強い地震が発生すると、エレベーターは安全上の理由で停止します。ただ救助されるまで長時間、閉じ込められる場合も。なぜすぐに復旧しないのでしょうか。

地震時管制運転装置が作動する

2024年の元日も、石川県で大きな地震が発生するなど、日本各地で有感地震が頻発しています。強い地震になればなるほど心配されるもののひとつが、エレベーターでの閉じ込めではないでしょうか。

日立ビルシステムによると、およそ震度5弱以上の揺れを感知した場合に地震時管制運転装置が作動するといいます。これは地震感知器が揺れを感知し、エレベーターを最寄り階に自動停止させる仕組みです。なお同社は、「万が一エレベーターに閉じ込められた場合は、操作盤の非常ボタンを押して外部に通報し、救助をお待ちください」としています。

とはいえ“長時間の閉じ込め”はしばしば話題になります。例えば2021年2月に発生した福島県沖を震源とする地震の際は、通報を受けてから救出まで、最大5時間20分の閉じ込めがありました。救出時間の平均は約1時間20分だったそうですが、なぜこれほどにまで時間を要するのでしょうか。その理由を、一般社団法人 日本エレベーター協会は次のように説明します。

「安全確保を目的としてエレベーターを停止させますが、エレベーターの停止台数に対して保守会社などの復旧要員が必要であり、その確保に加えどのように巡回させるかで、復旧時間に影響を及ぼします。保守会社は広域災害に対応し、被害状況を把握するほか、被災地外から支援要員も派遣し、全力を挙げ復旧に当たっております」

強い地震が発生すれば、その揺れを感知した地域の全エレベーターが停止する可能性があるわけで、特にビルが林立する都市部なら必然的に、対応すべきエレベーターの数も増えてくるのです。

最近は仮復旧するエレベーターも!?

万が一閉じ込められた場合は無理に脱出しようとせず、非常ボタンを操作し外部へ通報のうえ救助を待つほかありません。長時間になればトイレなどの心配も出てきますが、最近は非常用設備として、閉じ込められた場合の必需品が備えられているケースもあります。

主なものは水、乾パン、トイレシート、目隠しシート、ホイッスルなど。旧式のエレベーターでは、コーナーに置かれた椅子が収納ボックスを兼ねていることもあります。防災グッズメーカーによっては、いたずら防止の警報機能が付いたタイプもあるそう。

なお前出の日本エレベーター協会は、長時間の閉じ込めを防止する観点から、「最近のトレンドとして、一定数の震度以下においてエレベーター自らが診断運転を行い、異常がなければ利用可能な状態に自動で仮復旧するシステムもございます」としています。

エレベーター。写真はイメージ(2021年、大藤碩哉撮影)。