映画『アクアマン/失われた王国』(2024年1月12日公開)の舞台である“海底アトランティス”と、日本最西端の地、沖縄県与那国島との姉妹都市提携が12月4日に締結された。海中と陸上で姉妹都市提携になるのは世界初の試みだった。MOVIE WALKER PRESS編集部は与那国島を訪ね、この姉妹都市でアクアマンの面影を探してみた。

【写真を見る】「Dr.コトー診療所」の聖地巡礼だけではなく、与那国島で絶景を堪能しよう!

ジェームズ・ワン監督とジェイソン・モモア主演という「ワイルド・スピード」シリーズで知られる最強2人がタッグを組む本作。舞台を海から陸、そして空にまで広げ、前作『アクアマン』(18)を超えるオールラウンド・アトラクションに仕上がっている。はるか昔、氷河の奥深くに“失われた王国”が、世界を滅亡させる力を持つ古代兵器、ブラック・トライデントと共に封印されていた。しかし、その封印は解かれ、かつてない邪悪な力が解き放たれてしまう。海と家族、そして地上の世界を守るために、すべての海の生物を操る能力を持つアクアマン(ジェイソン・モモア)が、仲間と共に立ち上がる。

■“海底アトランティス”の姉妹都市、与那国島へ!

与那国島は、沖縄本島から南西へ約509km、東京から約1,900km、台湾まで約111kmに位置する、約1,700人が暮らす日本最西端の地。飛行機那覇空港から約1時間15分、石垣島からは約30分。また、石垣島との間にフェリーも運航されている。北側に島の中心地である祖納(そない)、西側には、漁港を有する久部良(くぶら)、南側には、テレビドラマDr.コトー診療所」のロケ地となった比川(ひがわ)という3つの集落がある。

地形的に起伏に富んだ与那国島は、断崖絶壁に囲まれ、ダイナミックな自然にあふれる。島内をドライブしていると、海と南国の樹林が織りなす絶景にみるみる魅了されていく。我々一般人は飛行機やフェリーなど交通手段を使う与那国島は、アクアマンだったら、相棒であるシードラゴンのストームに乗って一躍してすぐ上陸できるだろう。

■世界最大の蛾、ヨナグニサンと出会う

取材中、あいにくの雨が降り始めたため、まずは雨天でも楽しむことのできる、亜熱帯の自然のすばらしさを体感させてくれる施設、アヤミハビル館へ。ここで出会えるのは世界最大の蛾、ヨナグニサン。ヨナグニサンとは、はねの開張が180mmから240mmもある大型でかつ美しい蛾で、特撮映画に登場する“モスラ”のモデルであるとも言われている。おもな生息地が与那国であるため、その名前がつけられたとか。アヤミハビル館内で、ヨナグニサンの標本のほか、枝で休憩しているヨナグニサンの幼虫や、もうすぐ繭から抜け出すサナギも近い距離で見られる。また、ヨナグニサンの生態を詳しく紹介し、与那国のほかの昆虫や、動物にまつわることを知ることができるビデオ動画もお見逃しなく!見学したあとには、ヨナグニサンのはねを羽織って、触角をリアルに再現したカチューシャをつけて記念写真が撮影できるフォトスポットもある。

両手を合わせる時のサイズよりも大きいヨナグニサンを見て、すぐ『アクアマン/失われた王国』で登場する“無人島ジャングル”での冒険を思い出した。

アクアマンはかつてない脅威から海と地上の世界を守るために、前作で敵対していた弟のオーム(パトリックウィルソン)を牢獄から救出し、共闘することに。2人はある無人島で古代兵器“ブラック・トライデント”の力によって世界のかつてない脅威となる敵、ブラックマンタ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世)を捜しに行く。そこには熱帯雨林のような自然風景が広がっていき、ヨナグニサンと似ている大きな蝶が空で舞う…海を舞台にする「アクアマン」シリーズでも、陸の風景も満喫できると思いきや、巨大化した生物や昆虫がアクアマンらに襲い掛かってくる。リアルなキャラクター描写にスピード感あふれる映像は、観る人のアドレナリンを上昇させ、ハラハラ感が止まらない!

■日本で一番最後に沈む夕日、楽しい海馬遊び…島を一周して絶景を満喫

アヤミハビル館を後に、海岸沿いを車で走っていると、馬たちが悠然と歩いている。都会ではなかなか見られないのどかな風景だ。ヨナグニウマは、日本に残っている8種の日本在来馬の1種で、与那国の天然記念物でもある。競馬に使われるサラブレッドは160~170cmほど、体重は450〜500kgが標準的なのと比べ、体高はおよそ110~120cmで体重は約200kg前後のヨナグニウマは結構小柄だ。半野生状態で暮らすヨナグニウマは、素直で温厚な性格の持ち主であることとも知られている。なので、初心者でも心配なく乗馬体験ができるだろう。夏は、ヨナグニウマに乗ったまま海に入ってみたり、冬など涼しい時期は、砂浜をゆっくりとするビーチライドなど、写真映えにもオススメで、実にロマンのある旅だ。

海に囲まれた与那国島は、海岸沿いに絶景スポットが多くある。島の東端にある東崎(あがりざき)は、海面から約100mの断崖絶壁をなし、そばに建つ白い灯台の周辺ではヨナグニウマや牛が放牧されている。

島の南東部の海岸にそびえ立つ、神聖かつ巨大な立神岩(たちがみいわ)は、島に古くからの伝説が残る存在で、与那国島シンボルとして地元の人々からも愛されている。

また、島の南には「Dr.コトー診療所」の診療所の撮影セットがある。見学もできるので、ドラマファンにとって聖地化しているスポットだ。そして、その前に広がる比川浜の美しい景色も堪能できる。

そんな数々の絶景を眺めながら、与那国島の最西端にある西崎に到着。日本の一番西である「西崎」は、日の入り、日が沈むという意味で「いりざき」と読むという。天気がいい時に、台湾の島影が見えることもある。灯台、日本最西端の碑のほか、階段とゆるやかなスロープでつなぐ展望台がある。展望台に登ると、見渡す限り果てしない海を眺めて、一瞬どこが海かどこが空かがわからなくなるくらい壮大な風景が目の前に広がっていく。“ザッバーン、ザッバーン”と、波が激しく叩く音が聞こえてきて、下を見てみると、波が砕け散って、しぶきが舞い上がっていく。その激しい波の下で、なにが起きているのだろう?海底王国の出来事を想像してしまう。

■想像が膨らませる、謎が多い「海底遺跡」

さらに、与那国島の海の底には、「海底遺跡」と呼ばれる不思議なスポットがある。巨大構造物のような「与那国島海底地形」が眠っており、約1 万2000 年前に一夜にして海底に沈んでしまったと言われる“アトランティス大陸伝説”にゆかりある場所として知られている。約37年前に、地元ダイバーによって偶然発見され、自然によって造られたものなのか、人工的に造られたものなのか、いまだに謎が多い。

世界中からダイバーたちが訪れる名所である「海底遺跡」。残念ながら、与那国島を訪れた編集部員は海で泳ぐことができない金づちで、実際に見ることができなかったので、「海底遺跡」で行われた『アクアマン/失われた王国』との姉妹都市提携の調印式を記録した映像で、「海底遺跡」への“ダイビング”を体験してみよう。

澄んだ海中に、水中のピラミッドを思わせるくらい不思議な“構造物”が忽然と現れた。ただの岩ではないことは一目瞭然。階段のような直角な部分や、通路のように平坦な部分などがあり、自然物とは思えないほどで、まるで巨大な水中の城だ。さらにダイバーたちの周りで、1匹のウミガメがのんびりと泳いでいる。実に自然と人間の共生のすばらしさが感じられるカットだ。

アクアマンが統治するアトランティス王国に行ってみたというような気分になった。本作では、アクアマンたちが海底世界にかつ存在したといわれる、伝説の“7つ目の王国”という失われた王国を探すが、もしかしたら、与那国島の「海底遺跡」はその7つの王国ともゆかりが深い場所かもしれないと想像が膨らむ。

本作で、陸で育てられたアクアマンことアーサーが、海中の王国で育てられた弟のオームに、チーズバーガーなど人間の食べ物のおいしさを教えるシーンは笑いを誘う。与那国そばや、地元でとれたハラゴのお刺身、車えびの塩焼き、ジーマーミー豆腐など、与那国でしか楽しめないご当地料理のおいしさもぜひアジアの国からアクアマンに伝えたい。

あっという間に与那国島での旅のフィナーレが近づいてきた。またいつか再びここで海に映る夕日を眺めて、アクアマンアトランティスに思いを馳せながらジャーニーを満喫してみたい。

取材・文/編集部

海底アトランティスの姉妹都市、与那国島を訪ねる/写真提供:与那国町観光協会