先週末(12月22日から24日)の北米興収ランキングは、クリスマスシーズンをめがけて公開された新作タイトルが大挙に上位にランクイン。1位から6位までのうち5作品を新作タイトルが占めるなか、首位を勝ち取ったのはDC最新作『アクアマン/失われた王国』(2024年1月12日日本公開)だ。

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2018年に北米興収3億3500万ドル、全世界ではDC映画として最高の11億5200万ドルを超える大ヒットを記録した『アクアマン』(18)。その続編となる『アクアマン/失われた王国』は3706館で公開され、初日から3日間の興収は2770万ドル。前作もオープニング興収は6787万ドルと決して爆発的なものではなく、そこからじわじわと興収を伸ばしていったが、昨今のアメコミ映画の情勢から考えると今回はかなり厳しい出足と言わざるを得ない。

2023年に公開されたDC作品は、『ザ・フラッシュ』(23)がオープニング興収5500万ドルで北米最終興収はかろうじて1億ドルを突破(全世界興収では2億7000万ドルを記録している)。『ブルービートル』(23)はオープニング興収が2500万ドルで最終興収は7200万ドル(全世界興収は1億2900万ドル)ほど。これらを踏まえると、『アクアマン/失われた王国』は北米興収1億ドルに届くかどうかも難しそうだ。DCユニバース再編前の最後の作品にして、かなり苦しい戦いを強いられることになる。

一方で2週目も2位に粘った『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(日本公開中)は、前週からおよそ半減の興収となったものの、週末の時点での累計興収は7500万ドル。やはりクリスマス当日は人気を集めていたようで、『アクアマン/失われた王国』に迫るデイリー興収をあげ、まもなく1億ドルの大台へと突入する見込み。

そのクリスマス当日には、『ウォンカ』や『アクアマン』と同じワーナー・ブラザース配給の『カラーパープル』(2024年2月9日日本公開)が異例の“月曜公開”をスタートさせており、デイリー興収ではこのワーナー3作品がトップ3を独占。これが次週末まで保たれるのかは注目しておきたい。

さて、3位にはイルミネーション・エンタテインメントの新作アニメ『FLY!/フライ!』(2024年3月15日日本公開)が入り、4位には『小悪魔はなぜモテる?!』(10)のウィル・グラック監督の最新ラブコメ『Anyone But You』。5位には「バーフバリ」シリーズのプラバース主演の『Salaar』、6位にはプロレスラーのフォン・エリック・ファミリーの伝記映画『The Iron Claw』と、かなりバラエティに富んだ作品が顔を揃えた。

かつてはアカデミー賞の候補資格を得るため、また投票期間が始まる年明けにも記憶が鮮明に残っていることを狙って年末ギリギリのタイミングでオスカー有力作が公開されることも少なくなかった。しかし近年は秋の映画祭シーズンを経ることが重要になるなど、賞レースに向けた新たな流れが確立したこともあり(前年の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は上半期公開作という特殊な例だったが)、そうした“滑り込み”の作品は激減。

とはいえ前述の『The Iron Craw』や『カラーパープル』(後者はかつてオスカー10部門11候補にあがりながら無冠に終わった作品の舞台版の映画化作品である)、そして4館での限定公開ながら18位に健闘したサーチライト・ピクチャーズの『異人たち』(2024年4月19日日本公開)は賞レースでの善戦が期待されている作品であり、批評集積サイト「ロッテン・トマト」を見る限り批評家からの評判も高め。長く続いたストライキの影響を少なからず受けることになる第96回アカデミー賞では、これら滑り込み作品にもチャンスが開かれるのだろうか。

文/久保田 和馬

クリスマス直前の北米興収ランキングは『アクアマン/失われた王国』が制す!/[c]Everett Collection/AFLO