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 自宅や企業先に荷物を届けてくれる配達業者は数多く存在し、それぞれに賃金や労働条件が異なる。

 悲しいことに、アメリカのAmazonのデリバリー・サービス・パートナー(DSP)のドライバーは、労働に見合った給与と福利厚生が保障されていないという。

 一方、ユナイテッドパーセル・サービス(UPS)は、ドライバーに対し、業界をリードする給与と福利厚生を確保したことが発表された。

 それを知ったAmazonのDPSのドライバーたちは、現在UPSへの転職を考えているようだ。

【画像】 UPSが新たな給与と福利厚生を公開

 今年8月、UPSは米国とカナダ労働組合「チームスターズユニオン」と5年契約で合意し、労働運動における新たな基準を打ち立てた。

 UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)は、フェデックス・エクスプレスやDHLと並ぶ国際貨物航空会社でもあり、世界200か国以上の国と地域で一日あたり1400万個以上の荷物を扱っている。

 UPSとチームスターズユニオンの取り決めにより、サプライ・チェーン企業の34万人の荷物取扱者と配送ドライバー全員が昇給を受け、フルタイム・ドライバーの1人当たりの年間手当は17万ドル(給与と福利厚生などすべてを合わせて)に達すると予想される。

 UPSのCEO(最高経営責任者)であるキャロル・トム氏は当時の記者会見で次のように述べた。

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この合意は、UPSのフルタイムとパートタイムの従業員に対し、業界をリードする給与と福利厚生で報い続けると同時に、競争力を維持し、顧客にサービスを提供し、事業を好調に保つために必要な柔軟性を保持するものです。

 また、チームスターズショーンオブライエン会長は、このように話した。

私たちは、組合員が強力な賃金を支払い、労働に報い、一点の譲歩も必要としない協約を勝ち取るために、昼夜を分かたず戦いゲームを変えてきました。

この協約は労働運動の新たな基準を打ち立て、すべての労働者の水準を引き上げるものです。
配送会社の賃金格差問題。UPSの方が高いため転職を考えるAmazon配達車

photo by iStock

転職を考えるアマゾンDSPドライバー

 UPSのドライバーにとっては素晴らしいニュースだったが、アーカンソー州に拠点を置く2人のアマゾン・デリバリー・サービス・パートナー(DSP)のドライバーは今、自分たちがこのままAmazonで配達を続けるべきかどうか迷っている。

 DSPとは、アマゾンが展開するプログラムの一つだ。

 このプログラムでは、個人や企業がアマゾンの物流パートナーとして参加しアマゾンの配送業務を担うことができる。

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 DSP参加者は、アマゾンの注文を顧客に配達する責任を持つが、アマゾンの直接の従業員ではなく、独立した事業者として運営されている。

 このシステムを通じて、アマゾンは配送業務の一部を外部のパートナー企業に委託し、物流ネットワークの効率化と拡大を図っている。

 DSP参加者はアマゾンから配送車両や配送に関する技術サポート、トレーニングなどを受けることができ、自分たちの配送ビジネスを運営していくというわけだ。

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image credit:Unsplash

 残念なことに、このDSPのドライバーは労働組合、チームスターズユニオンの協定に含まれていないという。

 そのため、DSPのパートナー・プログラムで働くドライバー2人は、現在業界をリードする給与と福利厚生を確保したUPSへの転職を考えているそうだ。

 ジョーダン・タルモンさん(24歳)は、5月からDSPドライバーとして働いているが、その職を去るかもしれないと語った。

以前の時給は17ドル(約2400円)でしたが、UPSとチームスター・ユニオンの取り決めがあった頃に、1ドル引き上げられて18ドル(約2500円)になりましたけどね。

UPSに比べたら貧相なものですよ。

 また、同じくアマゾンDSPドライバーであるハンター・ディーヴァーさんは、時給16.50ドル(約2300円)からスタートし、現在は時給18.50ドル(約2600円)だという。

 ディーヴァーさんは「アマゾンは質の高いドライバーを維持したいかどうかを決めなければならない」と話している。

 アマゾンの広報担当者は、給与小切手を振り分けるのはアマゾンではなくDSPだと述べている。

ドライバーの給与はDSPによって決定され、各DSPとの契約によって設定された最低給与基準に従っています。

最低賃金やその他の契約要件が遵守されているか、DSPを積極的に監査しています。

SNSでもジョークのネタに

 Redditのスレッドでは、「AmazonDSPDrivers」と題された悲しいジョークがシェアされた。

今日の午後、渋滞に巻き込まれている時に、このUPSドライバーの隣に車を止めたんだ。

自分は挨拶したんだけど、UPSのドライバーからは「貧乏なやつとは口利かないんだ」って言われたよ。

 同じ配達業者でも待遇が異なれば、なにかと比較の対象となる。

 DSPのドライバーが満足した賃金と福利厚生を得られる日がくるのかどうかは、今のところ未定だ。

References:UPS drivers' pay packet revealed and it's got Amazon drivers wanting to quit their jobs/ written by Scarlet / edited by parumo

追記(2024/01/02)記事の一部を訂正して再送します。

 
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