2023年、栃木県に「宇都宮ライトレール」が登場。好調な利用が続いていますが、今後も更なる進化を遂げそうです。

開業3か月目は約39万人が利用

2023年の鉄道は、栃木県に「宇都宮ライトレール」が開業するなど、大きな動きがありました。同路線は好調な利用が続いていますが、2024年は更なる進化を遂げるべく、着々と準備が進んでいるようです。

8月に開業を迎えた「宇都宮ライトレール」。路面電車の新設は75年ぶりで、既設の路線を改築するのではなく、ゼロから作ったLRT(次世代路面電車)としては全国初となります。

路線は、宇都宮駅東口から鬼怒川を越えて芳賀町のホンダ工場前に位置する「芳賀・高根沢工業団地駅」までの14.6km。そのうち約65%は道路と鉄道の併用区間、約35%はLRTのみが走行可能な専用区間です。車両は未来的な流線形が特徴の連接低床車「HU300形」で、その定員は国内の低床式車両で最多となる160人となっています。

開業時点では普通のみの運転で、全線の所要時間は48分。朝夕のピーク時(6~9時、17~19時)は約8分間隔、ピーク時以外と土休日はおおむね12分間隔で運行されています。

ただ、これは「暫定ダイヤ」となり、利用実態を踏まえ、2024年春のダイヤ改正で快速運行や増発が実施される予定です。暫定ダイヤは、一定のあいだ運賃収受に時間がかかることを踏まえた措置でした。

宇都宮市によると、開業3か月目(10月26日11月25日)には約39万人が利用し、当初予測の1.3倍で推移しているそう。特に土休日の利用が好調で、1日あたり約4400人の当初予測を大幅に上回る約1万1000~2000人が利用したといいます。

具体的な開業効果や延伸計画は?

「芳賀・宇都宮基幹公共交通検討委員会」は2023年11月、LRTの整備効果として、沿線の宇都宮駅東口周辺で高層建築物(6階建て以上)の建築確認申請件数が増加するなど、民間投資が活発化していることを明らかにしました。

また、宇都宮市や芳賀町のLRT沿線では、地価が上昇基調にあるとのこと。賃貸物件の問い合わせ数が前年同月比で54%増えたほか、家賃相場も約10・9%上昇したとしています。さらに、女性向け賃貸物件検索サイト「Woman.CHINTAI」で2023年に検索数・問い合わせ数が多かった駅を集計した「住みたい街ランキング」で、宇都宮が4位(前回調査では93位)となるなど、沿線への注目が高まっているようです。

沿線では開発も相次いでいます。平石駅に隣接するエリアでは、新たな賑わい拠点をつくる「東部総合公園整備運営事業」が推進されています。スケートボードの国際大会にも対応可能なスケートパークなどが整備され、2026年3月に開業する予定。また、グリーンスタジアム駅の隣接地エリアでは、キヤノンが新工場を着工しており、LRTの更なる利用増も見込めそうです。

今後、宇都宮ライトレールは、JR宇都宮駅からさらに西側エリアへの延伸が予定されています。まずはJR宇都宮駅東口停留場~宝木町1丁目・駒生1丁目付近(教育会館付近)までの5kmが着実に整備する「整備区間」、そこから先の大谷観光地付近までが「検討区間」とされています。整備区間には、市街地の中心に近い二荒山神社や、東武宇都宮駅、桜通り十文字、護国神社などの付近に停留所が設置される計画です。

宇都宮市は、LRTの駅西側延伸について、2024年に軌道事業の特許申請、2026年に工事着手、2030年代の開業を目指しています。既に西側延伸に向けた「軌道基本設計業務」も発注しており、今後整備に向けた動きが本格化する見込みです。

宇都宮ライトレールの車両(画像:写真AC)。