この記事をまとめると
■ランドローバーのディフェンダーは悪路特化型のSUVとして愛されている
■シート構造の変更や簡単なモード切り替えなど、先代のネガな部分が改良された
伝統のディフェンダーが2024年モデルへアップグレード
英国ランドローバー社のディフェンダーは、本格的なオフロード性能を備えるクロカンSUVとして世界中で活躍している。2020年に登場した現行モデルは、より先進的な装備と悪路走破性を備えながら、高級感溢れる装備や外観、仕様などで同社のフラッグシップモデルといえるレンジローバーシリーズに勝るとも劣らない人気を獲得した。
ディフェンダーには、伝統的に90、110、130とモデル名にナンバーが与えられ、当初それはホイールベースにちなんだモデル名として周知されていた。例えば90=90インチを意味し、ホイールベースは90インチ=2286mm(1インチ=25.4mm)となっていた。しかし、現在はネーミングだけが残り、実際のホイールベースは異なっている。
そんなディフェンダーシリーズに2024仕様が登場し、試乗機会を得ることができた。
2023年はランドローバー社にとって75周年となる節目で、それだけに力の入ったモデル開発が行なわれたと思われる。
試乗したモデルは90のV8。2ドアのショートホイールベースになんと5リッターV型8気筒スーパーチャージドエンジンを搭載したハイパワーモデルだ。しかも2024モデル限定として最高出力を525馬力に引き上げている。
今回試乗した90の全長は4510mmとコンパクトだが、全幅は1995mmと110や130と変わりない。ホイールベースは2585mmで、それを利して最小回転半径は5.3mと小さくなっている。
2ドア90の外観は、少しデフォルメされたような愛らしさに近代的なデザインセンスが活かされ、非常に魅力的だ。外観からイメージされる後席は狭そうだが、実際に乗り込んでみると必要十分な後席スペースが確保されている。また、ルーフサイドウインドウの配置なども非日常的で楽しめる。後席後ろのラゲッジスペースも外観からイメージするよりは大きく、実用性は高い。
従来、2ドアである90の後席に乗り込むには前席を電動で動かさなければならず、若干時間がかかることから不評だったというが、2024モデルでは前席を手動でスライドさせられるよう改められたので、後席に素早くアクセスできるようになった。
こんな見た目でも走りはかなりスポーティ
運転席に乗り込み、エンジンを始動すると、V8エンジンが初爆で迫力あるサウンドを発し、アイドリングに移行してからも、V8特有のサウンドを聞かせてくれる。電動化モデルが増え、純粋なICE(内燃機関)のエンジンが減って行く現状において、こんなワイルドなサウンドを轟かせるモデルは今後出てこないだろう。そういった意味ではパフォーマンス以上に希少性をもたらせてくれている。
トランスミッションは電子制御の8速ATで、金属製のパドルが装備されマニュアル変速も可能だ。
0~100km/h加速5.2秒、最高速度240km/hという圧倒的な動力性能を誇り、最大渡河性能900mm(静水状態)は電子制御エアサスペンションにより車高を高めることで可能としている。
今回、そうした電子制御系を1ボタンで最適制御できるテレインレスポンス2(ダイナミックプログラム付)が備わり、市街地から悪路まで常時オンにしておけば最適なセットアップが得られるようになった。
試乗ルートは東京都内の一般道であったため、こうした機能がフルに作動することはなかったが、機会があれば雪道や泥濘路など本格的なオフロードで試したい。
と言うのも、近年スーパーカーを購入してもサーキット以外で性能を試すことは許されないのと同様に、こうしたクロカンSUVのオフロード性能もちょっと田舎の悪路で試すこともできなくなっている。ハイスピードでサーキットを走行するのに専門的なトレーニングを受ける必要があるように、クロカンSUVも同様な知識や経験を積んでおく必要がある。
そういう意味ではメーカー間の垣根を越えて、悪路専用のクローズド施設を用意することが、こうしたモデルを販売するメーカーの責務となってきていると思える。
一般道で走る限り、ややリヤサスペンションの突き上げが強く感じたが、速度レンジが高まり、また悪路などであれば良好な乗り心地が得られるはず。
ディフェンダー90ほどの悪路走破性を持つクルマが本領を発揮するステージは、国内では無いに等しく、それだけに非日常的な所有する歓びも倍増するのだということを改めて思うのだった。
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