日本で唯一の公共放送であるNHK。そこでふと「公共放送ということは、NHK職員は公務員なの?」という疑問がわいてきます。またNHKといえば「職員はかなりの高給取り」という噂も。NHKにまつわる疑問や噂についてみていきます。

NHKの受信料…なぜ払わないといけないのか?

2023年もいよいよラスト。どのように年末を過ごすかは人それぞれですが、株式会社PLAN-B/カジナビが999人に行ったアンケート調査によると、年末年始の過ごし方で最も多かったのが「自宅で過ごす」で66%。続いて「帰省(実家・義実家・親戚宅)」22%、「仕事」6%、「旅行(国内/海外)」が4%でした。年末年始、なかなかない長期休みではありますが、自宅や帰省してのんびり過ごす人が多いようです。

そうなると多くの人にとって問題になるのが「年越しは何のテレビ難組にするか」ではないでしょうか。そこでなんだかんだ言っても、多くの人の選択肢になるのが、年末の風物詩というべき「紅白歌合戦」。今年の目玉は? トリは? サプライズでの登場は? 視聴率はどれくらい? など、良い意見も悪い意見も含めて盛り上がること確実です。

そんなNHKですが、日本で唯一の公共放送。そのため「NHKは国が運営しているの?」とか「NHKの職員やアナウンサーは公務員なの?」という疑問も。

そもそもNHKは「日本放送協会」の略称で、総務省所管の特殊法人。つまり民間企業であり、NHKの職員は公務員ではありません。

●NHKは、全国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行うことなどを目的として、放送法の規定により設立された法人です。(中略)

●NHKはいわゆる特殊法人とされていますが、NHKの行う公共放送は、政府の業務を代行しているわけではありませんので、放送法ではNHKがその使命を他者、特に政府から干渉を受けることなく自主的に達成できるよう、基本事項を定めています。(中略)

●NHKが自主性を保っていくためには、財政の自立を必要としますが、それを実現しているのが受信料制度です。(中略)

●NHKが視聴者のみなさまの要望に応えることを最大の指針として放送を行えるのも、受信料制度によって財政面での自主性が保障されているからです。それだけに、NHKには重い責任が生じますから、NHKの業務運営については、予算の承認や経営委員の任命等に関して、国民の代表としての国会を中心とする公共的規制があります。(中略)

出所:NHKウェブサイト『よくある質問集』より

ウェブサイトにもある通り、自主性を保つために財政の自立が必要であり、そこで何かと物議を醸すことも多い「受信料」というキーワードが出てくるわけです。NHKの受信契約は大きく「地上契約」と「衛星契約」の2種類。衛星放送を受信できる環境にあれば、地上デジタル放送しか視聴していなくても、「衛星契約」を結ぶ必要があり、受信機を設置した月の翌々月の末日までに申し込みをする必要があります。

そんな受信料、放送法第64条1項で支払い義務を定めています。

【放送法64条1項】

「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約の条項(認可契約条項)で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない。」

NHK職員の給与事情…民間企業と比較すると

受信料のほか、NHKに関しては「職員がとてつもない高給取り」という噂もよく耳にするでしょう。その根拠となったのが、2011年に行われた国会質疑。NHKの人件費削減について国会議員が追及するなか発せられた

――総人件費を総従業員数で割ると、これには退職金やいろいろな厚生費も入っていますが、年間1777万円。

という部分がひとり歩きし、「NHK職員の給与=1,000万円級」というイメージが定着しました。この国会議員が参考にしたであろう、NHK『収支予算、事業計画及び資金計画に関する資料』の最新版をみていくと、以下のような記述があります。

給与予算(2023年度):1,124億6,035万3,000円

要員数:1万0,268人

平均年齢:41.7歳、平均勤続年数:17.9年、性別構成:男性78.0%、女性22.0%

そこから単純計算すると、1人あたり1,095万2,508円。2011年当時と比較するとだいぶ下がりましたが、この計算方法では、確かに平均給与は1,000万円を超えます。

――やっぱりNHK職員、高給取りじゃん!

と思うかもしれませんが、上記の計算の元になった給与予算には、当時の議員も指摘している通り、退職金の積み立て費用や福利厚生費、そのほか社会保険料や雇用保険などの費用、交通費などの諸経費が含まれています。

NHK『職員の給与等の支給基準』によると、大卒モデル年収は「30歳で530万円、35歳で660万円」(2022年度)。また基本給や諸手当から、一般職員の主任・係長級で年収600万~700万円、管理職となり課長級の全国職員で900万円、地域職員で700万円、部長級の全国職員で1,100万円、地域職員で900万円程度と推測されます。

この給与水準、一般の民間企業と比較するとどうなのでしょうか。関連会社も含めてですが、NHKの職員は1万人を超えるので、大企業勤務の大卒社員と比べてみましょう。厚生労働省令和4年 賃金構造基本統計調査』によると、大企業大卒(男女計/平均年齢41.9歳)の平均給与は月収で44.3万円、年収で769.6万円。また「30代前半」の平均年収は596.6万円、「30代後半」では705.9万円です。これらと比較してみても、NHK職員の給与が特別高いということではないようです。

[参考資料]

PLAN-B/カジナビ『年末年始の過ごし方に関するアンケート』

NHKウェブサイト『よくある質問/NHKとはどういう事業体なのか』

NHK『日本放送協会令和5年度収支予算、事業計画及び資金計画に関する資料』

NHK『職員の給与等の支給の基準』

厚生労働省『令和4年 賃金構造基本統計調査』

(※写真はイメージです/PIXTA)