ディズニー創立100周年を記念したアニメーション映画「ウィッシュ」が公開中。同作はディズニー100年の歴史の集大成とも言えるミュージカル作品に仕上がっており、日本版キャストにも注目が集まっている。どんな願いも叶うと言われているロサス王国に暮らすヒロイン・アーシャの声を担当するのは、多くのミュージカル作品でその才能を発揮している生田絵梨花。そのアーシャの相棒的存在の子ヤギ・バレンティノ役を日本声優界の至宝・山寺宏一が務めており、偉大な魔法使いでもあるマグニフィコ王を担当しているのが福山雅治だ。カリスマ性と威厳に満ちた王であり、“ディズニー史上最恐のヴィラン”でもあるマグニフィコ役はまさに適任だと言える。俳優としてもアーティストとしても活躍する福山だが、ミュージカル作品は「ウィッシュ」が初挑戦。歌と演技の両輪を最大限に発揮した本作は、福山にとって大きな意味を持つ作品だ。カリスマ的存在感、そして活躍ぶりは今さらつらつらと書きつづる必要もないことだとは思うが、「ウィッシュ」がディズニー創立100周年記念作ということで、“100年先に残したい福山の名曲と名演技”というテーマで、代表作を中心にいくつか紹介したいと思う。

【写真】威厳溢れる佇まいもまさにハマり役…!福山雅治と演じるマグニフィコのビジュアル

■事務所主催オーディションがきっかけでデビュー

1969年2月6日に長崎・長崎市に生まれた福山。1988年にアミューズ主催の「アミューズ・10ムービーズオーディション」に合格し、アミューズに所属。同年11月に公開された映画「ほんの5g」で俳優としてのキャリアをスタートさせた。主演は富田靖子で、福山は富田の相手役を務めている。

1990年には自身が作詞・作曲を手掛けたシングル「追憶の雨の中」で歌手としてもデビューした。俳優としてのスタートの方が早かったが、元々はミュージシャンになることが夢だったので、この歌手デビューというのも福山にとっては大きな起点となったようだ。俳優としての活動と歌手/ミュージシャンとしての活動のバランスが良く、どちらも欠かせない大きな二本柱になっているが、デビューの頃からそういう意識を持って活動してきたのだろう。

まずは“音楽”のほうからピックアップしてみよう。最初は元ARBの白浜久がプロデュースを手掛けたデビュー曲「追憶の雨の中」。疾走感のあるロックなサウンドにノスタルジーを感じさせる物語が展開する。チャートは振るわなかったが勢いと若さがあふれ、今聴いてもみずみずしさを感じることができる。

1992年にリリースした5枚目のシングル「Good night」は、オリコンウイークリーシングルCDランキングで初めてトップ10入りした曲。これはドラマ「愛はどうだ」(1992年TBS系)の挿入歌に起用され、福山自身も出演。ゆったりとしたテンポで言葉の一つ一つをかみ締めるような歌唱法は、福山の王道スタイルの一つだ。

1994年に9枚目のシングルとしてリリースされた「IT’S ONLY LOVE」も重要な曲。「MELODY」「All My Loving」と順調にセールスを伸ばしてきたところで発売されたこの曲は、ダイドー「ブレンドコーヒー」のCMソングにもなり、オリコンウイークリーシングルCDランキングで初の1位、さらには自身初のミリオンヒットを記録することとなった。福山の“愛”をストレートに歌う歌詞は胸に刺さる。

ダブルミリオンの大ヒットを記録した名曲

この頃からチャート上位の常連となり、「HELLO」「Message」「Heart」「Peach!!」「HEAVEN」と、タイトルを聞いただけで曲が頭の中に流れてくる名曲たちが次々と誕生した。そういう勢いと流れの中でもさらに一つ抜きんでたものとして挙げたいのは2000年4月にリリースし、ダブルミリオンセールスを記録した「桜坂」。

ウンナンのホントコ!未来日記V」(2020年、TBS系)のテーマソングにもなったこの曲は、別れた恋人への思いが歌われたラブソング。東京・大田区にある“桜坂”からタイトルが付けられていて、デビュー前にその辺りに住んでいたことがあったという。語り掛けるような優しい歌声は、福山の真骨頂でもあり、聴きやすく、そして歌詞の世界観もスーッと入ってくる。歌手デビュー10周年で見せた一つの集大成がこの曲だった。

地名という点では15周年の2005年にリリースした「東京」というシングルもある。18歳で長崎から上京し、18年東京で過ごした36歳の福山が自身のルーツを見直すために作った曲で、「BEAUTIFUL DAY」「東京にもあったんだ」と共に“東京3部作”と呼ばれている。

大きなテーマと深い思いが込められた「家族になろうよ」は、2011年8月にリリースされた27枚目のシングル。同年3月に発生した東日本大震災の影響でツアーが中断し、その時に歌詞を書いたという。長い人生のこの先のことを語り合って、寄り添っており、まさしく“100年先に残したい”曲の筆頭である。

■“紅白”で歌唱する最新曲も注目

2020年12月にリリースしたアルバムのタイトルは『AKIRA』。福山が17歳の時に亡くなった父親の名前がタイトルになっている。その前のアルバムも『HUMAN』という大きな意味を持つタイトルが付けられていたが、父親の名前をつけることで、人間の存在、死生観までも正面から取り組んだ作品となった。あと1曲加えるなら「想望」を。

こちらは福原遥と水上恒司のW主演映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(公開中)の主題歌で12月4日にデジタル配信されたばかりの最新曲。映画の主人公である特攻隊員・彰(水上)の視点で、“今、日々を生きていることの幸せ”が描かれている。大みそかの「NHK紅白歌合戦」(NHK総合ほか)でもSPメドレーとして披露される予定で、この曲の初披露時の映像を収めた「FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏」が、年明け1月19日(金)から4週間限定で全国公開される。

俳優としての代表作も枚挙に暇がないので選びきれないところだが、1993年に放送された「ひとつ屋根の下」(フジテレビ系)は何度も繰り返し見たくなる作品の一つ。江口洋介、福山、酒井法子、いしだ壱成、大路恵美、山本耕史による柏木家の面々がハマり役。「チイ兄ちゃん」の印象はずっと残っている。福山が江口に呼び掛ける「あんちゃん」のモノマネもはやった。

2003年に放送された松嶋菜々子とのW主演ドラマ「美女か野獣」(フジテレビ系)も名作だ。テレビ局が舞台で、松嶋と福山はチーフプロデューサーとディレクターで、元恋人同士という関係でもある。やり方が違ってぶつかり合うが、やがてお互いのスタイルも尊重するようになり…という“絆”が深まっていく様子を見ているのが楽しい作品。テレビ局員の人間模様を描いた作品という点でいわゆる“テレビっ子”にもウケた。

■“実に面白い”傑作シリーズ

シリーズものでは「ガリレオ」は避けて通れない作品だろう。東野圭吾の人気シリーズを原作に、福山が物理学科の准教授・湯川学を演じた。刑事・内海薫(柴咲コウ)とのコンビ、大学の同期でもある刑事・草薙俊平(北村一輝)との関係性など、物理学者の視点から謎を解く面白さと、人間関係の面白さの両方が魅力になっている。ドラマ、映画など、いずれも「実に面白い」。

刑事とのバディものといえば、2023年4月期の日曜劇場「ラストマン-全盲の捜査官-」(TBS系)では、全盲のFBI特別捜査官役に挑戦。ドラマの中ではシリアスな事件が起こっているが、コンビを組んだ大泉洋とのコンビは笑わせてくれるシーンも多かった。

そして「アナと雪の女王」(ディズニープラスで配信中)のスタッフ陣が集結した最新作「ウィッシュ」は、福山にとって意外にも初のディズニー作品参加、初のミュージカル作品挑戦となったが、マグニフィコ王吹き替え声優を見事に務めている。オリジナル・サウンドトラック(日本版)もリリースされており、その中で“なんて無礼な”のフレーズも印象的な「無礼者たちへ」と、アーシャ役・生田絵梨花とのデュエット曲「輝く願い」を聴くことができる。

100年たっても1人のことを好きでいるのはなかなか難しいことかもしれないが、これらの作品を見たり、聴いたりしていればキミもずっと幸せでいられるはずだ。

◆文=ザテレビジョンシネマ

福山雅治/※2023年ザテレビジョン撮影