2023年も実に多くの「先生」たちが、あろうことか教え子にわいせつ行為をはたらき、逮捕や免職に追い込まれた。

文部科学省が12月、公表した「公立学校教職員の人事行政状況調査」によれば、児童生徒らへの性犯罪・性暴力(わいせつ行為)や同僚らへのセクハラで2022年度に処分された公立学校教員は、10年連続で200人台の242人(前年度比26人増)にのぼる。この内、児童生徒、18歳未満の子どもへの性暴力で処分を受けたのは119人だった。また、被害者全体のうち45.1%(109人)が「自校の児童・生徒」となった。

児童生徒への性暴力の詳細は多いものから「性交」(42人)「体に触る」(32人)「盗撮、のぞき」(21人)「接吻(せっぷん)」(13人)「裸体等の撮影」(5人)と並ぶ。

この統計は昨年度(2022年度)のものだが、報じられたケースをもとに今年(2023年)、どのような性暴力が明らかになったのか、その一部を紹介したい。

●教え子に性暴力、2人の小学校教員への判決は(千葉、東京)

今年(2023年)12月には、教え子に対する性暴力で罪に問われた2人の元小学校教員の判決が、それぞれ千葉地裁松戸支部と東京地裁であった。

1つ目が千葉地裁松戸支部(12月4日判決)。13歳未満の女児に対する強制性交等などの罪で起訴された小学校の元男性教員Aに対し、懲役5年6月の実刑判決を言い渡した。自宅などで複数回にわたって女児にわいせつ行為をしたという。

2つ目が東京地裁(12月21日判決)。教え子だった女子生徒への準強姦未遂と児童買春・ポルノ禁止法違反(製造・所持)の罪に問われた東京都内の区立小の元男性教員Bに懲役5年(求刑懲役10年)の実刑判決を言い渡した。女子生徒に性的暴行を加えようとしたほか、教室で女児が着替える様子を盗撮したという。

Bの裁判については、ライターの高橋ユキ氏によるレポートが詳しいが、罪状認否で被告人は「私はAさんをレイプなんてしていません。当時Aさんとは交際をしていました」と否認していた。

151人の女子児童を盗撮した元小学校教員

学校内で教員による盗撮被害も全国で相次いだ。中でも被害児童数が151人と群を抜いて多かったのが、横浜地裁で裁かれた事件だ。

この横浜市立小学校の元教員は、勤務する小学校で女子児童151人を盗撮して動画を保存したほか、担任だった女子児童にわいせつな行為をしたという。横浜地裁は12月6日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)や強制わいせつなどの罪に問われた元教員に対し、懲役3年保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役4年)の判決を言い渡した。

朝日新聞の報道によれば〈弁護側は、被告には小児性愛などの性嗜好異常(パラフィリア)などがあるとして、責任能力が限定される心神耗弱を主張していた〉という。

●「女子生徒らと、いやらしい行為をするようになった」

今年(2023年)逮捕された中には、なんと現役の中学校長もいた。

この校長は、過去に勤務していた中学校の女子生徒らのわいせつ動画29点や写真19点を所持していたとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)の罪で起訴された。12月19日に東京地裁で開かれた初公判では、「間違いありません」と起訴事実を認めた。

高橋ユキ氏のレポートによれば、「女子生徒らと、いやらしい行為をするようになった。それを撮影し、その後見返して自慰行為をしていた」(被告人の調書より)という。校長室に画像を保管していたのは「妻に見つからないところに、と自宅に保管していたカメラを校長室に持ち込み、鍵のかかる引き出しに入れ、鍵をかけて保管していた」からだとか。

呆れるばかりだが、被告人は児童ポルノ禁止法違反での逮捕後、女子生徒への準強姦致傷容疑でも逮捕されている。東京都教育委員会は11月22日付で懲戒免職処分にした。

●娘へのわいせつで懲戒免職となった教員も

報道された懲戒免職の事例をみると、唖然とするばかりだ。

・娘にわいせつ 教諭懲戒免職 地検は不起訴に=佐賀(11月21日読売新聞

読売新聞によれば、この中学校教諭は〈県教委の聞き取りに対し、容疑を認めた上で「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪したという。(中略)一方、佐賀地検は教諭を不起訴とした。「諸般の事情を考慮した」としている。〉

このほか、〈女子生徒を盗撮、県立高教員免職/和歌山県〉〈女児にセクハラ 小学教諭 懲戒免職/富山県〉〈生徒にわいせつ 懲戒免職 公立中の臨時任用教諭/埼玉県〉〈生徒にわいせつ ALT懲戒免職/静岡県〉などがあった。なお、女子児童・生徒に対するものだけでなく、男子が被害にあう事件もある。

先の文科省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」(令和4年度)によれば、性犯罪・性暴力による懲戒処分は合計242件の内、免職は153件、停職41件、減給17件、戒告8件だった。

●「止められなかった」「性的欲求を抑えられなかった」

では「先生」たちは裁判や教育委員会などの調べに、どう弁明しているのか。前述の被害生徒と「交際していた」と主張した元小学校教員がいたように、様々な言い訳と反省の言葉が並ぶ。

「止められなかった」。そんな言い訳をしたのは、愛知県の県立高校の男性教諭(25)だ。名古屋テレビ12月22日付)によれば、男性教諭は勤務する高校の女子生徒とキスやわいせつな行為をしたといい、その理由は「大人として冷静な対応をするべきだったが止められなかった」。この教員は、懲戒免職処分となった。

他にも、「性的欲求を満たすためだった」「被害者のことが好きになり、性的欲求を抑えられなかった」「欲求に歯止めをかけられなかった」「ばれないだろうと思い、自制できなかった」などと、いずれも性欲に負けた教員たちの情けない姿が浮かび上がる。

2022年4月には「教員による児童生徒性暴力防止法」が施行された。同法は子どもへの性暴力行為をおこなった教員への懲戒処分を求め、採用時に過去の子どもに対する性犯罪で教員免許が失効した人を調べるデータベースの活用などを求めている。しかし法改正後も200人を超えるわいせつ教員がいることは重くみるべきだろう。

児童や生徒と性的関係を伴う対等な恋愛関係が成立すると思い込み、あろうことか実際にわいせつ行為に及んでしまう人物の採用をどう防ぎ、また採用後の犯行を断念させることができるのか。性欲を我慢することすらできない呆れた教員たちの存在が、教育現場への不信感を増幅させる一因にもなっている。

「性暴力ではなく、交際だった」わいせつ教員たちの言い分 処分者は10年連続で200人台