1月1日は初代「クラウン」が初出荷された日です。クラウンといえば「王冠」のエンブレムが目印ですが、なぜトヨタマークではなく、一貫してこのエンブレムなのでしょうか。

王冠は特別な国産車の証?

今から69年前の1月1日は、トヨタ自動車工業(現:トヨタ自動車)日本初の純国産設計車である初代「トヨペット・クラウン」が同社の挙母工場(現在の本社工場)にて、関係者に祝福されながら初出荷された日でもあります。

クラウンといえば、フロントの王冠のエンブレムが目印でもありますが、他車種のようにトヨタのメーカーロゴではなく、古くから一貫してこのエンブレムが使用されているのはなぜでしょうか。

そもそもなぜ「クラウン」という名前になったのか。トヨタが発行した『創造限りなく トヨタ自動車50年史』によると、「自家用乗用車の王座を確保するとの願いをこめてクラウンと名付けた」とあります。

命名者はトヨタの実質的な創業者である豊田喜一郎氏で、トヨタが単独で国産乗用車の生産に動き出す段階で「クラウン」と命名することを決めていたようです。

車名が「クラウン」ということで王冠のエンブレムとなったわけですが、1955年販売開始の初代「クラウン」ではフロントグリルにエンブレムが付けられていませんでした。1960年のマイナーチェンジでフロントにつけられるようになって以降、最新モデルまでこの伝統が続きます。

トヨタには、いくつかメーカーロゴではない独自エンブレムの車種がありますが、クラウンもそのひとつです。トヨタによると異なるエンブレムのデザインを採用している理由は「モデルごとにコンセプトや歴史が異なるため」とのことで、グローバルに販売するモデルに関してはトヨタエンブレムを採用する傾向にあります。

いまでこそクラウンは中国でも生産され、グローバル展開も始まりましたが、長年にわたり一貫して日本国内で、設計、生産され、日本国内で販売されてきた車種です。そのため、トヨタエンブレムをつけず、特別なクルマとしての地位を維持しています。なお、現在のトヨタエンブレムが登場したのは1989年からで、クラウンのエンブレムの方がはるかに長い歴史をもっています。

2023年11月13日に発売開始した「クラウン(セダン)」(画像:トヨタ)。