最年長左腕の和田も育成選手を取り巻く環境に物申した(C)Getty Images

 常勝軍団ソフトバンクに何が起きているのか。2011年~20年の間は日本一に7度輝くなど無類の強さを誇ったチームが21年は4位、22年は2位、23年もシーズン3位で終了。CSファーストステージでは「幕張の奇跡」と呼ばれるロッテの粘りに屈し、ファイナルに駒を進めることはできず。藤本博史監督に替わって、小久保裕紀監督が来季から指揮を執ることになった。

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 代わってパ・リーグのフロントランナーを走っているのはオリックスだ。近年はリーグ3連覇を果たし、レギュラーシーズンは2位に14・5ゲーム差をつけるぶっちぎりで優勝を飾った。

 ソフトバンクの昨オフは異次元補強ともいわれる大型補強も注目を集めた。日ハムからFAとなった近藤健介ロッテの救援投手ロベルト・オスナ、阪神の先発ローテーションの一角を務めたジョー・ガンケル、DeNAからFAとなった嶺井博希メジャー帰りの有原航介と約80億円ともいわれる大型補強を敢行したが、優勝に手が届かなかった。

 そして今オフも、巨人からアダム・ウォーカーをトレードで獲得し、西武からFAの山川穂高を獲得した。一方で多くの選手戦力外通告を行ったことも話題を呼んだ。中には28歳の上林誠知ドラフト1位投手の高橋純平なども含まれていたことで3、4軍までの育成システムを持ちながら、若手が育たない環境が最近ではクローズアップされることも増えてきた。

 一方、オリックスでは2023シーズン、プロ3年目にして彗星のごとく現れた山下舜平大が大きく注目を集めた。伸びのあるフォームから150キロ超の直球、変化球とのコンビネーションも冴え、シーズン9勝と快進撃を続けた。ほかにもシーズン途中から存在感を示したのが6年目の東晃平だ。昨シーズン途中に支配下を勝ち取り、日本シリーズにも先発。強気に攻める投球スタイルもはまった。また野手ではベネズエラ出身のレアンドロ・セディーニョも右の大砲として、シーズン途中に支配下を勝ち取ると、ポストシーズンでも活躍。勝負強い打撃でチームに勝利をもたらした。

 決して育成選手を多く抱えているわけではないが、これぞという選手に目をつけ、じっくり育成、確実に芽を出させるというシステムが機能している。

 背景には選手ファーストで知られる中嶋聡監督の起用法、また日本ハム時代に、ダルビッシュ有大谷翔平らのフィジカル面も担当した中垣征一郎巡回ヘッドコーチの存在も大きいとされる。現場、スカウト、フロントが一体となってチームの目指す方向性を確認しながら進んでいることで「宝の山」ともいわれる、優秀な人材を確保、着実に育成につなげている。

 一方、ソフトバンクではこのオフに入って、ベテラン、中堅選手から育成システムをめぐり選手から苦言の声も聞かれた。覚悟を感じさせたのは投手陣の最年長左腕、和田毅の発言だった。「厳しくなるかもしれないですが、育成選手はプロ野球選手ではないと思う」として、一軍とファームではユニホームを変えることを提言。和田だけではなく育成から支配下を勝ち取った牧原大成外野手契約更改の場で、育成選手へゲキを飛ばす場面もあった。

 背景にあるのはチームへの危機感だろう。「育成のソフトバンク」として、千賀滉大甲斐拓也など主力まで這い上がった選手がいる一方で近年は4軍制まで有しながら、一軍に定着できるほどの選手は出てきていない。主力選手からは、育成選手に向けて、必死さが欲しいという声も上がるなど、今や「育成」はオリックスが十八番となっている現状がある。

 このまま手をこまねいているわけにはいかない。今オフは西武から右の大砲、山川穂高獲得と大きな動きもあったが、補強と育成の両輪があるからこそチームも前に進める。果たして来季オリックスを止めるのはどのチームとなるのか、ソフトバンクからもイキのいい投打の若手が出てくることを願いたい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

なぜソフトバンクは勝てなくなったのか 3連覇オリックスとの「育成力」の差とは