“10分以内のデリバリー”と“わずか3年でユニコーン到達”にて一躍有名になったZeptoは、クイックeコマースを手掛けるインドのスタートアップだ。スタンフォード大学を中退したAadit Palicha氏とKaivalya Vohra氏が立ち上げた企業である。

驚くのはデリバリーとユニコーン到達の速さだけではない。10月に発表された2023年度の決算報告において、収益が前年度比で14倍と驚くべき結果を出している。インドのスタートアップメディアによると、2023年度のZeptoの売上高は2,087億インドルピー、前年度の140億インドルピーから14倍に拡大。8月にはシリーズDラウンドで$200million(2億ドル)の資金調達を実現したという。

そのウルトラ級の急成長の背後には何があるのか探ってみたい。

インドの巨大なeコマースの波に乗ったZepto

Zepto公式サイトより引用

まず、新型コロナウイルス感染拡大がZepto成長の“追い風”となったようだ。日用品から食品・小型家電とあらゆる商品を10分で届けてくれるZeptoは、ロックダウンで戸惑う14億人を超えるインド国民のニーズに応える形となった。

過度なスピード配達による懸念に関して議論がなされた一方、キャッチーな宣伝やスタイリッシュなデザイン、シンプルで便利なZeptoは瞬く間にダウロード数を伸ばしていったという。

もともとインドでは、パパママストアとも呼ばれる小型の小売店Kiranaが主流で、eコマースはそこまで浸透していなかった。そこへ、新型コロナウイルスの影響によってeコマースのニーズが急激に高まり、この時期には多くのスタートアップが登場している。Zeptoはまさに、コロナ期のインドの巨大なeコマースの波に乗ったという見方もできるだろう。

先進的な物流システムと地域のネットワーク

Zepto公式サイトより引用


そして、Zeptoが成功した裏にはもう1つ、同社の幅広い品揃えと物流・インフラテクノロジーがある。5,000種類を超える商品は、AIを駆使した物流システムにて常に最適化が計られている。移り変わる消費者のニーズにスピーディーに応えることが功を奏した。

加えて、地域のローカル業者と強力なパートナーシップを築いたことも、仕入れ部門でZeptoならではの優位性を与えたようだ。

2022年11月には、コカ・コーラの「World without Waste」プログラムで協業。ペットボトルの回収を行うなど環境保全面でも抜かりがない。

デジタル・インフラと若年層が後押し?

さらに、もう1つZeptoの成功を後押ししたのが、インドのデジタル・インフラと若年層比率の高さである。

インド政府は2016年より、モバイル決済の基盤となるUPI(Unified Payment interface)という決済システムを、インド決済公社(NPCI)の主導のもとで整備を進めている。UPIは、業種を問わずさまざまなタイプのアプリケーションにAPI接続が可能だ。

インドは日本と異なり、モバイル決済に抵抗を感じない若年層が総人口の大半を占める。つまり、クイックeコマースが成功する条件を備えているのだ。

しかしながら、コロナ禍で盛り上がったインドのeコマースの熱はやや落着きつつあるという見方もある。競合は増える一方で、これからがZeptoの本当の実力を見せる正念場だといえるかもしれない。

参考・引用元:Zepto公式サイト

(文・MI001YOU