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くるりのライブツアー「ハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル」が12月23日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でファイナルを迎えた。この記事では前日に同会場で行われた東京公演1日目の模様をレポートする。

【画像】ツインドラム編成でのパフォーマンスを披露したくるり。

ご機嫌な幕開け

「ハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル」は、くるりが 10月にアルバム「感覚は道標」をリリースしたのに伴い開催したツアー。近年くるりのライブを支える松本大樹(G)、野崎泰弘(Key)、加藤哉子(Cho)に加え、2019年のツアー「列島Zeppェリン」以来約4年ぶりの参加となるクリフアーモンド(Dr)、そしてオリジナルメンバーであり「感覚は道標」をともに作り上げた森信行(Dr)が帯同することでもファンの注目を浴びていた。

定刻を少し過ぎた頃、「感覚は道標」の収録曲「LV69」のイントロが場内に鳴り響き、森を先頭にバンドメンバーが次々とステージに登場。岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)は、この日を待ち侘びた観客が鳴らすハンドクラップに迎えられて定位置に着くと、ブギーなギターを合図に「LV69」を実際に演奏してご機嫌にライブの幕を開けた。くるりはこのパートで「doraneco」「happy turn」など最新アルバムの楽曲を披露。そして初期の代表曲「ばらの花」を彷彿とさせる「朝顔」をじっくりと聴かせたかと思えば、その余韻を断ち切るように90年代オルタナティブロックを想起させる「California coconuts」を続けて演奏し、序盤から観客の心をがっちりとつかんだ。

森信行とクリフ・アーモンド、それぞれのスタイルで

MCで岸田によるメンバー紹介で森の名前が呼ばれると、客席からは大きな拍手ととも「もっくーん!」と彼を歓迎する声が上がる。森は満員のフロアを眺めながら「これはなかなかない経験ですよね。もう……感無量だ!」と感慨深そうに語った。そして、くるりは「感覚は道標」の制作過程を追ったドキュメンタリー映画「くるりのえいが」の主題歌「In Your Life」を次の曲にセレクトすると、開放感のあるピュアなロックサウンドを会場いっぱいに響かせた。

「In Your Life」の演奏を終えたところで、ドラムは森からクリフバトンタッチ。くるりクリフの重厚感のあるドラムに乗せて、ラテンの要素を独自に消化した「ナイロン」、目まぐるしい曲展開を見せる「Morning Paper」、疾走感あふれるパンキッシュなロックナンバー「さっきの女の子」、風刺とユーモアが絶妙な塩梅で盛り込まれたポップソング「益荒男さん」などタイプの異なる楽曲を次々と繰り出し、常に音楽的な変化とトライを繰り返してきたバンドの歴史が垣間見えるステージを展開した。ライブ終盤、岸田は「クリフは明日のツアーファイナルが終わったら国に帰っちゃうからさみしいよね。きっとたくさん寿司とか肉とか食ったでしょう(笑)」と冗談めかしながら、「そんな彼と初めて一緒にやった曲を演奏して締めたいと思います」と告げて「HOW TO GO」を熱唱。会場に深い余韻を残してステージをあとにした。

最後は3人きりで「東京」

くるりアンコールで森を含めたフルメンバーでステージに登場。岸田が「素敵で個性的なドラマー2人がドラムセットを鎮座させておりますので、2人のドラムの音圧を浴びながら小粋な曲をやりたいなと思っております」と宣言すると、「お化けピーナッツ」「世界はこのまま変わらない」を届けて会場の熱気を再びヒートアップさせる。この編成で最後に披露されたのは「ロックンロール」。7人が紡ぐフレッシュで骨太なサウンドを浴びた観客は、手を掲げたり体を揺らしたりとそれぞれが自由に楽曲を楽しんだ。

サポートメンバーが退場し、ステージに残った岸田、佐藤、森の3人はまず1998年発表のメジャーデビューシングル「東京」のカップリング曲「尼崎の魚」を演奏した。結成27年目のバンドが21年前に脱退したメンバーといちからアルバムを作り、ツアーを回り、当時の楽曲を演奏しているという特別な状況に会場全体が異様な熱気に包まれる中、3人がラストに選んだのは「東京」。真っ赤なライティングの下、くるりはこの日一番のエモーショナルな演奏を届け、充実した表情でステージを去っていった。

セットリスト

くるり「ハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル」東京公演1日目 2023年12月22日 Zepp DiverCity(TOKYO)

01. LV69
02. doraneco
03. happy turn
04. I'm really sleepy
05. 朝顔
06. California coconuts
07. In Your Life
08. The Veranda
09. ナイロン
10. watituti
11. Morning Paper
12. お祭りわっしょい
13. さっきの女の子
14. 虹色の天使
15. 冬の亡霊
16. 益荒男さん
17. 琥珀色の街、上海蟹の朝
18. There is(always light)
19. 地下鉄
20. HOW TO GO
アンコール
21. お化けピーナッツ
22. 世界はこのまま変わらない
23. ロックンロール
24. 尼崎の魚
25. 東京

くるり(撮影:三田村亮)