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支持率低下に加え裏金問題まで発覚し、絶体絶命岸田首相(写真:つのだよしおアフロ

岸田内閣の支持率低下が著しい。

2023年12月8~11日の時事通信世論調査では内閣支持率が17.1%、毎日新聞においては12月16日、17日の調査で16%と、ついに10%台にまで内閣支持率が落ち込んでしまったのだ。

マイナンバーカードの利用時に不具合が続出し、『紙の健康保険証を廃止する』とした政府方針が国民の不安を煽ったことで、2023年6月ごろから各社の世論調査で、岸田政権の内閣支持率は下降が始まりました。

9月に内閣改造で巻き返しを図ったものの不発、その後は『一人4万円の定額減税』や『低所得者への7万円給付』などの“アメ”をぶら下げましたが、『焼け石に水』の状態でした」(全国紙政治部記者)

そして年末にかけて、いわゆる政治資金パーティーをめぐる裏金問題という、政策以外のスキャンダルが追い打ちをかけ「内閣支持率は危険水域」(前出・全国紙政治部記者)に陥っているのだ。

就任直後から「聞く力」があると評価されてきた岸田首相だったが、内閣として打ち出してきた政策は、本当に国民の声を聞いてのものだったのだろうか?

本誌は、2023年に岸田政権が掲げた政策の中から主なものを7つ挙げ、「いちばんイラッとした岸田政権の政策」を選んでその理由を記してもらうアンケートを、全国の20代以上の男女を対象に緊急実施した。

【1】低所得者世帯への7万円給付

岸田首相は、物価高騰などへの対策として、住民税非課税世帯への7万円給付を年内に行うとしていた。しかし年末年始に支給が間に合う自治体は全国の2割弱という状況だ。

住民税非課税世帯とは、生活保護法による生活扶助を受けている人や、障害者、未成年者、ひとり親などで、前年の世帯全員の合計所得金額が135万円以下の人などが該当する。

この給付に対して、アンケートでは「イラッとした」政策の第2位となる81票を集めた。

コメントは以下のとおり。

《納税者を無視しているように思う》(46歳男性)
《低所得者ばかり支援されている。私はギリギリ低所得ではないのでいつも対象外》(44歳女性)
《不公平》(35歳男性)

一部の人のみを7万円給付の対象としていることが、給付を受けられない人からすれば、不公平に感じられるのかもしれない。

【2】防衛費増額

2位とは1票差で「イラッとした」政策の第3位となった防衛費増額。

政府は、2023年度から5年間の防衛力整備の水準を、現行の計画の1.6倍にあたる43兆円程度として進めている。

その初年度である2023年度は、前年度から1兆4千192億円の増額となった。

前年度からの増額は例年500億円程度だったことを考えると、かなり跳ね上がったことになる。

「イラッとした」というアンケートの回答を見てみよう。

《国民の生活のほうがよっぽど大変なのに、そちらに金を増やしてる場合か》(61歳男性)
《防衛費増額より物価高などに充てるべき》(52歳男性)
《他に使うべきとこがある》(52歳女性)

予算の枠を増やすのは「防衛費ではない」という声は根強いようだ。

一方で防衛費の増額に「イラッとする」という声は、違う角度からも……。

《アメリカにおんぶにだっこ状態は良くない。防衛費にももっと自主性がほしい》(75歳女性)
《アメリカの機嫌取りで国民を見ていない》(60歳男性)

1960年に現在の日米同盟が締結されて以降、防衛費に関して、常にアメリカの意向が強く反映されているという見方は多い。

対米政策において岸田首相の「聞く力」が存分に発揮されてしまっている可能性も十分にある。

【3】紙の健康保険証の廃止

岸田政権の支持率を大きく下落させた「紙の健康保険証の廃止」は、「イラッとした」政策アンケートでも91票を獲得し、第1位となった。

12月22日に政府は現行の「紙の健康保険証」の廃止時期を盛り込んだ政令を閣議決定。

これにより2024年12月2日に現行の健康保険証は廃止となり、この日以後、基本的にはマイナンバーカードを保険証として使用することになる。

しかしながらマイナンバーカードを保険証として使用した人の医療データに、別人のものが間違って紐づけられてしまうなどのミスが相次いで発覚したのは記憶に新しいところ。

その人にどんな病気があって、どんな薬を処方されているかといった個人情報が、マイナンバーカードと一体化した保険証によって流出してしまうのではないか、などの不安を、多くの人が抱く結果となった。

今回のアンケートで、紙の健康保険証の廃止に「イラッとした」と答えた人の理由は以下のとおり。

《なんでペーパーレスでないとダメなのか》(79歳男性)
《様々な理由でマイナンバーカードを作れない人もいると思うので、紙の保険証は残したほうがいいと思います。マイナンバーカードに保険証を紐付けするのは情報漏洩が心配です》(64歳女性)
マイナンバーカードの強制加入に違和感がある。個人情報をコントロールされているようで、情報漏洩も含め不安に感じる》(55歳男性)

紙の保険証を持ち続けたい人や、マイナカードとの紐付けに抵抗のある人が、少なくないことがわかった。

これに対して政府は、2024年12月の廃止後も、最大1年間は紙の保険証が使用可能だとし、マイナ保険証がない人には、資格確認書を発行する予定だとしている。

一方、医療機関側で業務に支障が出ているという声もあった。

《医療機関に勤めているが、余計な仕事が増えたうえに、マイナンバーカードだと目視で番号を確認したりできない》(39歳女性)

医療現場ではすでに、本来の仕事ではない作業が増えたりしているなかで、2024年12月、本当に紙の保険証は廃止されてしまうのだろうか。

【4】少子化支援金1兆円の徴収

年3.6兆円もの少子化対策を盛り込んだ「こども未来戦略」が2023年12月22日に閣議決定。

児童手当の拡充や、多子世帯の大学などの授業料無償化といった施策の、財源のひとつが創設される支援金であり、医療保険料と併せて約1兆円規模が、新たに徴収されると予想されている。

ただ現段階で政府は、国民に実質的な負担が生じないようにするとしており、先が見えない状況でもある。

今回の「イラッとした」政策アンケートでは4位。その回答理由を見てみよう。

《逆に少子化を推進するような政策を打ち出している》(50歳女性)
《本当の少子化解消の道筋にならない手法だから》(54歳男性)
少子化対策の重要性は理解できますが、その予算確保に向けては規定予算の見直しなど、安易に国民の負担増を招くことのないようにすべき》(72歳男性)
一般国民は、今も節約しながら何とか生活している。それでもまた、医療保険の保険料から徴収されるとはどういうことか》(63歳女性)
《子どもがいない世帯には得がない》(47歳女性)

近年の少子化を巡る問題で、子どもの出生数とともに際立ってきているのが、婚姻数の激減であるといわれている。

子どもがいる世帯への支援のために、子どもがいない、あるいはこれから子どもを持とうとしている人に負担を強いるのは、少子化対策に逆行する策であり、政府の少子化施策の矛先が違うと考えている人も多いことが、今回のアンケート回答から見て取れる。

【5】一人4万円の定額減税

岸田首相が宣言した「一人4万円の定額減税」。

2024年6月に始めることが発表されたが、アンケート実施段階では半年も先のことであり、実感に乏しいようだ。

内閣支持率の上昇にもほとんど効果がみられなかったようである。

今回の「イラッとした」政策では5位となったアンケートの回答理由を見てみよう。

《何の足しにもならない。やった感を出すためだけにやるのだろう》(62歳女性)
《ただのバラマキ給付金だから》(39歳男性)
《増税前のバラマキ》(70歳男性)
《たかが4万円の減税ぐらいでは何も変わらない》(58歳女性)

定額減税をエサとして「増税」があるという意識を持つ人が多いのかもしれない。

なかには多くの人が思わずウンウンと頷いてしまうような回答も。

《全く国民を理解できていない》(35歳男性)

【6】賃上げ政策

2023年の春闘では、記録的な物価高が根底にあるためか、賃上げに踏み切る会社が多かったという。

経団連の集計によれば3.99%の賃上げ率で、31年ぶりの水準だというが、果たしてその実感が国民にあるかというと……。「イラッとした政策」6位のアンケート回答を見てみよう。

《結局給料は上がらないから》(41歳女性)
《実際に賃上げされていないから。その割に全体的には賃上げが進んでいて、増税の話が浮かんでいるから》(38歳男性)

2023年は「賃上げ」に喜ぶどころか「値上げ」に苦しむ日々の連続だったという声が多かった。

【7】電気・ガス代補助金

2022年1月から始まったガソリン代への補助に加え、2023年1月からは電気・ガス料金の補助を政府は開始。

一般家庭の場合、電気代が1kwhあたり7円、ガス代が1㎡あたり30円の補助金額で、当初2023年10月までの予定だったが、物価高が続いていることにより、11月以降も延長された。だが補助金額は半分に減額されている。

今回の「イラッした」政策アンケートでは一番回答数が少なかったが、それぞれの回答理由を見てみよう。

《地域によって暑すぎる(寒すぎる)時期のいちばん電気代やガス代が高い時期に減額するなら納得できるが、何でもない時期(秋や春)に減額されてもなぁと思った》(47歳女性)
《補助金出すくらいなら単純に(値段を)下げれば良いと思う》(21歳女性)

やはり、庶民が何に苦しんでいるのか、理解されていないという声が多い。

最後に、アンケートに提示した7つの政策以外への回答も紹介しておこう。

《国民からお金を取るな、政治家の給料を減額しろ》(54歳女性)
《自分たちの給料はすぐ上げるのに国民の所得税減税は来年ってどうかと思う。反対に減らしてもいいぐらいだと思う。いろいろ特権もあり給料もらいすぎ。それでも足りないというのは何も考えず人の金だからザルみたいに使っているからでは? もうちょっとカチッとできる人がいないのかな》(65歳女性)

これらはどちらも岸田首相の政策というより、政治家、国会議員全体に対する苦言。

岸田首相が眼鏡越しに何かを訴えても、われわれは「聞く力」ならぬ「聞く気力」も出ないといった感に陥っているのかもしれない。

だが、無関心がいちばん怖いところ。放っておくと、その間にどんな法律が閣議決定されるかわからない。

期待できずとも、2024年も政治家と政策に注視を続けなければならない。

【2023年「いちばんイラッとした岸田政権の政策」ランキング順位】

1位:紙の健康保険証の廃止…91票
2位:低所得者世帯への7万円給付…81票
3位:防衛費増額…80票
4位:少子化支援金1兆円の徴収…71票
5位:一人4万円の定額減税…66票
6位:賃上げ政策…60票
7位:電気・ガス代補助金…10票

【調査概要】

実施期間:2023年12月19日
調査対象:20歳以上の男女500人
調査方法:WEBでのアンケート(クロス・マーケティングのセルフアンケートツール『QiQUMO』などを使用)