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シドが結成20周年ライブ「SID 20th Anniversary GRAND FINAL 『いちばん好きな場所』」を、12月27日に東京・日本武道館で行った。

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2003年にマオ(Vo)と明希(B)を中心に結成され、2004年よりShinji(G)とゆうや(Dr)を含む現在の体制で活動しているシド。結成20周年を迎えた2023年は、1月に東京・LINE CUBE SHIBUYA渋谷公会堂)で行ったファンクラブ限定公演を皮切りにライブやリリースを重ねてきた。そして、充実した1年間を締めくくる場として用意されたのが、彼らが何度も立ってきた武道館だった。

結成20周年での新しい挑戦

大きなシャンデリアに、天井から床に向かって垂らされた純白のドレープ状の巨大な布。アニバーサリーにふさわしいラグジュアリーな雰囲気のステージに、マオ、Shinji、明希、ゆうやの4人は大歓声を浴びながらゆっくりと姿を見せる。1曲目に彼らが届けたのは狂おしい感情を歌ったバラード紫陽花」。Shinjiがイントロの柔らかなフレーズを奏でた瞬間、「わあっ!」と喜びと驚きをにじませた声が上がった。「NOMAD」を挟んで始まったのは、この日のライブにふさわしい「ANNIVERSARY」。心を弾ませるようなバンドの晴れやかなアンサンブルに乗せてミラーボールがきらびやかな光を放ち、その中でマオが伸びやかに歌い上げる。スクリーンに映し出されるその顔には笑みが浮かび、このステージを存分に楽しんでいることを伝えた。

アリバイ」「罠」「妄想日記」というインディーズ時代の人気曲を立て続けに披露したのち、メンバーはそれぞれ20周年を迎えた心境とトークを展開。そしてマオが「新しい挑戦ということでメドレーを作ってきました」と口にしたことを合図に、ゆうやがスティックカウントを始める。ここではメジャーデビュー以降のシドを代表するヒット曲「モノクロのキス」「乱舞のメロディ」「嘘」「V.I.P」が「SID 20th Special Medley」として届けられ、シドの音楽性の幅広さをオーディエンスに印象付けた。

それぞれの個性で魅せるソロ

その後のブロックでは、ゆうやを皮切りにメンバーソロコーナーに突入。ゆうやがトラックを用いて緩急をつけたパフォーマンスを展開すれば、明希はロック色全開のベースプレイを繰り広げつつオーディエンスを煽る。Shinjiはいぶし銀のギターを奏でた直後に、ハードロック調のインストゥルメンタルを熱演。まさに三者三様のパフォーマンスで、プレイヤーとしての多彩さをアピールした。Shinjiからバトンを受け取る形でステージに戻ってきたマオは、スペシャルゲストである葉山拓亮のピアノ演奏とともに「声色」をしっとりと歌い上げる。マオの繊細な声色に寄り添うように響く葉山の旋律……曲のクライマックスでマオは感情を爆発させるかのようにアカペラで絶唱。その全身全霊の歌声に喝采が贈られた。歌い終えた直後に「武道館アカペラを披露したのはひさしぶりです。このアカペラをやるのに必要なのは度胸です」と冗談めかしながら語ったマオ。続けて彼の「せっかくなので」という言葉から、シド+葉山拓亮の5人編成でテレビアニメ「天官賜福 貮」オープニングテーマとして発表されたばかりの新曲バラード「面影」が初披露された。

明希が「ここからどんどん激しくなっていくけど、みんなついてこれるか?」と挑発したことを口火に、4人は攻撃的なシドの表情をあらわにするロックナンバーを投下。「プロポーズ」の前にマオが「20年経ったし、そろそろ結婚しようか?」と艶かしく言い放つと、黄色い歓声が会場にこだました。4人が本編を締めくくる1曲として用意したのは、20年前に発表された「吉開学17歳(無職)」だった。狂喜乱舞する観客を前に躍動するマオ、Shinji、明希の3人と、それを磐石のリズムで支えるゆうや。一枚岩のパフォーマンスが武道館に刻まれ、激しい余韻とともに本編は終わりを告げた。

マオの告白「俺が生きる場所はここ」

鳴り止まないアンコールに応えステージに戻ってきた4人は、20周年の思い出を表現するために作ったという新曲「微風」、インディーズ時代から愛されている「夏恋」「Dear Tokyo」を続けてプレイする。「夏恋」「Dear Tokyo」ではファンとともに歌い、20年の間に紡いできた絆を一体感という形で表現した。

ライブタイトルにも冠されている「いちばん好きな場所」が始まる前、マオはかすれた声で自身の心境を吐露。「ここ数年、ずっとうまく歌えるかなとか、喉が大丈夫かなとかそういうことばかりを考えてステージに向かってたんですが、今日のライブは始まる前からすごい楽しみだったんだよね」と切り出す。「うまく歌うことももちろん気持ちいいけど、どんなにうまく歌えたとしても、楽しいという気持ちが少しだけ足りないだけで全然違ってくるという。今日に関してはどうやって俺たちの20年の足跡をしっかり伝えられるか、20年分の愛を届けられるかということだけを考えて歌って……心の底からすごく気持ちいいライブでした」と2時間強のライブを振り返り、「いろんな方たちに支えられて、このステージにたどりつくことができました。本当に2年前くらいは1曲丸々歌えるか歌えないかの時期があって。それは技術的なこともあるし、精神的にやられていた時期で。そこからどんどん曲数を増やして、ちょっとずつ試しながらここまでたどり着きました。だからシドの第2章は今日から始まると思ってます」と宣言した。

マオが「俺が生きる場所はここだし、俺が一番好きな場所はこのライブのステージです。そしてそこにはみんながいないとダメだし、メンバーのみんな、スタッフのみんなもいないとダメだし。最後はうまいとか下手とか全部取っ払って気持ちで歌います」と口にしたことを合図に「いちばん好きな場所」が始まる。4人の新たな門出を祝うように天井からはキラキラと紙吹雪が舞い落ち、華やかなムードの中でライブはフィナーレへ。最後にメンバーは1人ずつアニバーサリーイヤーを駆け抜けた日々を振り返り、ファンとの再会を約束。マオはステージの真ん中に立ち、マイクオフで「愛してます!」と絶叫すると、ファンを包み込むように両腕でギュッと自分の体を抱き締めた。

第2章に突入したシドは2024年に入って早々にニューシングル「面影」を配信リリース。さらに5月18、19日に山梨・河口湖ステラシアターでライブ「SID LIVE 2024 -Star Forest-」を行う。なお、日本武道館公演の模様は4月にWOWOWで放送 / 配信される予定。

セットリスト

シド「SID 20th Anniversary GRAND FINAL 『いちばん好きな場所』」2023年12月27日 日本武道館

01. 紫陽花
02. NOMAD
03. ANNIVERSARY
04. アリバイ
05. 罠
06. 妄想日記
07. SID 20th Special Medleyモノクロのキス~乱舞のメロディ~嘘~V.I.P
08. 声色
09. 面影
10. 循環
11. プロポーズ
12. park
13. 眩暈
14. 吉開学17歳(無職)
アンコール
15. 微風
16. 夏恋
17. Dear Tokyo
18. いちばん好きな場所

「SID 20th Anniversary GRAND FINAL 『いちばん好きな場所』」の様子。