世界最高峰との呼び声高いプレミアリーグ折り返し地点を迎えた。大半のクラブがシーズンの半分となる19試合を消化し、これから後半戦に突入していく。
 
 プレミアリーグにはウィンターブレイクが設けられていないため、折り返し地点で区切るのは難しいが、後半戦を前に現地の放送局『スカイスポーツ』が今シーズンの前半戦を振り返り「独自のアウォード」を発表しているので今回はそれを紹介しよう。

[写真]=Getty Images
 

◆■前半戦の最優秀…

 
「ベストゴール」に選ばれたのはマンチェスター・ユナイテッドアルゼンチン代表FWアレハンドロガルナチョだ。弱冠19歳のウインガー11月26日に行われた第13節エヴァートン戦(3-0○)の開始3分に完璧なバイシクルシュートを叩き込んで見せた。この圧巻の一撃は11月のリーグ月間最優秀ゴールにも選出されている。
 


 
 前半戦の「ベストゲーム」は11月6日に行われた第11節トッテナムvsチェルシー(1-4)。選考理由は、合計5ゴールに加えて、5つのゴール取り消し、2枚のレッドカードチェルシーセネガル代表FWニコラス・ジャクソンハットトリック、PK、そして「トッテナムの異常に高い最終ライン」など、見どころ満載だったからだという。
 
「最悪のプロセス」は、もちろん問題になったVARの大失態である。9月30日の第7節トッテナムvsリヴァプールの一戦にて、スコアレスで迎えた34分にコロンビア代表FWルイス・ディアスがネットを揺らすも、VARチェックの結果オフサイドによりゴールが取り消された。VARを担当したダレン・イングランド氏は、主審の最初の判定が「ゴール」だと勘違いして、オフサイドがないことを確認した後に「チェック完了」と伝えてしまったのだ。だが、ピッチ上の審判団の最初の判定はオフサイド。それを肯定されたため、プレーを再開してしまい、自分たちの間違いに気づいたときには後の祭りだった…。

 
 そうなると「最優秀アンサングヒーロー」は、L・ディアスのゴールを何とか認めさせようと最善を尽くしたVARオペレーターだ。VARとVARアシスタントがチェックを済まして「チェックコンプリート」と伝えたためにゲームが再開したが、そこでVAR機器を操るオペレーターが「ピッチ上の審判の判定はオフサイドでしたが、本当にこれでいいのですか?」と指摘。「チェックした映像はオンサイドですが、本当にいいのですか?」と意見するも、イングランド氏は「リスタートしてしまったので何もできない」の一点張り。競技規則には「主審はプレーを再開した後、その直前の決定が正しくないことに気づいても、またはその他の審判員の助言を受けたとしても、再開の決定を変えることができない」とあるが、あの時点で一度試合を止めて協議していれば、何とかなった可能性もあるのではないだろうか?
 
 前半戦の「ベスト補強」はアーセナルイングランド代表MFデクラン・ライス。チームの守備力を急激に向上させただけでなく、今シーズンすでに2本も後半の追加タイムに決勝ゴールを決めている。「1億500万ポンド(約189億円)は安すぎる?」と同メディアは指摘している。

 
「ベストセーブ」もアーセナルから。9月24日の6節トッテナム戦でスペイン代表GKダビド・ラヤがウェールズ代表FWブレナン・ジョンソンのシュートを素早いステップから見事にセーブ。ベンチに座っていた守護神争いの“ライバル”イングランド代表GKアーロンラムズデールも拍手を送るほかなかった。
 


 
「最優秀ワンダーボーイ」はニューカッスルU-19イングランド代表MFルイス・マイリーだ。12月16日に行われた第17節フルアム戦でプロキャリア初ゴールを記録。わずか「17歳229日」での得点は、ニューカッスルにとってプレミアでの最年少ゴールとなった。
 


 
 前半戦の「ベストチーム」「ベスト監督」「ベストパフォーマンス」はアストン・ヴィラが独占。ウナイ・エメリ監督のチームは今月26日の第19節マンチェスター・ユナイテッド戦で2-0のリードから逆転負けを喫したが、まだまだ熾烈な上位争いに身を置いている。ベストパフォーマンスにはマンチェスター・シティを圧倒し1-0で勝利した12月6日の試合が選ばれた。グアルディオラ監督が率いるチームが2本しかシュートを打てなかったのは過去最少。さらに22本ものシュートを浴びるのも最多タイだった。

 
 そして注目の「前半戦の最優秀選手」だが、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドエジプト代表FWモハメド・サラーイングランド代表FWオリー・ワトキンス、韓国代表FWソン・フンミンなどの名前を出し、決めきれないので「好きな選手を選んでね」と何と読者に丸投げしている!
 

◆■少し変わったMVP

 
スカイスポーツ』の番組における「最優秀ゲスト」に選ばれたのはウルヴァーハンプトン(ウルブス)を率いるギャリー・オニール監督だ。同氏は今年6月にボーンマスの監督を解任され、今シーズンからウルブスを率いている。そして10月21日の第9節ボーンマス戦では見事に古巣チームを2-1で撃破した。するとオニール監督は『スカイスポーツ』の番組に出演した際に、ボーンマス対策の練習の映像などを持ち込んで、どうやって古巣チームを倒したかを説明。さらに王者マンチェスター・シティを2-1で下した勝ったゲームについても映像を使って教示した。
 
「オニール監督にとって最低の判定賞」を受賞したのは、開幕戦でのオーストリア代表FWサーシャ・カライジッチだ。ユナイテッドカメルーン代表GKアンドレ・オナナに頭をパンチングされるもPKを貰うことができなかった…。今シーズンのオニール監督は、映画『クリスマス・キャロル』に登場する冷徹なエベネーザ・スクルージになってしまってもおかしくないほど、今シーズンは不運な判定に見舞われているという。

 
「ロイ・キーンの最優秀発言」は、番組にマジシャンダイナモが出演してマジックを披露した際のコメントだ。共演した元リヴァプールジェイミー・キャラガー氏や元マンチェスター・シティのマイカ・リチャーズ氏がマジックに感嘆するなかで、元マンチェスター・ユナイテッドの闘将は全く表情を変えずに「でも、これが彼の仕事でしょ」と指摘して大爆笑を誘った!
 
 前半戦の「暴言賞」に選ばれたのはアーセナルのミケル・アルテタ監督。11月のニューカッスル戦で今シーズンのリーグ戦初黒星を喫すると、イングランド人FWアンソニーゴードンの決勝ゴールが認められた件について試合後に審判団とVARを大批判。「私はこの国に20年以上いるが、世界最高のリーグと言えるレベルには達していない。残念だ」などとコメント。その後、クラブも監督の発言を「心の底から」支持するという異例の声明を発表した。

 
「ベスト弁護士賞」は、そのアルテタを救ったアーセナルの関係者。あれだけの暴言を吐けば、ベンチ入り禁止や罰金処分は免れないはず。しかし、アーセナルは独立規律委員会に正当性を訴え、見事に無罪を勝ち取った。どうやらアーセナル側は“誤解”を主張したとのこと。アルテタ監督が使った英語の「disgrace(恥・不名誉)」に発音が似ているスペイン語があり、スペイン語の「desgracia(不運・惨事)」には相手を侮辱する意味がないのだという。18年以上も英国圏に住んでおり流暢な英語を操るアルテタ監督の主張が認められることになったが、これには「TVドラマの悪徳弁護士も誇らしいはず」と『スカイスポーツ』は揶揄している。
 
 果たして、シーズン後半戦はどんな“ドラマ”が待っているのか? プレミアリーグの熱戦、そしてギャリー・オニール監督の表情にも注目だ!

(記事/Footmedia)

熱戦が繰り広げられたプレミアリーグ前半戦 [写真]=Getty Images