アメリカ本国で興収ランキング、初登場No.1を飾った話題作『アクアマン/失われた王国』(2024年1月12日公開)。その魅力はなんといっても体感型映画ということ。前作『アクアマン』(18)の続きなので、今作に必要な情報だけ振り返ってみよう。海と陸のハイブリッドであるアクアマンことアーサー(ジェイソン・モモア)がその力に目覚め、権力を暴走させていた彼の異父弟オーム(パトリックウィルソン)を制することに成功。オームは牢獄へ。王女メラ(アンバー・ハード)とアーサーは結ばれる。一方、アーサーとの戦いで父を失ったブラックマンタこと海賊デイビッド・ケイン(ヤヒヤ・アブドゥル=マティーンII)は、復讐心を募らせていった。これだけ覚えておけば、今作は大丈夫。

【写真を見る】トム・クルーズが世界一の高層ビルをスタントなしでよじ登る!(『ミッション:インポシブル ゴースト・プロトコル』)

スピード感もレベルアップ!アクアライドを体験できる『アクアマン/失われた王国』

さて、そんな『アクアマン/失われた王国』は、サブタイトルのとおり、かつて悪の力で隆盛を極めたものの国ごと封印された王国に関わる物語。ブラックマンタは、ブラック・トライデントの邪悪な力によって、“失われた王国”を復活するための巨大な力の原動力となったある物質へのアクセスをゲット。アクアマンへの復讐を完遂させようと暗躍する。一方のアクアマンはメラとの間に生まれたばかりの息子の成長に執心し、海の統治には関心を失いかけていた。そんな隙をつかれ、アトランティスはブラックマンタの攻撃を受けてしまう。そこで助けを求めたのは、なんと自分で砂漠の牢獄に送り込んだ義弟のオームだった!?

なんともトリッキーな展開だが、この原案を手掛けたのは、監督を務めたジェームズ・ワンとアクアマンを演じたジェイソン・モモアなど、今作の世界観とファン心理をよく理解している俊英たち。彼らのアイデアにより、「アクアマン」の世界にいるキャラクターが全方位で活躍するばかりか、陸、海、空、すべてを舞台にした壮大な物語になったのだ。全世界を巻き込んだ物語にするため、地球温暖化問題をうまくこの世界観に取り入れたプロットで構成されており、どの国の人が観ても自分ごとに思えるような仕掛けも。しかも、ユーモアのあるキャラクターであるアクアマンの魅力をフルスロットルに見せるため、コミカルな描写もたっぷり。

とはいえ、もちろん見せ場はアクションだ。「アクアマン」シリーズの特徴といえば、海中の低い重力での壮絶アクション。これは当然のことながらふんだんに盛り込まれているが、今作は陸と空もアクションの現場となる。ネタバレにつき詳細は避けるが、アクアマンが牢獄からオームを救出するくだりや、メラに訪れる危機、悪のパワーを得たブラックマンタの襲来のシーンの迫力は、前作をはるかに上回るスピード感と肉弾戦的な生の圧を感じることができるはず。新年一発目にもってこいのアクション大作だ。

でも、そんな『アクアマン/失われた王国』公開までに少々の時間が残されている。年末年始の休暇で、体験型アクションで日常生活と違うハラハラの体験をしてみよう!

■「マッドマックス」「ミッション:インポッシブル」はありあえないアクションの嵐

そこでまず思い出してほしいのは、生身の肉弾戦といえば!の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)や「ミッション:インポッシブル」シリーズ。前者は、アクションファンはもちろん、女性主人公、またはシスターフッド映画がお好きな方にもドンズバの傑作。車から車に飛び移る人にシルク・ドゥ・ソレイユのメンバーを起用したパフォーマンス、140台の車を時速140kmで走らせた壮絶カーアクション、大爆破すべてが盛り盛り。最新作『マッドマックス:フュリオサ』(24)も 2024年公開が予定されているので要チェックだ。

後者は、プロデューサーを兼任している主演のトム・クルーズが崖からバイクでジャンプするシーンのためにフリーフォールの訓練に1年費やした『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(23)が記憶に新しいが、時間に余裕があるいまこそ、シリーズ全部を見直すチャンス。『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(11)では高さ829.8mを誇る世界一の高層ビルの外壁をクライミング、『ミッション:インポッシブルローグ・ネイション』(15)では時速400kmで離陸する飛行機にしがみつくなど、どの作品でも人間業でできる限界のアクションに挑戦している。

カーアクションはここまで進化した!「ワイルド・スピード」シリーズ

また、『アクアマン/失われた王国』同様、VFXを効果的に多用し、人間のアクションと見事に融合させている作品群としては『レディ・プレイヤー1』(18)や「ワイルド・スピード」シリーズが挙げられる。『レディ・プレイヤー1』はゲームのバーチャル世界が舞台だけに、見せ場となるアクションのほとんどがCGキャラクターだが、それらはモーションキャプチャーによって生身の人間が芝居をつけている。それだけに、キャラクターアニメーションらしからぬ大迫力のアクションシーンを楽しめるのだ。

また「ワイルド・スピード」シリーズは、可能な限りガチのカーアクションを撮影しているものだけにアドレナリンでまくり!『アクアマン/失われた王国』のジェームズ・ワンが監督した『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)のカーダイブシーンは、実際に空から車を落下させるという前代未聞の方法で撮影。『ワイルド・スピード EURO MISSION(13)では本物の戦車を使ってマッスルカーVS戦車のアクションを作り上げた。日本が世界に誇るドリフトキング、土屋圭市テクニカルアドバイザーで参加した『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』のカーチェイスもその場にいるかのような迫力だ。

■海中世界に飛び込んだかのような「アバター」「MEG ザ・モンスター」シリーズ

そして海や野生の大自然が舞台となっている点では、ジェームズ・キャメロン監督による「アバター」シリーズ、ジェイソン・ステイサムが主演した「MEG ザ・モンスター」シリーズ、クリス・プラットが主演した「ジュラシック・ワールド」シリーズなど。ドンズバで海、それも海中と陸、空が舞台となる「アバター」は、言わずとしれた世界的大ヒットシリーズ。神秘の星パンドラに実際に迷い込んだかと錯覚する没入感は唯一無二だ。

MEG ザ・モンスター」シリーズは、サメ映画のファン心理をばっちりつかむ巨大ザメの魅力はもちろんだが、海中、海面でのロケ映像のブレンド感は再チェックしてもらいたいポイント。俳優になる前は水泳の飛び込みでイギリス代表チームに呼ばれたこともあるジェイソン・ステイサム扮する主人公が、ツッコミたくなる荒業で巨大ザメを退治する姿は痛快だ。

■迫りくる巨大生物の群れ!これぞ王道パニック映画ジュラシック・ワールド

そして、「ジュラシック・ワールド」シリーズ。人間に制御できなくなった恐竜から人々が逃げ回るのが毎度の展開だが、『アクアマン/失われた王国』でも巨大化した動物&植物からアクアマンとオームに逃げるシーンと同種の興奮が味わえる。どの舞台設定においてもそこに存在するようにしか見えない恐竜たちは、『アクアマン/失われた王国』に登場する巨大生物と同じく、観る者を未体験世界へと誘ってくれる。

アクアマン/失われた王国』を楽しむために観るべき作品はまだまだあるが、まずはこれら傑作群で映画と迫力映像に没入し、今作の公開に備えてほしい。

文/よしひろまさみち

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