配信部門では、主にビデオスイッチャーやコントローラーを表彰する。

配信関係は、今年も新製品満載の年だった。最大の話題は、あらゆる機能を盛り込んだオールインワンモデルだろう。スイッチング、グラフィックスの読み込み・合成、配信、記録、モニタリング、PTZカメラコントロールなどの機能を集約した、すべての作業をまかなえる新製品が話題になった。今後このジャンルは、IP化やPoEに対応した新製品が増えてきそうだ。

また、本部門では取り上げていないが、PTZカメラの自動追尾機能も話題になった。その中でも特に印象的だったのは、キヤノンの1人のカメラマンの意思で複数のカメラを同時に動かす撮影技術「マルチカメラ・オーケストレーション」だ。デモを見たときには時代が変わるひとつの節目を見たぐらいの衝撃を受けた。

それでは本部門のファイナリストを発表しよう。

Blackmagic Design「ATEM Television Studio HD8」シリーズ

発売日:2023年2月24日
希望小売価格:Studio HD8 税込484,800円/Studio HD8 ISO 税込645,800円

ATEM Television Studio HDは、放送コントロールパネルに内蔵されたプロ仕様のライブプロダクションスイッチャーだ。カメラを接続するだけでスイッチングできるオールインワン・ソリューションとしている。ATEM Television Studio HD8は、8つの3G-SDI入力、配信機能、収録機能、マルチビュー、DVE、キーヤー、USBウェブカム、メディアプレーヤー、トークバック、オプションのクラウドストレージに対応している。ISOモデルは、ATEM Television Studio HDの全機能に加え、8つの入力の個別収録が可能。最大8台のリモートカメラに対応し、各カメラでコントロールおよびタリーを使用できる。

ローランド「VR-120HD」

発売日:2023年2月24日
希望小売価格:オープン 市場想定価格は税込88万円

クラウド部門発表。小規模映像制作でもクラウドワークフローを導入できる時代へ[PRONEWS AWARD 2023] Vol.05説明画像

VR-120HDは、ライブ配信に便利な機能を大幅に強化し、映像演出、音声ミキシング、配信・記録を一人のオペレーターで実現できるプロ仕様のAVミキサーだ。様々な映像フォーマットに対応する12系統の映像入力を装備し、PCやタブレットゲーム機などを接続して映像を取り込むことが可能。8つのレイヤー機能を備え、テロップ挿入やピクチャー・イン・ピクチャーなどの映像合成を自在に行える。最大8系統の映像出力ができ、会場の大型ビジョンやライブ配信用のPCなどにフレキシブルな映像出力が可能。さらに、インターネットへのストリーミングにも対応し、PCを使わず本体のみで安定した配信を行うことができるという。

ローランド「VR-6HD」

発売日:2023年4月28日
希望小売価格:オープン 市場想定価格は35万円前後

配信部門発表。全部盛りのオールインワン機器に注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06説明画像

ビジネス会議やウェビナーなど動画配信に最適なコンパクト・サイズのAVミキサーだ。映像切り替え、音声調整、ライブ配信、録画まで行えるオールインワン設計。複雑な操作を省力化し高品質な配信が可能。HDMI 6系統の映像入力を搭載した、映像切り替えや合成、音声調整、ライブ配信、録画まで1台で行える。直感的に操作できるインターフェース、複雑な操作をサポートするオートメーション機能、映像・音響演出をワンタッチで運用できるマクロ、シーケンサー機能、PTZカメラ制御などにより、オペレーターの負担を軽減し、日々の制作・発信業務をサポートする。

ローランド「VR-400UHD」

発売日:2023年6月22日
希望小売価格:オープン 市場想定価格は税込990,000円前後

配信部門発表。機能満載のオールインワンビデオスイッチャーに注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06説明写真

4K映像に対応したAVミキサーだ。シンプルな操作パネルに、見やすい2基の大型タッチ・モニターを搭載。画面をタッチして映像の切り替えなどができ、複雑な操作は必要ないという。さらに、背景やワイプ画面ほか多彩な映像合成が可能。映像合成をあらかじめ用意しておき、最大8つのライブプレビュー映像を同時に確認しながら、タッチ一つで呼び出せる「シーン機能」も装備している。4K対応のHDMI入力を7系統備え、高画質の映像演出が可能。また、独自技術を用いた内蔵スケーラーにより、複数の解像度や形式が異なる映像を扱うことができる。そのほか幅広い映像演出機能に加えて、14チャンネル・デジタル・オーディオミキサーを搭載。高度な音声処理を行うことを可能としている。

朋栄「HVS-190」シリーズ

発売日:2023年9月5日
希望小売価格:HVS-190S 税込935,000円/HVS-190I 税込1,210,000円

クラウド部門発表。小規模映像制作から本格的なクラウドワークフロー導入できる時代説明画像

様々な現場で活用されている「HVS-490」が持つ多彩な機能を継承するポータブルビデオスイッチャー。標準で8入力5出力(HDMI 1出力を含む)が可能で、HVS-190Sで最大20入力11出力、HVS-190Iで最大16入力9出力まで拡張可能。全入力にフレームシンクロナイザー、プロセスアンプを搭載しているほか、出力にはセーフティマーカー機能を搭載している。HVS-190には、HVS-490から継承した機能として、2系統のキーヤー、4系統のFLEXaKEY、1系統のクロマキーヤー、4系統の2.5次元DVE、最大100パターンを登録可能なマクロ機能、2系統のスチルストアとクリップメモリーなどを搭載。番組制作から中継車、ライブ配信、企業イベントなど幅広いシーンで活用できる。

Vizrt「TriCaster Flex」

発売日:2023年10月23日
希望小売価格:税込2,178,000円

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PTZカメラデバイス、オーディオ接続、オーディオおよびビデオミキシング、TalkBackをすべて、NDI接続で直接制御を実現。TriCaster向けコントロールパネルの中でも、オーディオおよびビデオミキシング、PTZカメラ制御、TalkBackに1つのユニットで対応できるのは、TriCaster Flexが初めてだという。TriCaster Flexに搭載された機能により、高精度での制御を実現。オーディオI/Oが追加されており、TriCasterの入出力を即座に拡張し、NDIエコシステムに外部ソースを直接追加可能としている。

YoloLiv「YoloBox Ultra」

発売日:2023年11月15日
希望小売価格:税込239,800円

YoloLiv、「YoloBox Ultra」発表。ライブ・ストリーミングを新たな高みへメイン写真

高品質なライブ配信を実現するために必要な「エンコーダー」、映像を切り替える「スイッチャー」、映像を確認する「モニター」、映像を記録する「レコーダー」が一体型となったYoloBoxシリーズの最上位モデル。パソコンやモニターといった外部機器や配信のための面倒な設定も必要なく、内蔵バッテリー駆動のため電源の引き回しを考える必要なく、YoloBox Ultraとカメラなどの映像ソースがあれば、すぐにどこからでもライブ配信が可能としている。YoloBox Ultraは、最大4つのHDMI入力、強化されたCPU(約2倍の性能)、より大きなバッテリー(6800mAh / 11.1V / 75.48Wh)、より明るいディスプレイ(650nits)を備え、前モデルからアップグレード。Qualcomm Snapdragon 865 CPUの強化された処理能力を活用することで、YoloBox Ultraはユーザーに最大限のパフォーマンスを提供するという。

パナソニック「AV-HSW10」

発売日:2023年11月29日
希望小売価格:税込850,000円

クラウド部門発表。小規模映像制作から本格的なクラウドワークフロー導入できる時代説明画像

コンパクトなボディに高い操作性、信頼性と、IPの搭載など昨今の映像制作のニーズに応える機能を備え、数多くの現場に採用されてきたAW-HS50の後継機としている。B5サイズ相当の小型な筐体に、SDI、HDMIに加え、NDIやSRTなどIPの入出力を搭載しており、映像制作現場で広く活用されている伝送プロトコルに対応。IP対応のリモートカメラと組み合わせることで、シンプルなシステムでIPベースの映像制作を行うことができるという。

キヤノン「RC-IP1000」

発売日:2023年12月21日
希望小売価格:オープン 市場実勢価格は税込79万2,000円前後

配信部門発表。全部盛りのオールインワン機器に注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06説明画像

RC-IP1000はカメラの映像を直接IPで受けることが可能で、別途モニターケーブルを用意する手間を減らすことが可能。マルチカメラの場合は、コントローラー上で見える映像の切り替えで操作するカメラと連動でき、より少ない手順でリアルタイム性のある操作が可能になる。IPの映像は1画面表示や2×2画面、3×3画面などのマルチ画面表示に対応し、タッチパネルでのカメラ切り替えや物理ボタンでも操作を可能としている。

以下が配信部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2023 配信部門 ファイナリスト

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2023 配信部門 ゴールド賞

ローランド「VR-6HD」

配信部門発表。全部盛りのオールインワン機器に注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06説明画像

配信用PC・レコーダー・音声ミキサーを一体化。これまでいろいろな機材が必要だった配信業務をPCレスでコンパクトかつ1台にまとめてきた点を評価してゴールド賞とした。

小型化を実現しながらもノイズリダクション、画面構成をワンボタンで呼び出し可能なシーンメモリ、スマートフォンのテザリングで配信などに嬉しい機能を搭載してきた。さらにほとんどの機能をリモート制御できるiPadアプリも登場。中小規模の配信ならばVR-6HD1台だけでスムーズにまかなえる現場も多いはずだ。ワンオペの出張配信案件にもっとも最適なスイッチャーといえるだろう。

PRONEWS AWARD 2023 配信部門 シルバー賞

パナソニック「AV-HSW10」

配信部門発表。全部盛りのオールインワン機器に注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06説明画像

B5サイズ相当のコンパクトで持ち運び可能なサイズを実現しながら、通常のSDIやHDMIに加えて、NDIやSRTなどのIP入出力に対応。これだけコンパクトで多入力、さらにIPとベースバンドの両方の映像制作に対応してきた点を評価してシルバー賞とした。

2010年7月に発売された名機「AW-HS50」から、評価の高い本体ボタンとT型フェーダーなどの使いやすさを継承。サイズと操作性を維持しつつ現代らしい仕様を実現して登場してきた感じだ。さらに、クロマキーを使用可能なキーヤーを搭載しており、10ビットの信号処理の合成が可能。このあたりも受賞のきっかけとなった。

配信部門発表。機能満載のオールインワンビデオスイッチャーに注目[PRONEWS AWARD 2023] Vol.06