今季も多忙を極めたプレミアリーグの年末年始を振り返ろう。

 毎年のように休みなく試合が続くプレミアリーグは、今シーズンの年末年始も連戦が繰り広げられた。12月21日から1月2日までの13日間で、試合が開かれなかったのは12月25日と29日の2日間だけ。連日のように熱戦が繰り広げられ、クラブワールドカップに参加したマンチェスター・シティのブレントフォード戦が延期となったが、残り18チームはそれぞれ3試合ずつを戦った。当然、3連勝したチームもいれば、一度も勝てなかったチームもいる…。

 それではプレミアリーグの年末年始の結果をおさらいしよう。

[写真]=Getty Images

◆■年末年始に稼いだチーム

 3連勝で気持ちよく新年を迎えることができたのは1チームだけ。それがウルヴァーハンプトンだ。今季からギャリー・オニール政権で戦っている彼らは13位で年末年始の3連戦を迎えると、12月24日チェルシーと対戦した。28年ぶりの“クリスマスイブ開催”で物議をかもした一戦は、後半追加タイムにゴールを奪い合う展開となり、最終的にウルヴァーハンプトンが2-1で競り勝った。

 続く12月27日のブレントフォード戦で4-1の勝利を収めると、その3日後のエヴァートン戦にも3-0で勝って2023年を3連勝で締めくくった。オニール監督も「ケガ人がいる中で、6日間で勝ち点9は信じられないような1週間になった。みんなが本当に頑張ってくれた」と選手たちを大絶賛した。

 ウルヴァーハンプトンが3点差以上でトップリーグの試合に連勝するのは59年ぶりの快挙だという。しかも、エヴァートン戦では2試合連続ゴールと活躍していたMFマリオ・レミナ(30歳)を欠いて勝利を収めた。ガボン代表のMFは、12月24日チェルシー戦でゴールを決めてマン・オブ・ザ・マッチに輝くと、試合後のインタビューで「2カ月間も闘病中の父にメッセージを送りたい。僕も父と一緒に居たいけど、僕には仕事があるんだ。お父さん、頑張ってね。みんながついているからね」と語っていた。

 しかし、父親は帰らぬ人に。レミナはすぐに家族の元へ飛び、12月30日エヴァートン戦を欠場した。それでも3-0の見事な勝利を収めたウルヴァーハンプトンは、チームメイトがレミナの背番号5のユニフォームを掲げ、監督は勝利をレミナに捧げた。「彼なくして、我々が28ポイントも稼ぐことなど不可能だった。辛いと思うが、この勝利が少しでも彼の励みになることを願う。気持ちの整理がつくまで好きなだけ休んでいいと伝えてある」

 ウルヴァーハンプトンの9ポイントに次ぐ7ポイントを稼いだのは2チーム。首位に立つリヴァプールと6位につけるウェストハムだ。リヴァプール12月23日アーセナルとの首位攻防戦に1-1で引き分けると、ボクシングデーのバーンリー戦に2-0で勝利して首位に浮上。そして元日開催となったニューカッスルとの注目の一戦も、4-2で勝ち点3を確保した。

 データ会社『Opta』によると、リヴァプールニューカッスル戦でゴール期待値「7.27」を記録。これは集計が始まった2010-11シーズン以降でプレミアリーグの最高記録だという。その試合で2ゴールを決めたエースのFWモハメド・サラーは、これでリヴァプールでのプレミア通算151点目。1つのクラブで150ゴール以上はプレミア史上5人目の快挙となった。

 3連戦で勝ち点7を稼いだリヴァプールは首位で新年を迎え、4シーズンぶりのリーグ優勝に向けて視界良好だ。しかし、決して楽観視はできない。エジプト代表FWサラーアフリカネーションズカップに出場するためチームを離れるのだ。1月7日のFAカップのアーセナル戦から最大で8試合を欠場する可能性がある。その間も好調を維持できれば、優勝に大きく近づけるはずだ。

 同じく7ポイントを稼いだウェストハムも好位置につけている。年末年始の3連戦ではマンチェスター・ユナイテッドアーセナルにそれぞれ2-0で勝利すると、1月2日ブライトン戦はゴールレスで引き分けた。堅守を自慢とするデイヴィッド・モイーズ監督のチームは組織立った守備を発揮。この3連戦でシュート数は自分たちより対戦相手の方が計39本も多く、これはリーグワーストの数字だったという。それでも体を張った守備で年末年始の連戦を唯一、無失点で乗り切って見せた!

 モイーズ監督も、今季いっぱいで契約が満了するため退任が濃厚と言われていたが、ここにきて契約更新の話も出ている。昨シーズンはヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)を制してクラブに43年ぶりの主要タイトルをクラブにもたらし、今季はマンチェスター・ユナイテッドニューカッスルチェルシーを抑えて6位という好位置につけているほか、ヨーロッパリーグ(EL)でもベスト16進出を決めている。

 ちなみに、ウェストハムもアフリカネーションズカップでMFモハメド・クドゥス(ガーナ代表)といった主力を奪われる。一方、ウルヴァーハンプトンは今季プレミア10ゴールのFWファン・ヒチャン(韓国代表)をAFCアジアカップカタール2023で失う。

 上記の3チームに次いで好成績を収めたのは王者マンチェスター・シティだ。マンチェスター・シティは世界一の称号を手にしたクラブワールドカップの影響で年末のリーグ戦は2試合だけだった。最近はリーグ戦6試合でわずか1勝と苦しんでいたマンチェスター・シティだが、12月27日エヴァートン戦に3-1で勝利すると、3日後のシェフィールド・ユナイテッド戦も2-0で制して2連勝で2023年を締めくくった。一時は前人未到の4連覇に黄色信号が灯ったかに思われたが、気づけば1試合消化が少ない中で首位リヴァプールと5ポイント差の3位。そしてケガで離脱していたMFケヴィン・デ・ブライネとFWアーリング・ハーランドが復帰に近づいており、後半戦の巻き返しに準備万端だ。

◆■年末年始の不振

 好成績を収めたチームとは対照的に、致命的な敗戦を喫した者もいる。年末年始の連戦で全敗に終わったのは3チーム。エヴァートン、ブレントフォードニューカッスルだ。昨季4位に入ったニューカッスルは、ケガ人の続出もあってリーグ戦最近6試合で1勝5敗と苦しんでいる。

 とはいえ、年末年始に最もダメージを負ったチームと言えばアーセナルだろう。20シーズンぶりのリーグ制覇に向けて首位で連戦に突入したアーセナルだが、リヴァプールとの首位攻防戦に引き分けたあと、年末のロンドンダービーでまさかの2連敗を喫することになった。12月28日のウェストハム戦に0-2で敗れてホームで今季初黒星を喫すると、大晦日のフルアム戦も1-2の黒星。3連戦でわずかに1ポイントしか稼げなかったのだ。

 18節を終えた時点で1位にいたチームが、気づけば首位リヴァプールと5ポイント差の4位に後退。『Opta』のスーパーコンピューターによると、12月中旬に28.3%と計算されていたアーセナルの優勝確率は24.2%も急落。現在の優勝確率は58.5%のマンチェスター・シティ、34.6%のリヴァプールに次いで「4.1%」となっている…。

 果たして、年末年始の成績が最終的にどんな影響を及ぼすのか、プレミアリーグの後半戦に注目したい。

(記事/Footmedia)

今季も多忙を極めた年末年始のプレミアリーグ [写真]=Getty Images