●2024年の三が日に飲みたい日本酒セレクト日本酒のプロが薦める“三が日のダラダラ飲み”にぴったりな日本酒とは?

 2023年は、新型コロナのまん延も落ち着き、外出する機会が増えた人も多いでしょう。年末年始は、多くの人が久しぶりの実家へ帰省し、家族団欒を過ごす予定という人も多いハズ。

 そこで今回は、三が日におせちやオードブルを囲みながら、家族や親戚と日本酒を酌み交わすのにぴったりな日本酒をご紹介しましょう。

 選んでくれたのは、全国100種類以上の日本酒が試飲できる日本酒専門店『名酒センター』の取締役を務めるまさに日本酒のプロ・今正光(こん・まさみつ)さんです。

日本酒専門店『名酒センター』の取締役で、全国各地の日本酒に精通する今正光(こん・まさみつ)さん
日本酒専門店『名酒センター』の取締役で、全国各地の日本酒に精通する今正光(こん・まさみつ)さん

 まずは、2023年の日本酒業界の動向を今さんに振り返ってもらいました。

「2023年は、コロナも落ち着いて飲食店にお客さんが戻り、日本酒イベントも多く開催されるなど、業界が活性化した年でした。ただし、コロナ禍の昨年(2022年)は、お酒を造りすぎないようにセーブして仕込んだ蔵元が多かったので、予想を超える出荷数で品薄になった日本酒も多かった。これは、私もお店をやっていて実感しましたね。出したいけどモノがない、そんな時間が長くありました」(今さん)

 今年からは、昨年の状況に鑑みて、「蔵元も仕込み数を増やすでしょう」と予測する今さん。加えて、海外旅行者の急増により、夏ごろから外国のお客さんも増えているそうです。

 今さんが今回セレクトしてくれた日本酒のテーマは、“三が日にコタツでダラダラ飲める日本酒”。というわけで、さっそく逸品をご紹介していきましょう!

純米大吟醸「【九尾】 純米大吟醸 槽搾り無濾過生原酒 二割四分磨 一富士二鷹三茄子」【天鷹酒造】

「九尾 純米大吟醸 槽搾り無濾過生原酒 二割四分磨 一富士二鷹三茄子」アルコール度数16%、精米歩合24% 1杯500円、720ml 2420円(※価格は全て税込)
「【九尾】 純米大吟醸 槽搾り無濾過生原酒 二割四分磨 一富士二鷹三茄子」アルコール度数16%、精米歩合24% 1杯500円、720ml 2420円(※価格は全て税込)

 最初に紹介するのは、『天鷹酒造』の「【九尾】」のお正月限定商品です。“一富士二鷹三茄子”という、初夢の縁起物をそのまま商品名にした日本酒「【九尾】 純米大吟醸 槽搾り無濾過生原酒 二割四分磨 一富士二鷹三茄子」です。

 正月向けに限定で仕込んでいるプレミアムな日本酒で、通年の「【九尾】」に近い華やかで重くない香りに、爽やかでジューシーな甘みと酸味のバランスのよさが特徴。スルスル飲めてしまうやつです。生酒なので、冷蔵庫で冷やして飲むのがおすすめ。

 一富士二鷹……の「富士」にかけてお米が“フジ=24%精米(二割四部磨き)”という、遊び心が入っているのも面白いポイントです。また、自社栽培のお米「栃木県産 あさひの夢」で造られているので、価格も4合瓶で2420円と比較的リーズナブルなのも嬉しいところ。

「食べ合わせとしては、温かい料理が合いますが、お酒自体が美味しいので、単品で味わうのがベスト。あまりおつまみはいらないかもしれません。あえて挙げるなら、お正月料理の鯛の刺し身や塩焼きなど、淡白な白身魚との相性が良いと思います」(今さん)

日本一の超軟水で仕込む生酒「瀧澤 特醸 しぼりたて限定生酒」【信州銘醸】

「瀧澤 特醸 しぼりたて限定生酒」アルコール度数17%、精米歩合59% 1杯300円、720ml 1190円
「瀧澤 特醸 しぼりたて限定生酒」アルコール度数17%、精米歩合59% 1杯300円、720ml 1190円

 こちらは、毎冬に登場する新酒の「特醸しぼりたて限定生酒」です。長野県『信州銘醸』の「瀧澤」という人気のブランドの冬限定バージョンです。新酒らしい、メロンのような若々しく瑞々しい香りと、本醸造の生酒らしい“とろり”とした舌触りが特徴です。アルコール度数が高めなので、ガツンとした喉越しが楽しめます。これを飲むと「冬が来たな!」と思えるお酒です。

 日本一といわれる超軟水(※)の「黒曜の水」を使い仕込まれている『瀧澤』は、荒々しさと柔らかその両方を兼ね備えた日本酒です。720mlで1190円(税込)とコスパも良いので、あまり難しいこと考えずにお風呂上がりなどにキュッと飲むのに最高の日本酒です。

「生酒で、搾りたての荒々しさがあるので、キンキンに冷やして、ギルティな感じで、コタツに入りながらヌクヌクとその温度差を楽しんでもらいたい日本酒です。お酒の荒々しさがあるので、食中酒としても向いています。味の濃い料理、アツアツの寄せ鍋などとの相性が良いです」(今さん)

※軟水には、酵母の餌となるミネラル分が少ない。なので発酵がとても緩やかになり、口当たりや飲み口が柔らかい味になるとされている

懐が深く飲み方が多彩な純米酒「金鳳 純米酒 」【金鳳酒造】

「純米酒 金鳳」アルコール度数15%、精米歩合60% 1杯300円、720ml 1320円、1800ml 2640円
「金鳳 純米酒」アルコール度数15%、精米歩合60% 1杯300円、720ml 1320円、1800ml 2640円

 島根県『金鳳酒造』の「金鳳 純米酒」。1年を通して販売されている商品ですが、今回あえて正月向けとして紹介します。その理由としては、家庭のテーブルに出てくる正月料理のほぼすべてに合う懐の深い味わいがあるから。

 そのままでも美味しく、冷から55度の熱燗まで幅広く対応できるので、テーブルに置いておいて、三が日ダラダラ飲むのにぴったりです。

 味わいの特徴は、穏やかで、甘酸っぱいプラムやあんず系のキュンとする香り。なめらかで柔らかく、甘みと酸味のバランスが秀逸。コクや旨みもあり、クドさもないのも特徴です。

「冷蔵庫の温度だとキリッと、熱燗ではほっこり柔らかい味わいになる日本酒です。どの温度でどの料理と合わせるかは、飲み手の好みで多種多様な選択肢があると思います。大人数でテーブルを囲んだ時に一本あると、色々な飲み方ができるので、重宝する日本酒ですよ」(今さん)

食中酒として優秀なにごり酒「純米吟醸 にごり酒 ハツユキ」【金升酒造】

「純米吟醸 にごり酒 ハツユキ」アルコール度数16%、精米歩合55% 1杯550円、720ml 2200円
「純米吟醸 にごり酒 ハツユキ」アルコール度数16%、精米歩合55% 1杯550円、720ml 2200円

 今回ご紹介する中で唯一のにごり酒が、新潟県『金升酒造』の「純米吟醸 にごり酒 ハツユキ」。名前の通り、初雪をイメージしたお酒で、12月ごろに発売される冬限定の日本酒です。

 にごり酒には粒感のあるタイプと、サラサラしたタイプがありますが、こちらはキメ細かいにごりが特徴。舌触りがシルキーで、喉越しも抜群です。

 舌が“ピロッ”とする少しガス感のあるシュワっとした味で、甘さはにごりにしては控えめ。キレがあって食事にも合わせやすい日本酒なので、にごりが苦手な人でも飲めるハズ。

「にごり酒の中でも多彩な料理に合うのが特徴なので、正月料理にはどれもピタリとハマると思います。あえて挙げるならキンカンですかね(笑)。正直どの料理にも寄り添う日本酒です」(今さん)

縁起も味も抜群の大吟醸「龍勢 黒ラベル 辰年EDITION 純米大吟醸」

「龍勢 黒ラベル 辰年EDITION 純米大吟醸」アルコール度数17%、精米歩合50% 1杯750円、720ml 3465円
「龍勢 黒ラベル 辰年EDITION 純米大吟醸」アルコール度数17%、精米歩合50% 1杯750円、720ml 3465円

 最後に紹介する日本酒は、高級感漂うパッケージが印象的な広島県『藤井酒造』の「龍勢」です。2024年の干支である“辰(龍)”が名前に入っているので「龍勢」は年末年始の商品に気合いを入れている、と今さん。

 普段は「黒ラベル」と呼ばれる純米大吟醸の、辰年限定エディションがこちらです。中身の仕様もラベルもやや違う仕様。ラベルは、地元・竹原出身のアーティスト 舞書家Chad.氏による描き下ろし。龍の生き生きとした力強い息吹が感じられるデザインです。

「龍勢」の高級な純米大吟醸に多いメロンのような香りと、「龍勢」ブランドの代名詞でもある生酛造り(きもとづくり)(※)のヨーグルトを思わせる乳酸菌系の香りが合わさった、果実味あふれる味わい。生酛は重くなりがちなイメージがありますが、こちらはとても軽快です。

「他の生酛(きもと)と違って、冷やしても美味しいタイプの日本酒です。もちろん『龍勢』ブランド全体に言えますが、ぬる燗にしても美味しいです。温度によって色々な顔を見せるタイプの日本酒なので、合わせられる料理も幅広く、おせちなど味の濃いものにも負けない味です。お雑煮と合わせても美味しいと思いますね」(今さん)

(※)生酛造り(きもとづくり)……酒母を仕込む際、乳酸を添加せず天然の乳酸菌から乳酸を得る昔ながらの製法のこと。お米の旨みを最大限に引き出し、深みのある濃酵な味わい、コクを感じられるのが特徴。

2024年の日本酒シーンはどうなる?

最後に2024年の日本酒シーンはどうなるのか、展望を今さんに伺いました。

「長いコロナ禍を経て、消費者の日本酒の飲み方に変化が起きたように思います。昔は、飲み会というと2~3軒のハシゴが当たり前でしたが、最近は1軒目で終わることが多く、日本酒が選ばれにくくなっているのです。飲み会需要は戻って来たものの、日本酒に関してはコロナ禍以前ほどはまだ回復していないのが現状です。

 ただ、これは悪いことばかりではありません。1軒目しか行かないからこそ、良いお酒(一杯)にこだわって飲みたいという人も増加。例えば、自分の好きなお酒を探した結果、日本酒のファンになったという若者も増えているんです。良い意味で日本酒業界の新陳代謝も進んでいて、世界的な需要も巻き込みつつ、良い方向に進んで行っていると思いますよ」(今さん)

まとめ

 というわけで、2024年の三が日にコタツに入って、ダラダラ飲みたい日本酒をご紹介してきましたが、「これだ!」と思える一本が見つかったでしょうか? 今回ご紹介した日本酒も含め、『名酒センター』では、全国から集めた銘酒の試飲・販売はもちろん、通販(※一部商品を覗く)も行っています。特別な日に、普段とはひと味違う一杯が飲みたい人はぜひチェックしてみてください。

●SHOP INFO

店名:名酒センター 御茶ノ水店

住:東京都文京区湯島1-2-12 ライオンズプラザお茶の水1F
TEL:03-5207-2420
営:12:00~20:30、土曜、祝日12:00~22:00(フード、ドリンク閉店30分前LO)
休:月曜(他不定休あり)
https://nihonshu.com/

食楽web