ドジャース入りを決めた山本。来季のプレーが楽しみだ(C)Getty Images

 山本由伸ドジャースと12年総額3億2500万ドル(約465億円)という巨額契約に合意した。12年という契約期間がメジャーリーグの投手史上最長ならば、3億2500万ドルの総額も、ヤンキースが2019年からゲリット・コールと結んだ9年総額3億2400万ドルを100万ドル上回り、メジャー投手史上最高額となった。

【関連記事】大谷翔平のポルシェ提供に「ドジャースの他の妻は腹を立てる」? 仰天行動の反響に米紙が切り込む「オオタニは義務をこなす」

 大谷翔平に続き、これまでにない異次元の契約となった。注目度は、来季は右肘手術の影響で二刀流を封印し、打者一本に専念する大谷すらも上回るかもしれない。メジャーリーグで一球も投げる前から、メジャーリーグ投手史上最高の契約を手にした男。大谷はこれまで6シーズン、全米の野球ファンを魅了してきたが、まだ一度も見たことのない、日本の身長178cmにすぎない右腕がどんな力を秘め、どんな球を投げるのか。地元ロサンゼルスだけでなく、全米の注目の的の一つとなっている。

 とはいえルーキーシーズン。そんな契約を手にして臨む山本は、どんな成績がノルマとなるのか。これまで1年目に2桁勝利を挙げた日本人投手は8人。最多は16勝で2012年のダルビッシュ有レンジャーズ)と、2016年の前田健太ドジャース)。次いで2007年の松坂大輔レッドソックス)が15勝、2002年の石井一久ドジャース)が14勝。1995年野茂英雄ドジャース)と2014年の田中将大ヤンキース)が13勝。今年の千賀滉大メッツ)が12勝で、2010年の高橋尚成メッツ)が10勝だった。

 山本はオリックスで3年連続の投手4冠という金字塔を成し遂げた。3年間の勝ち星は18、15、16勝だった。期待値の大きさからはダルビッシュと前田の16勝、もしくは松坂の15勝といった数字には届いておきたい。ただ、強力打線が援護するドジャースに開幕から所属した今季の先発投手で2桁勝利を挙げたのは3人だけ。クレイトン・カーショーが13勝、次いでボビー・ミラーとフリオ・ウリアスが11勝。カーショーとウリアスはFAとなり、再契約する可能性はあるが現時点ではチームに所属していない。

 ちなみに今季のナ・リーグ最多勝スペンサー・ストライダーブレーブス)の20勝。2位がザック・ゲーレン(ダイヤモンドバックス)の17勝、3位がジャスティン・スティール(カブス)の16勝、4位がタイワン・ウォーカー(フィリーズ)の15勝で、14勝が3人いた。15勝、というのが超えたい大きなラインとなるのは間違いなさそうだ。

 では防御率はどうだろう。ルーキー日本人投手の最優秀防御率は、1995年野茂の2・54。次いで2014年田中の2・77、今季の千賀の2・98となる。ここは千賀の数字が一つのラインとなろう。千賀は1年前、5年総額7500万ドル(約107億円)でメッツに加入。当時からメディカルチェックで右肘への懸念が指摘されたため、契約総額が想定より抑えられたと指摘されていた。実際、今回の山本の契約とは大きな開きがある。それでもシーズンではその健康面への不安を払拭した。防御率2・98は、ブレーク・スネル(パドレス)の2・25に次ぐリーグ2位の堂々の数字。防御率2点台ならばリーグ3傑に入る可能性があり、そこが目指すべきターゲットといえる。

 もっとも山本は契約年数の長さと、契約総額の大きさがフォーカスされているが、1年あたりの平均年俸は2708万ドル(約38億円)。歴代の投手では現在のマックス・シャーザーレンジャーズ)とジャスティン・バーランダーアストロズ)の4333万ドルや、ゲリット・コールヤンキース)の3600万ドルなどには遠く及ばない。今季はDeNAプレーしたトレバー・バウアーも最後の3年契約は平均年俸3400万ドルだった。選手の評価として最も重視すべきポイントが平均年俸であり、山本は6年目と8年目のオフに契約破棄できるオプトアウト権を有することで、数年実績を積み上げてさらに大きな契約を狙うことができる。全米の注目と期待を意識し過ぎることなく、まずは地に足を着けてメジャーリーグベースボールへの適応を進めていくことが、この巨額契約を全うする上で最も大事なこととなる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

15勝以上で防御率は2点台?新人の山本由伸がクリアすべきノルマと、最も大切にすべきものとは