詳細画像はこちら

静岡県河津町で起きた1歳児死亡事故とは

事故が起きたのは12月24日午後4時頃。場所は静岡県賀茂郡河津町見方2316-5先の路上(国道135号線)で、軽乗用車と普通乗用車の正面衝突事故であった。

【画像】「チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」 全7枚

帰省中の39歳無職の女性が運転していた軽自動車が対向車線にはみ出して普通乗用車と衝突。軽乗用車の助手席に座る5歳女児は腹部に重傷を負い、後席の1歳男児は頭を強く打って病院に搬送されたが死亡が確認されている。対向車の普通乗用車には50代の男女2名が乗っていたが軽傷だった。

詳細画像はこちら
チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

この事故に関しては多くのメディアが報道しているが、ニュースのタイトルに多く使われているのが「チャイルドシート使用の男児死亡」/「後部座席のチャイルドシートに座る1歳児死亡」など、チャイルドシートを使用していたことが全面にアピールされている「チャイルドシートは後部座席に固定され男の子はベルトをしていた」という報道もある。

しかし、男児は大変残念なことに「頭を強く打って」搬送先の病院で死亡が確認されている。このニュースを見た人の中には「チャイルドシートを使っていたのに亡くなった? チャイルドシートに欠陥があるのではないか!」と考える人もいるかもしれない。

結論から言うと、ECE R44/04またはR129の安全基準を満たして子どもの体格に合っているチャイルドシートを「正しく」使用しており、さらには事故の被害者である大人3人が全員軽傷という状況であればチャイルドシートの中の1歳児が頭を強く打って亡くなることは可能性としては非常に低い。

車外に飛び出したのではないが…

チャイルドシートに座る1歳児が「頭を強く打つ」状況とはどういうことなのだろうか?

可能性としては子どもの体を拘束するハーネス(チャイルドシート本体についているベルト)が緩くてスピンした衝撃でハーネスの間からすり抜けて、床に転げ落ちて頭を打ったことがまず推測される。

チャイルドシートメーカーの技術者いわく

詳細画像はこちら
チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

「死亡原因といわれている頭部への強い衝撃については、チャイルドシートの向きが関係しているように思いますね。運転していた母親と相手側の大人2人が軽傷ですから、大人にとっては耐えられるレベルの衝撃だったのかなと考えられます。

1歳のお子様に関しては体格に合わない早過ぎる前向き乗車が原因で、頭部が強い力で前方に投げ出されたことが亡くなられた原因ではないかと考えられます。助手席の5歳のお子様が重傷との事ですが、恐らくジュニアシートで適切な位置に腰ベルトが掛からず、お腹に食い込んだことが理由ではないでしょうか?」

なお、警察の発表では軽乗用車の車種、チャイルドシートのタイプや、前向きか後ろ向きかなどは一切明らかにされてない。また「1歳男児」としか書かれておらず、満1歳になったばかりなのか、もうすぐ2歳なのかも不明。

1年違えば体格も大きく違ってくる。R129アイサイズ基準のチャイルドシートであれば、生後15か月と身長76cmを超えるまでは後ろ向き使用がマストになる。報道では「車外に飛び出した人はいなかった」とあるので、頭を打った先はクルマの中になるのだろう。

静岡県警と下田消防署に聞いてみた

静岡県警と男児を搬送した下田消防署に、後部座席に取り付けられていたチャイルドシートの様子を聞いてみることにした。

まずは静岡県警本部広報担当者とのやりとりから。

詳細画像はこちら
チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

問:1歳男児のチャイルドシートは正しく使われていたのでしょうか?

答:チャイルドシートが「車内にあった」ということだけが今はわかっています。それが適切に使われていたかどうか、前向きか後ろ向きかの方向もわかりません。使用されていたかどうかも現時点では確実なところはわかりません。

問:助手席の5歳女児はジュニアシートを使っていましたか? チャイルドシート使用義務年齢ですが…

答:そちらの件も今の段階では捜査中でもあり公表できません。

何ともツレない回答である。事故の状況、チャイルドシートの使用状況を知ることで守れる命もあると思うのだが…

一方、下田消防署にも聞いてみたが、こちらもあまり大した回答は得られなかった。
「私たち救急隊が現場に到着した時には、1歳男児は通行人によって外に出されており、心臓マッサージ(胸骨圧迫)が行われているところでした。チャイルドシートは使用されていたようですがはっきりとしたことは記録に残っていません」

ここまで読んでいただいた方には、チャイルドシートはただ使っていればいい、というものでもないことがお分かりいただけたと思う。

チャイルドシートで子どもの命を守るために大切なこと

では命を守るために、チャイルドシートをどのように使って、子どもに対してはどのように接していくのがいいのだろうか。

かつて、チャイルドシートの固定がシートベルトによるものが主流だった時代は、いかにチャイルドシートを座席にしっかり固定するか、が重要だった。

詳細画像はこちら
チャイルドシートの1歳児なぜ死亡」

大人がチャイルドシートの上に乗り全体重をかけて座席に押し込んでシートベルトで固定するなど、大変な労力とコツが必要であった。しかし、近年はISO-FIXが主流となり、取り付けはずいぶんと楽になった。クルマに装備されるISO-FIX金具も全車標準装備(義務付け)になって10年以上が経過し、一部スポーツカーなどを除いてガチャっとはめ込むだけで確実に固定ができるようになった。

加えてISO-FIX固定のチャイルドシートも現在は2万円以下の安価なものが増えており、選択肢も多い。ひと昔前からするとISO-FIX固定の製品を購入する場合は、ぐっとハードルが低くなっている。しかしその一方で相変わらず危険な使い方をしている保護者は少なくない。

そこで、子どもを確実に100%の力でしっかり守るために注意すべき点を挙げてみた。

チャイルドシートはできるだけ後ろ向きで使うことが安全。安全性重視の製品の中には4~5歳まで後ろ向きで使えるタイプもある。
・最新の安全基準ECE R129アイサイズでは生後15か月&身長76cmまでは絶対に後ろ向きで使用。極力、長期間後ろ向きが安全。
・ハーネスは指1~2本入る程度にキツめに締める。ここがゆるいと急ブレーキ程度の衝撃でもハーネスの間から子どもが転げ落ちる危険がある。
・車内に傘や硬い物体(ポータブルスピーカーやガラス瓶に入った芳香剤など)を置かない。事故の衝撃でこれらの物体が子どもの頭めがけて飛んで来るなど凶器になることもある。
・子どもをチャイルドシートに乗せるときは「嫌がるんじゃないか?」/「泣き出すんじゃないか?」というネガティブな気持ちを完全に排除して笑顔で座らせる。子どもに対して「窮屈だよね。ごめんね、ごめんね」などとは絶対に言わないこと。
・赤ちゃんがチャイルドシートを嫌がる理由の一つにリクライニングの角度がある。6か月過ぎると寝かせること自体を嫌がる子どもが増えてくる。
ジュニアシートはシートベルトが安全に使える身長150cmくらいまで使用する。頭部や肩回りを守る背もたれのついたフルバケットタイプがベスト。

年末から年始にかけては子どもを連れてのクルマ移動が多くなる時期である。どうか大切なわが子を、いつ起こるかわからない事故から守ってあげてほしい。


帰省中の貴方 出発前に是非再確認を チャイルドシート使用でも死傷する間違った使い方とは