声優界随一のサイクリスト・野島裕史がパーソナリティをつとめ、自転車をテーマにお届けするTOKYO FMのラジオ番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。12月24日(日)の放送は、前回に引き続き、一般財団法人『日本自転車普及協会』の理事であり、UCI公認、日本最大の国際自転車ロードレース『ツアー・オブ・ジャパン』組織委員会委員長栗村修さんをゲストに迎え、2024年の自転車業界の展望について伺いました。


(左から)パーソナリティの野島裕史栗村修さん



◆2024年の展望① 自転車通勤テスト実施中

野島:本日のスペシャルゲストは、前回に引き続き“自転車大好きおしゃべりおじさん”改め“新しい自転車業界のリーダーズ”、自己紹介をお願いします!

栗村:“自転車に乗るときは左側通行、信号を守ろう”栗村修でございます。

野島前回の放送では2023年の自転車に関するニュース・トピックスのなかから印象に残った出来事を3つ解説していただきましたが、話し忘れたことがあったそうですね。

栗村:そうなんです。僕は自宅が川崎にあり、職場が目黒になって約10年、やろうやろうと思って全然できていなかった片道25kmの“自転車通勤”をとうとう2023年に始めたので、これを話そうと思っていたのにすっかり忘れてしまいました。今日はお話しできたらと思います。

野島:期待しております。では今回の企画に参りましょう! 『栗村修の学べる自転車ニュース 2024年の展望編』。“自転車業界の池上彰”を目指す栗村さんに2024年の自転車に関するニュース・トピックスのなかから特に気になること、知っておくとためになる話題を3つ解説していただきます。

栗村:今回は2024年、未来の話題のキーワードは“テスト”でいきたいと思います。

野島かしこまりました。では、『栗村修の学べる自転車ニュース 2024年の展望編』、1つ目をお願いします!

栗村:「自転車通勤テスト」です。

野島:なるほど! 1つ目からしっかり“テスト”が入ってきましたが、解説をお願いします。

栗村:私、栗村修。選手生活を15年ほどやりまして、当時は年間3万km近くも自転車に乗っていたのですが、選手って引退後は二手に分かれることが多く、自転車に乗り続ける人とすっかり乗らなくなる人がいるんですけど、私は後者。乗らなくなっちゃったんですね。そんななか、コロナ禍でも多くの方々が実施された自転車通勤を、僕も50代になりやってみようと思い開始しました。

すると、思ったよりもメリットがめちゃくちゃ多いんです。もちろん注意しなければならない点もたくさんあるんですけど、それを超えるメリットがあることに気づきましたので、皆さんがより自転車通勤しやすい環境を、まずは自分がテストをしながら構築し、発信していきたいと思っている2024年“自転車通勤”です。

野島:ありがとうございます。ちなみに、乗らなかったブランクはどれくらいあるんですか?

栗村:引退後はイベントなどで何か乗る機会があるときに年間数回乗るくらいでした。

野島定期的に乗るようなことはなかった?

栗村:そうですね。ロードバイクは所有していましたし、全く乗っていなかったわけではないんですけど、日常的に乗るという意味では30歳で引退して以降20年くらい(乗っていない)。

野島:そんなにブランクがあったんですね。でも、自転車通勤となると往復50km近くになるわけですよね?

栗村:そこも工夫しなければいけないなと思って。例えば、朝は自転車で行き、職場にスーツを常備しておいて着替え、帰りは電車。そして、また別の日は電車で行って、帰りは自転車みたいな。そうして(自転車通勤の)敷居を下げることで継続性が生まれる感じはしますね。

野島:なるほど! それは面白いですね。

栗村:何も(自転車で)往復することがマストではないので、片道ずつという選択肢もあります。あと、自転車通勤は“着替え”が一番のネックになりますが、工夫次第で短時間で着替えることができると思いますし、汗をかいてしまったウェアも屋上に干しておけば帰りには乾いていたりします。職場によって環境は違うと思いますが、いろいろな工夫ができると思い、今は試行錯誤しながらいい方法を見つけている最中です。

私は日本自転車普及協会の理事でもあるので、自転車通勤もまず自分で経験し、ちゃんとフィードバックをして、より良い環境に少しずつ変えていきたいなと思っています。

◆2024年の展望②「ツアー・オブ・ジャパン」が変化!

野島:『栗村修の学べる自転車ニュース 2024年の展望編』、2つ目のテーマはなんでしょう?

栗村:国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」、新たな形に向けてテストいたします!

野島:おぉ~、それは期待できますね! 栗村さん、解説をお願いします。

栗村:2024年で26回目の開催を迎える「ツアー・オブ・ジャパン」ですが、昨年までは“UCI”、国際自転車競技連合のクラスが「1クラス」で開催していたのですが、2024年はあえてワンランク下げた「2クラス」にします。

これは日本の自転車ロードレース界全体の構造をデザインし直そうということで、クラスダウンにはなりますが「2クラス」に下げることでクラブチーム、例えば大学生のチームが参加できたり、出場できる選手の幅が広がります。

一方、世界最高クラスのワールドチームは出場できなくなるんですけど、そういったチームは近年「ツアー・オブ・ジャパン」には出場していなかったので、あえてクラスを下げることで世界中の若手トップ選手を集め、未来につながるようなレースにしていきたいということでございます。

野島:これはかなり思い切りましたね。

栗村:そうですね。SNSで発表したときはボッコボコにやられました(笑)。

野島:僕的には英断だと思いますけどね。

栗村:単純にクラスダウンというのは(自転車に)詳しい方が見てもツッコミどころがある判断として見えたところもあると思います。

でも今、国内のレース界で何が起きているかといえば、選手の高齢化と外国人選手の問題。外国人選手でポイントを獲得し、レースの出場権を取ろうとするところが一部あるんですよね。その結果、何が起きているかというと日本の若手選手の育成が構造的にしづらくなっているんです。

そこを変えていこうというのが「ツアー・オブ・ジャパン」の戦略的クラスダウンで、実際に効果が出たり、ご理解いただくまでには時間がかかると思いますが、愚直に進めていきたいと思っています。

野島:確かに育成という面では、「2クラス」になることでメリットはありますよね。

栗村:とはいえ、「ツアー・オブ・ジャパン」はエンターテインメント・スポーツイベントなので、育成に振ると見る楽しさやお祭り感を損なうところもあります。そのバランスは難しいんですが、やはり「ツアー・オブ・ジャパン」というレースは歴史的に見ても、これを走った後に世界のトップスターになった選手がすごく多いんです。

例えば、クリス・フルーム(ツール・ド・フランスで4回の優勝経験がある世界的なライダー)も「ツアー・オブ・ジャパン」でステージ優勝していますし、そういった“登竜門的レース”というDNAをもう一度呼び起こしたいという僕自身の思いもあります。

野島:これは以前から考えていたことなんですか?

栗村:本当は「ツアー・オブ・ジャパン」独自でやるというより、日本のレース界全体でデザインし直さないといけないんですけど、なかなかそれは実現できないので、まずは「ツアー・オブ・ジャパン」でしっかりと再起動していきたいなと。

そんなに昔から考えていたわけではなく、「ツアー・オブ・ジャパン」自体はどんどん上にいく絵を少し前は思い描いていました。ただ、レースが上にいっても選手やチームがついてこないという現象が起きてしまったんです。

そのアジャストというか、やはり1つのテストですね。どんな結果が待っているかわかりませんが、惰性でいくよりはしっかりと新しい取り組みを始めようということで決断した感じです。

野島:進化のための動きという感じはします。

栗村:変化する過程のなかで、必ず何かしら掴むものがあると思います。あとはメッセージ。日本の若手をどんどん育てていこうと、そういうメッセージを送りたいと思っています。

野島:ファンとしても楽しみにしております!

◆2024年の展望③ 交通ルールの周知に向けて…

野島:ラストでございます。『栗村修の学べる自転車ニュース 2024年の展望編』、3つ目のテーマは?

栗村:自転車に“青切符”導入か? です。

野島:解説をお願いします。

栗村:これまで自転車の取り締まりは“赤切符”が設定されていましたが、これは切られてしまうと重い罰を受けないといけませんので、なかなか気軽に切れない側面がありました。例えば、自転車の右側通行や逆走、一時停止違反といった軽微なものではなかなか取り締まれなかったんです。

一方、車の取り締まりには赤切符の他に、捕まっても罰金を支払って終わる“青切符”があります。自転車もこれに近い制度を導入しようということで、これもある種のテストですね。まだ導入時期などはわかりませんが、2024年に始まるかもしれないということです。

野島:交通ルール、自転車の安全面についてはこの番組でもよく取り上げていますが、確かに赤切符は厳しすぎて、警察もおいそれと注意できなかった側面があるんですね。

栗村:前回の放送でもお話しましたが、今は“自転車(二輪)戦国時代”というか、自転車の電動化、いわゆる電動アシスト自転車がどんどん進化していますし、電動キックスケーターや電動バイクなど新たなジャンルの乗り物もあります。

そうしたなかで、パッと見タイヤが太い自転車に見えるものの、構造上、法律的には自転車ではなくバイクみたいなジャンルのものがなぜか歩道を走っていたり、かなりカオスな状態になっているんですよね。

今、自動車事故が減ってきている反面、自転車の事故は増えているんです。私も自転車通勤を始めて改めて感じるのは交通ルール。例えば、道路上にナビラインと言われる自転車の走行帯がひかれ、昔より全然走りやすくなっているにも関わらず、逆走する自転車がまだまだいるんです。

普通に考えて、オートバイが逆走するってありえないじゃないですか。でも、自転車だと許されてしまう。あとは、信号を守らない方もたくさんいます。そして、結果的に歩道上での歩行者との接触事故だったり、自転車と車の事故が起こるわけですが、その大半は道路上の基本ルールを守らないことが原因なんです。

野島:安全運転をしていて事故を起こしてしまったのではなく、そもそもルールを守っていないことが多いと。

栗村:そうです。そして、ルールを守らない理由は2つで、1つはそもそも交通ルールを知らないこと。小学生のときにちょっと習った程度で、信号を守ることはみんな知っていると思うんですけど、左側通行すら知らない方、通行可能な歩道もありますが基本的には車道を走ることを知らない方も多いんですよね。だから、まずは交通ルールを知らない方々に周知することをどんどんやらないといけないと思っています。

あとは、交通ルールを知っていても「自転車だから……」「みんな守っていないから……」「みんな逆走しているから大丈夫」とか思っている人も多い。これをどうしたら正常化できるのか、諸外国のように自転車は車両の一部だと理解してもらえるのか? ということに対して警察庁が出した1つの答えが“青切符”なのかもしれません。賛否両論ありますが、青切符を導入することで皆さんに交通ルールを周知していくということだと思います。

野島:ありがとうございます。ということで、今回も2週にわたってたっぷりお話いただきましたが、いかがでしたでしょうか?

栗村:今回はマジメなお話も多かったですが、やはり2024年は変化の年になると思いましたので、ちょっと語らせていただきました。

野島:確かにいろいろと変化を感じる展望でございました。今後は2024年5月に開催する「ツアー・オブ・ジャパン2024」の準備でさらにお忙しくなると思いますが、お体に気をつけて、あまり無理をせず、そして12月30日にはいい誕生日を迎えていただきたいと思います。

栗村:ありがとうございます。「ツアー・オブ・ジャパン」の仕事に就いて10年になるので、やはり大切にしていきたいと思いますし、2024年は5月19日(日)、大阪・堺を皮切りに8ステージ(国内8カ所)で開催いたしますので、ぜひ現地で観戦いただければと思います。

野島:僕も東京ステージにパレード走行で参加予定なので、よろしくお願いします。

栗村:8年契約の3年目、契約を更新したばかりですから、60歳まで頑張りましょう。

野島:複数年契約だったんですね(笑)。ありがとうございます。来年もよろしくお願いします。

野島:よろしくお願いします!

12月31日(日)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、野島裕史サイクルコラム「自転車を組み立てる楽しみ」をお届けします。お楽しみに!

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<番組概要>
番組名:サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国23局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週日曜 朝5:00~5:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトおよびアプリ「AuDee(オーディー)」でご確認ください)
パーソナリティ:野島裕史
番組Webサイト:http://www.jfn.jp/toj
自転車業界で「さまざまなテスト」が開始!?“新しい自転車業界のリーダーズ”栗村修が解説「2024年の注目トピックス」