たちへの誹謗中傷を目にすることもあり、厳罰化はした方がいいなと思うようになりました。本人や球団からのお願いもありますが、すぐに止められるような制度を作って欲しいです(女性・50代)

・個人事業を営んでいますが、グーグルで☆一つにされて悪意の嘘の情報を書かれたことがある。IDを変えて何度も書かれた。書いた人物は、直前に代金の支払いをっめぐって警察沙汰になった人物であると思われる(男性・40代)

・わりと本気で実名制インターネットがよいと昔から思っています。誹謗中傷、フェイクニュースの伝播、著作権侵害など、すべての原因はただの無知。具体的な法的リスクについて小学生に教えてあげるといいと思う(女性・40代)

【清水陽平弁護士コメント】「芸能人でも積極的に誹謗中傷と戦うようになった」

アンケートでは、誹謗中傷投稿をした理由として「正当な批判・論評だと思ったから」「その人物が事件、不祥事を起こしたから」をあげる人が多い結果となっています。芸能人や有名人は論評を受ける立場にあり、一定程度の限度を超えないと「違法な中傷である」と判断されにくい傾向自体はあるといえます。

もっとも、デマを拡散するような行為や、過度にプライバシーを暴くような行為、執拗に中傷するような行為などは、権利侵害となる可能性は十分あり、民事上の責任を追及されたり、場合によっては刑事責任の追及を受ける場合もあります。

最近は、芸能人などでも積極的に誹謗中傷と戦っている方も目にするようになりました。芸能人、著名人だから何を言ってもよいというのは全く間違いです。

一方で、何が違法な中傷か分からないと言う方は多く、このアンケートの回答でも同趣旨の指摘がされています。「違法でなければ言いたい」という考えがあるのでしょうが、言葉の意味は流動的であり、前後の文脈や言い方(書き方)によってもその印象は大きく変わり、何が違法かという客観的で明確な線引きをすることは不可能です。

そこで、主観的な基準として、面と向かって、一対一でその人にその言葉を言えるか、という観点で考えるとよいのではないかと思います。言えないということであれば、それによって相手が傷つくということが分かっているということでしょう。そういった言動は権利侵害に当たる可能性があると考えておくとよいといえます。


・清水陽平弁護士プロフィール(法律事務所アルシエン)

インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

弁護士ドットコム株式会社 ◆弁護士ドットコム株式会社について:https://www.bengo4.com/corporate/
本社:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル
設立日:2005年7月4日
資本金:460百万円(2023年9月末現在)
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 元榮 太一郎
上場市場:東京証券取引所グロース市場
事業内容:「プロフェッショナル・テックで、次の常識をつくる。」をミッションとして、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム(R)️」「税理士ドットコム(R)️」「BUSINESS LAWYERS(R)️」、契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン(R)️」を提供

配信元企業:弁護士ドットコム株式会社

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