世界中の富裕層が通う、アメリカのボーディングスクール。今回はSAPIX YOZEMI GROUPの国際教育事業本部長兼Triple Alpha CEOの髙宮信乃氏が、アメリカのボーディングスクールへの訪問を通して、自身に合ったボーディングスクールを見つける方法についてレポートします。

北米ボーディングスクール…3校の現地レポート

パンデミックも落ち着いた2023年、弊社スタッフは約50校の北米ボーディングスクールを訪問しました。出願者に同行してのキャンパスツアー&インタビューはもちろんですが、急速に変化する時代の中で最新情報をアップデートすべく、教育コンサルタント向けのツアーにも年間を通じて積極的に参加しています。

今回レポートするのは、コネチカット州のボーディングスクール5校をめぐる Western Massachusetts Boarding School Tour です。コネチカット州は私立校の数も多く、子供の教育のために引っ越しを検討することも珍しくないほど教育熱が高いエリアということもあってか、ツアー参加者の多くは現地在住のコンサルタントばかり。

留学生のサポートを主とするコンサルタントとしては、弊社スタッフと韓国からの1名のみの参加でした。

訪問先では校内ツアーや在校生に実際の体験について話を聞ける時間の他、クイズコーナーや生徒によるスピーチ披露など、限られた時間の中、それぞれの学校の魅力と特徴が伝わるよう工夫を凝らして参加者を歓迎してくれます。

弊社スタッフは、各学校で出会った在校生に「数あるボーディングスクールの中で、この学校を選んだ決め手は何?」という共通の質問を投げかけました。そして印象的だったのは、皆が口をそろえて「Community feeling!!」と答えてくれたことです。この “Community”が意味するものについて注目しながら、今回訪問した学校の中でも特徴的だった3校を見ていきましょう。

The Bement School…アットホームな環境で伸び伸びと学ぶ

全校生徒220名ほどのうち、寮生は40名前後のこぢんまりとしたジュニアボーディングスクール。到着時に朝食が提供され、キッシュマフィンの他、ラズベリーやいちごなどの新鮮なフルーツをいただきました。朝食に続いて今年度卒業する生徒5名がパネラーとして登場。この学校を選んだきっかけや入学後の大きなチャレンジとなった出来事などをトピックとして、貴重な実体験が披露されました。

セカンダリースクール・カウンセリングの話題では、一人の生徒が「カウンセラーがとても Supportive だった」と話すと、隣の生徒が「Supportive というより、どちらかというと Police Officer のパトロールに近いような……」とぼそっと呟き、学校スタッフとコンサルタントが大爆笑する場面も。そんな彼もまたこの学校の手厚いサポートを受け、難関セカンダリースクールからの合格を勝ち取った一人です。

また「もし Bement の何か一つを変えられるとしたら何がいい?」といった質問からも、学校スタッフと生徒の関係がフレンドリーでオープンであることが感じられます (ちなみに生徒からは「テックタイム (デバイスが使える時間) を増やして欲しい」「アドバイザリータイムがもっと欲しい」などの回答が出ました)。小規模校ながら、毎年数多くのセカンダリースクールがリクルートのためにこの学校を訪問することからも、アットホームな環境ながらも Academics、Social Skills ともに優れた生徒を数多く輩出していることが窺えます。

Northfield Mount Hermon (NMH)…好きな活動に打ち込めるリラックスした環境

過去4年間で出願者の数が劇的に増加したと話してくれたのは、校長の Mr. Hargrove。NMH では優秀な教師陣に長く教鞭を取ってもらえるよう、教職員が知識を深めるための金銭的なサポートを提供しています。ここでは数多くの在校生から話を聞くことができました。

この学校を選んだ決め手について尋ねると、ある生徒はコミュニティの雰囲気の良さを挙げ、また別の生徒は Ten Schools 訪問時の緊張感と NMH 訪問時のリラックスした自分を比較し、「NMH の方がより自分のやりたいことに集中できると感じた」と言います。また様々なバックグラウンドの生徒がいて 多様性に富んだ雰囲気が自分に合っていたと話す生徒もいました。学校名だけにとらわれずに選ぶことがいかに大切かを実感するとともに、生徒一人ひとりが自分の選択に誇りを持ちながら学んでいる様子が伝わってきました。

NMH では生徒が全員、週あたり3時間の “Workjob” と呼ばれる学校運営にかかわる活動に従事します。入学希望者にキャンパスを案内したり、厨房でクッキーを焼いたりと、それぞれが何らかの形でコミュニティに貢献するためのものです。その活動の一つであるファームの運営は大人気で、毎学期30名ほどが活動に参加、無農薬で有機栽培し食堂に提供しています。ランチで提供されたサラダが新鮮で美味しかったことにも納得です。緑豊かな芝生が敷き詰められたキャンパスには緩やかなアップダウンがあり、教室移動の際にも自然とリフレッシュできる環境です。

The Williston Northampton School…多方面から生徒を支える充実したプログラム

アドミッション・チーム7名に出迎えられ、それぞれの自己紹介と Williston でのエピソードを披露いただいたあと、校長の Mr.Hill が登場。コロナ禍における学校運営の難しさとそこから学んだ教訓をユーモアたっぷりに話してくれました。また Williston ではアドバイザープログラムに力を入れており、それが進学実績につながっているという話のあと、最近の嬉しかったエピソードを披露してくれました。

先日卒業したばかりの生徒4名をパネラーに招き、大学での経験について在校生に向けて語ってもらったところ、その内2名が大学でのコース選択について Williston 時代のアドバイザーに相談していたことが判明したそう。いかに生徒とアドバイザーの結びつきが強い学校であるかを実感できたエピソードでした。

スポーツにも力を入れており、強豪チームも多い同校ですが、どのスポーツにも初級レベルが提供されており、興味次第で様々なスポーツにチャレンジできる環境も魅力です。また生徒が卒業後に大学や実社会においても困らないよう、ライフスキルの学びをレッスンに取り入れたり、睡眠習慣やメンタルヘルスを含む生徒の健康問題にも取り組んでいます。「ここに来る生徒には所属する場所があること、サポートがあることを知って欲しい」。親元を離れ未知の世界に飛び込む留学生にとって心強い言葉です。

Williston は比較的街にアクセスしやすいボーディングスクールということもあり、School boundary (街中に設定されている境界線) の中であればドーナツ屋やベーグルショップなどにも自由に行き来が可能です。自然豊かで山に囲まれたボーディングスクールの環境を好む生徒がいる一方、自然と街がほどよく調和したこのような環境で居心地よく過ごせる生徒がいることも改めて認識できた学校でした。

ボーディングスクール…「合格よりも大切なこと」とは?

ボーディングスクールの受験は合格を勝ち取ることが目的ではなく、入学後、その学校で提供される様々な機会を活用し、人としていかに成長できるかが重要です。

アットホームな環境が合う生徒もいれば、より自立した環境のほうが成長できる生徒もいます。車を購入する前に試運転をして乗り心地を確認するのと同じで、自分が学び、生活している姿が実際にイメージできる Best Fit のボーディングスクールに出会うためにも、そしてウェブサイトや資料だけでは気づき得ないコミュニティの雰囲気を感じるためにも、キャンパスビジットは必要不可欠な方法と言えるでしょう。