Inflection AIは、グーグルが買収した英AI企業Deepmindの共同創業者ムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman)氏と同社の研究職だったカレン・シモニャン(Karén Simonyan)氏、ビジネスSNS「Linkedin」の共同創業者としても知られるレイドホフマン(Reid Hoffman)氏が2022年に立ち上げた、新鋭のAI開発企業である。本社はカリフォルニア州パロアルトに置いている。

“共感的”な会話型AIを構築

Inflection AI公式サイトより引用

彼らは、最初の製品としてパーソナルAI「Pi」をリリース。創業1年目で13億米ドルの資金調達をおこない、MicrosoftNvidiaが同ラウンドをリードした。

設立当初はメディア露出は少なく、最初から大きな注目を集めていたというわけでもないようだが、同社はこれまでに約15億ドルもの資金を集めており、現在の企業価値は約40億ドルにものぼる。今では世界が注目するAIスタートアップ企業だ。

また今年7月、AmazonやGoogle、Meta、Microsoft、OpenAIといった主要AI企業7社がバイデン大統領によってホワイトハウスに招かれ、AI技術の安全・透明性のある開発のためのコミットメントを得たと発表されたが、名だたる大手企業とともに新鋭のInflection AIが呼ばれたことでも名を馳せた。

同社が開発したAIチャットボット「Pi」は、協力的かつ“共感的”な会話型AIであることが特徴だ。レイドホフマン氏が「PiはChatGPTに比べてよりパーソナライズされた会話を可能とし、より感情的なアプローチを取る」と述べるなど、人間の心理に寄り添うAIとして着目されている。

Inflection AI公式サイトより引用

同社によれば、Piは単に賢いだけでなく、優れたEQを備え、感情知性を持った新しいタイプのAIであると伝えている。EQとは「心の知能指数」とも訳され、人間関係などにおいて自分や他者の感情を理解し、コントロールする能力のことを指す。

Androidでも利用可能に

Inflection AI公式サイトより引用

Piとは「パーソナル インテリジェンス(Personal Intelligence)」の略であり、個人の興味やニーズに基づいた、協力的で“思いやり”のあるパーソナルアシスタンスなAIともいえよう。その特性から、コーチや親友、クリエイティブなパートナー、または相談役になることも可能だという。日本語には未対応だが、すでにWebサイトやiOSアプリ経由などで利用でき、2023年12月にはAndroidにも対応したことを発表。Androidアプリは35か国で利用可能であり、Piに対する世界的な需要の高まりを反映している。

なお同社が所有するスーパーコンピュータは、22,000個のNVIDIA H100 GPUを搭載している(参考)。Inflection AIはその性能を利用し、Piを支える高度なLLMを構築。同社は“AIスタジオ”として、ユーザーがシンプルかつカジュアルな方法で対話できるパーソナルAIを日々開発している。

感受知性を持ち合わせたパーソナルAIが身近で活用されるようになれば、対人間との会話と変わりなく、AIと自然な会話や相談が可能となる。ユーザーの“感情”をAIが察知して提案を行うようになることは、現在プロンプト入力に頭を悩ませている人にとって救いともなりそうだ。

(文:cappucc1n0)