「体力もつんだろうか」そんな風に私が心配していたのは元旦の日曜日、クリスマスのparon(パロン/リーガの停止期間)がいよいよ終わり、翌日にスタートする19節を目前にしてのことでした。いやあ、クリスマスイブ前日に順延されていた4節のアトレティコvsセビージャ戦の後、1部で最後まで稼働していた2チームもバケーション入り。そのミッドウィークに18節を済ませ、すでに休んでいた18チームに加わったため、その間は選手たちの休暇先でのリラックスした写真を見るぐらいで、私もノンビリしていたんですけどね。

それが年初の予定を確かめてみようとカレンダーを見てみれば、ええ、2日のマドリッドの弟分ダービーを皮切りに、水曜には兄貴分のレアル・マドリーアトレティコもそれぞれマジョルカ、ジローナと対戦。週末の土曜にはコパ・デル・レイ32強対決となり、いえまあ、エスパニョール、ウエスカといった2部チームと戦わないといけないヘタフェとラージョはちょっと大変かもしれませんが、アトレティコはルーゴ(RFEF1部/実質3部)、マドリーアランディーナ(RFEF2部/実質4部)とまだ、カテゴリー差が大きいんですけどね。その先は昨季、好成績を収めたチームの払う代償というか、1月の第2週にはスペインスーパーカップ開催により、バルサ(リーガ優勝)、マドリー(コパ優勝、リーガ2位)、オサスナ(コパ準優勝)、アトレティコ(マドリーのおかげでリーガ3位での参加)の4チームがサウジアラビアに向かうことに。

この大会で10日(水)の準決勝ダービーに勝った方は、14日(日)にバルサvsオサスナ戦の勝者と決勝を戦うまで、アラブの地に拘束されてしまうことになるんですが、ええ、この週末にあるリーガ20節は4チーム共、1月最後のミッドウィークにズラされていますからね。要はコパで順調に勝ち上がっていく限りという縛りはあるものの、スペインスーパーカップのファイナリストになると、マドリーなら2月の第3週のCL16強対決ライプツィヒ戦1stレグが終わるまでの7週間、その翌週にCLインテル戦となるアトレティコなら、6週間ぶっ続けで週2試合営業をすることに。

それで何が気掛かりかというと、いえ、11月の各国代表戦週間後、同様に5週間ほど、週2ペースが続いた上、その間、7、8人の負傷者を抱えながら、アンチェロッティ監督は愚痴の一つもこぼさず。最後はジローナと同じ勝ち点ながら、リーガ1位で年内を終えたマドリーは今回も平気だと思うんですけどね。12月に入ってからは毎回、シメオネ監督から「ウチは何日間で何試合あって、休む時間も練習する時間もない」的なコメントを聞かされていた身からすると、たかだか5日間ぐらいのプチバケーションを取ったぐらいで、この更に長いハードスケジュールに耐えられるのかと不安になってしまうんですが…今はとりあえず、各チームの近況をお話ししていくことにすると。

マドリッドの1部4チームは、昨年を8試合白星なし(4分け4敗)とネガティブな流れで終わったラージョが27日の水曜に先駆け練習再開となったのを除いて、ヘタフェ、マドリーアトレティコは揃って、金曜からグラウンドに戻ったんですが、兄貴分たちは翌土曜には普段、練習を見学できないファンのために公開セッションを実施。それがどちらも盛況で、ええ、ソシオ(協賛会員)のみを対象に入場券を配ったマドリーなど、配布開始となった火曜にはバルデベバス(バラハス空港の近く)にあるエスタディオ・ディ・ステファノ(RMカスティージャ)のチケット窓口が終日、長蛇の行列となり、批判されていたりもしたんですけどね。

何せ、17日に年内ホーム最終戦のビジャレアル戦を済ませた後、サンティアゴ・ベルナベウは再び、集中工事態勢に突入。人が近づける状態ではなく、当然、公開セッションもディ・ステファノで行われたため、車がないと行くのが大変だったんですが、気温1℃という極寒の午前11時には5700人ものファンがスタンドを埋めることに。敷地内にある合宿所から、チームバスに乗ってスタジアムまで移動し、紺と黄色の新しい練習用ユニで現れたメンバーには昨年中、負傷で休んでいたビニシウス、カルバハル、ギュレルも合流。年内最終戦のアラベス戦終盤に筋肉の疲労で交代したロドリゴも一緒となって、この4人は他の選手たちがpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)に興じている間、エクストラなフィジカルメニューをこなす姿を見られることに。

セッション自体はファンの喜ぶ、1/2サイズのピッチでのミニゲームやシュート練習中心で、いやあ、1時間半も続いていたのにはちょっと驚かされたんですけどね。もっと凄かったのは練習終了後のファンサービスで、まるで月1でラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で公開練習をするスペイン代表のように、選手たちがスタンドに近づいてサインやセルフィーに応じていたんですが、その時間たるや、軽く30分をオーバー。モドリッチなど、レアル・マドリーTVのインタビューに応えて、「チームメートと1年に1度だけでなく、もっと公開練習があったらいいと話したんだ。Tanto ellos como nosotros podamos disfrutar/アントー・エジョス・コモ・ノソトロス・ポダモス・ディスフルタール(彼らもボクたちも楽しむことができるから)」と言っていたんですが、思い起こしてみれば、ここ10年ぐらいで、どこのチームも非公開練習が定番になってしましたからね。

もちろん、チームの戦術や内輪揉めなどを隠したいコーチングスタッフ、ファン対応の仕事を減らしたいクラブ職員といったように色々、思惑があってのことでしょうが、選手たちだって、うーん、ベリンガムなど、マドリー1年目ですし、20才と若いだけにディ・ステファノのスタンド全部を回っても苦にはならなかったかもしれませんけどね。やっぱりこれが度々あるとなると、話は別かと。ちなみにこの日はアンチェロッティ監督もファンサービスに加わっていて、何せ、彼はバケーション明けの金曜にクラブとの契約を2026年まで延長したばかり。

これで一時は2023年年末じゃないかと予想されていた新装サンティアゴ・ベルナベウのお披露目イベントがこの夏以降にズレ込んでも、「この契約延長で新しいベルナベウで最初の試合が行われる時、estaré en el banquillo. Esto es bueno para mí/エスタレ・エン・エル・バンキージョ。エストー・エス・ブエノ・パラ・ミー(ベンチにいられるだろう。これは私にとってもいいことだ)」と当人も言っていたように、マドリーも彼のブラジル代表監督就任の目をつむことができましたしね。今季後半はもう、雑音に悩まされることなく、タイトル獲得に邁進していけばいいだけになったのは喜ばしいんですが、水曜午後7時15分(日本時間翌午前3時15分)からのマジョルカ戦では今年最初の難問にぶつかることに。

というのも年内店仕舞いのアラベス戦で退場したナチョが出場停止になるため、ミリトンを夏から、アラバも先日、ヒザの靭帯断裂で欠いているマドリーには本職CBがリュディガーしかいないんですよ。とりあえず、ビトリア(スペイン北部、アラベスのホームタウン)ではボランチのチュアメニが入り、事なきを得たものの、最初に言ったように、マドリーは1月2月と延々中2日ベースで活動しないといけませんからね。途中、リュディガーやチュアメニにも何が起きるかわかりませんし、とにかくベンチにトップチームのCBがいないという事態は避けた方がいいかと思いますが、まだ冬の移籍市場で補強するかどうかは決まっていないのだとか。

逆にいいニュースは大晦日の練習でもまだ別メニューだったメンディはともかく、11月のフランス代表参加中に負傷したカマビンガがチーム練習の一部に加わっていたことで、いえまあ、彼の復帰目標はスペインスーパーカップ準決勝みたいですけどね。ブラジル代表から、ケガをしての帰還となったビニシウスはもう回復ししているようで、当人も「Yo estoy bien, muy bien. Ahora solo queda que el míster elija/ジョーエストイ・ビエン、ムイ・ビエン。アホラ・ソロ・ケダ・ケ・エル・ミステル・エリハ(自分の状態はいい、とてもいいよ。あとは監督が選んでくれるだけさ)」と言っていましたからね。2024年初試合となるサンティアゴ・ベルナベウではいよいよ、その勇姿が見られそうですが、え?それでビニシウスの不在中、大活躍だったブライムをスタメンから落とすのかって?

まあ、それは持てる者の悩みで、アンチェロッティ監督の腹次第ですからね。そこは見てのお楽しみということで、その一方では未だにエースのムリキがコソボ代表からケガして帰還。それ以来、出ていないにも関わらず、オサスナに3-2と打ち勝って、年内最終戦を飾ったマジョルカの攻撃陣とルーカス・バスケスとカルバハルの両者がまだ完調ではなく、更に例の急造CBコンビに頼ることになるマドリーの守備陣の対決が注目されますが…おそらく今節には、マドリーの首位は揺るがないかと。

というのは私の希望的観測も混じっていて、そう、同じ水曜の次の時間帯、午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)から、モンテリビを訪れて、お隣さんと勝ち点で並んでいるジローナと対戦するのがアトレティコだから。いえ、確かに今季の彼らはアウェイ10試合で3勝1分け4敗と負け越していて、信用できるかは微妙なんですけどね。ただ、そんな選手たちを鼓舞しようと、この年末はクラブがメトロポリターノでの公開練習をお隣さんにぶつけて、同じ土曜に設定。こちらは無料で入れるソシオだけでなく、12ユーロ(約2000円)で一般のファンにもチケットを売ったところ、当日には1万3000人がスアジアムに駆けつけ、応援団など、試合では禁じられている発煙筒をガンガン焚いたりと大張り切りだったんですよ。

こちらは1時間と短いセッションで、終わった後のファンサービスも何せ、メトロポリターノのピッチとスタンドの距離はディ・ステファノほど、近くはありませんからね。選手たちもボールを蹴り入れるぐらいで、だってえ、サウールやアスピリクエタ、メンフィス・デパイなんて、この寒いのに練習着のトップをファンにあげて、上半身裸ロッカールームに戻っているんですよ。それで風邪でも引かれたら、たまったもんじゃないですが、久々に負傷でリハビリしていたバリオスピッチに出て来たのは嬉しかったかと。いえ、まだ彼は個人メニューで大したことはしていなかったんですけどね。どうやら、ジローナ戦でシメオネ監督はこれまでずっと、CBで起用していたビッツェルをボランチに上げ、コケをサイドに回す布陣を画策中。34才のベルギー人選手を2つのポジションで使い倒すのもどうかと思われるため、この地獄の連戦中、バリオスにはなるたけ早く復帰してもらえると助かるかと。

それ以外では年内最終戦だったセビージャ戦でソユンチュがレッドカードで退場した後、とうとうヒザの靭帯断裂を乗り越え、再デビューとなったレイニウドがすでにアフリカ・ネーションズカップのモザンビーク代表入り。クリスマス休暇明けから、もう行ってしまっていたりするんですが、まあ、彼の場合、今季はここまでいなくても何とかなっていましたからね。この機会に代表で実戦感覚を取り戻して、できれば決勝トーナメントに入る前の1月中に戻って来られたら、シメオネ監督も助かるのでは?それ以外にはアキレス腱断裂で長期リハビリ中のレマルを除き、負傷者のいないアトレティコなんですが、何より大事なのはドブビク、ストゥアーニら、ゴールづいているFW陣を擁するジローナ戦は、ヒメネス、エルモーソ、アスピリクエタら3CBを中心に、チーム全員がパッチリ目を覚まして、キックオフを迎えることでしょうか。

そして火曜午後5時(日本時間翌午前1時)から、今年のリーガ戦の先陣を切る弟分ダービーでは、ラージョがアフリカ・ネーションズカップの被害を大きく受けていて、中盤のパテ・シス(セネガル)、そして頼りになる反撃の起爆剤、ベベ(カーボベルデ)が14日から開催される大会に参加することに。とりあえず、この年明け初戦だけは合宿入りを遅らせてもらい、プレーできるみたいなんですが、そういう点では、ジェネのいるトーゴが本大会に行けなかったヘタフェは得している?

それだけでなく、ここ4試合は得点さえ途絶えているフランシスコ監督のチームに対して、ヘタフェは去年の最終戦で兄貴分相手にメトロポリターノで3-3の引き分けをもぎ取って、ボルハ・マジョラルやグリーンウッドらを筆頭に大きく自信をつけていますからね。昨季終盤から、ずっとヒザの靭帯断裂のリハビリを続けていたエネス・ウナルもすでにプレーできる状態ですし、この試合ではコリセウムの閉鎖処分を消化することを決めたため、まさにその代替会場となったメトロポリターノでの2連戦となるのも吉。となれば、8位のボルダラス監督のチームだかに、勝ち点5と迫ったコンフェレンスリーグ出場圏6位にもっと近づくことも可能かと思いますが…。

「Solo pensamos en el partido inmediato/ソロ・ペンサモス・エン・エル・パルティードー・インメデアト(すぐ前の試合だけを考えている)。長いタームの目標を考えるのは間違いだ。ウチはまだ何もやっておらず、今季の折り返しも迎えていないからね」とはボルダラス監督ですが、確かにこのお正月節でシーズン前半戦がやっと終わりますからね。コパはともかく、ヨーロッパの大会が再開する2月には兄貴分たちと違い、ずっと楽な日程になる弟分チームたちにはこの隙を逃さず、早めに1部残留を確定してもらいたいものです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。