時代を彩ってきたアクション映画のレジェンドたちが集結し、最強の傭兵軍団を結成する!シルヴェスター・スタローンジェイソン・ステイサムドルフ・ラングレンほか人気スターの競演で映画ファンを熱狂させてきた人気シリーズ最新作『エクスペンダブルズニューブラッド』(2024年1月5日公開)。日本語吹替版では40年にわたってスタローンの声を当ててきた、ささきいさおが今回も吹き替えを担当した。

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自らを“消耗品”と名乗る無敵の傭兵軍団エクスペンダブルズ。リーダーのバーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)や頼れる相棒リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)らに今回下されたミッションは、テロリストが所有する核兵器を奪還すること。危険なミッションに挑む彼らだったが、敵の卑劣な策の前にミッションは失敗に終わり、大きな代償を払うこととなる。

■「エクスペンダブルズは俺のものだ!みたいな気持ちがあるんじゃないでしょうか」

吹替版の収録を終えた直後、取材に臨んだささきは、収録ブースを出てまず「おもしろかった!」とひと言。これまでシリーズ3作で主役を務めてきたスタローンだが、今作では彼が演じるリーダーの座はバーニーからステイサムへ継承される事になる。「その話は聞いていたので、映画の最初に登場し『あとは頼むぞ』と言って帰ってしまうのかと思ったのですが、しっかり目立っていました。エクスペンダブルズは俺のものだ!みたいな気持ちがあるんじゃないでしょうか」と笑う。第1作では監督、脚本を務め、その後も脚本を手掛けてきたスタローン。本作で彼は脚本に名を連ねていないが、現場では自ら脚本に手を入れたという。「やっぱりおもしろくするために、いろいろとアイデアを練ってきたんでしょう。撮影になると、ああしようこうしようと出てくるんだと思います」。

前作『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』が公開されたのは2014年。ささきが「エクスペンダブルズ」シリーズでスタローンの声を当てるのはそれ以来、約10年ぶりとなる。「そんなに経ったんだと驚きましたが、スタローンはかえって若くなった感じがしました。アップになるとさすがに歳は隠せませんが、着ている服も若々しいしスタローン自身も見た目は気にしていたと思います。イタリア系(アメリカ人)だし、もともとおしゃれな人でしょうからね」。

見た目だけでなく雰囲気も変わったという。「(『エクスペンダブルズ ニューブラッド』を吹き替えてみた印象は)全体的に吹っ切れた感じです。これまではジェイソン・ステイサムに負けないよう頑張っていましたが、今回はお前に任せたぞという流れ。アクションやるぞ!という気負いみたいな部分がなくなって、軽くなったように思えました。アクションスターといっても死ぬまで動けるわけじゃないので、一緒にやってきた仲間に譲るのが自然だし良いことだと思います。それでも今回あれだけ動いていますから、やっぱりスタローンはすごいですよ」とその健在ぶりを称える。

■「荒れた声を出さなきゃいけないので、よく仲間と飲んで騒ぐんです」

約10年ぶりとなったスタローンの声にもすぐに入っていけたという。「スタローンはこの声とこういう芝居で、というイメージが少し強すぎる感じもしますが、それくらいしないと彼らしくならないんです。やっぱりスタローンの声は低音がすごいので、その雰囲気を出すのが難しい。原音を聞くとただモゴモゴって言ってるように聞こえるところもありますが、同じように吹き替えてもなにを言っているのかわかりません(笑)。日本人であそこまで低い声でしゃべる人はまずいないでしょう」。

そのため、スタローン作品の収録には声を作って臨むのがささき流。「適度に荒れた声を出さなきゃいけないので、よく仲間と飲んでワーッと騒ぐんです。そうすると喉のあたりが解放されて、低い声が出やすくなりますから。ただし飲み過ぎると声が出なくなるので、そのあたりは気をつけます。今回はたまたま数日前にステージがあり、目一杯歌ってきたのでいい状態で低い声がよく出ましたね(笑)」。

■「特に好きなのはロッキーランボーの初期の作品」

ささきが初めてスタローン吹き替えを担当したのは、『勝利への脱出』(81)のテレビ放映版。それから40年以上にわたってスタローンの声を当ててきた。ただし、スタローンを当てはじめた当初は声を作ることは意識していなかったという。「僕だけでなくDVDなどで違う役者さんもスタローンを当てていましたが、ある時プロデューサーやディレクターにささきさんは声も近いですよね、みたいなことを言われたんです。それから声を作ることを意識しはじめました(笑)」。ささきの考える“スタローンらしさ”とは、声の低さと躍動感にあるという。「昔あるディレクターと飲んだ時、なぜ自分みたいなアーティキュレーション(声の強弱)のある役者を吹き替えに使うの?と聞いたら、『ヤンキーみたいな雰囲気があってアテレコにぴったりだ』と言われたことがありました。そのあたりがスタローンの声を当てる時にも活きたんでしょうね」とふり返る。

ロッキーランボー、バーニーなど、これまで様々なスタローンのキャラクターを当ててきたなかで、特にお気に入りのキャラクターはなにか聞いてみた。「いっぱいありますが、特に好きなのはロッキーランボーの初期の作品ですね。特に『ロッキー3』はすごくおもしろかった。やっぱりスタローン自身、世の中に対する反発心みたいなものを持っていて、『ロッキー3』にはそれをすごく感じるんです。最近のスタローン作品は残酷なシーンが多いのですが、それも『お前ら戦場でこういうことやってるんだろ』と提示してるように思えます。それにしても、ちょっとやりすぎじゃない?と思うところもありますけどね(笑)」。

ロッキー』(76)で一躍人気スターになったスタローン。それから50年近くも彼がトップスターとして支持されてきた理由について、ささきは圧倒的な存在感だと考える。「スタローンはいるだけで違います。やっぱり彼は自ら脚本を書き、監督もしています。自分が作ったものを自ら演じるということは、長所を活かした演出ができるだけでなく自分を客観視できているということ。だからスタローンの映画はおもしろいし、魅力的に映るんだと思います。『エクスペンダブルズ』シリーズもそのひとつで、今回もアクション映画の魅力満載の作り。これでもかというぐらい見せ場が続くので、楽しみにしてほしいですね」。

スタローンらしさを盛り込みながら、新たなスタンスで臨んだ『エクスペンダブルズ ニューブラッド』。スタローン=バーニーの存在感をあらためて感じさせる、シリーズのターニングポイントとなる作品である。

文/神武団四郎

40年以上スタローンの声を当てるレジェンド!ささきいさお/撮影/黒羽政士