本郷奏多

 俳優の本郷奏多が、Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』(独占配信中)に出演。主人公浦飯幽助(演・北村匠海)の好敵手として登場する妖怪・飛影を演じる。『幽☆遊☆白書』は1990年から4年間、週刊少年ジャンプ集英社)で連載された冨樫義博氏による伝説的大ヒット漫画が原作。人間界、魔界、霊界という三つが交錯する壮大な世界観の中で、それぞれに強い信念をもって戦う魅力的なキャラクターたちのバトルが繰り広げられる。実写版では戸愚呂兄弟との戦いをメインにストーリーが展開していく。インタビューでは、『GANTZ』や『鋼の錬金術師』『キングダム』など漫画原作の作品に多く出演する本郷奏多に、『幽☆遊☆白書』の魅力から、アクションシーンは過酷だったという撮影の裏側、もし飛影以外のキャラクターを演じられるとしたらどの人物を選ぶのか、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

低く俊敏がテーマ

――2023年ももうすぐ終わってしまいますが、年末、新年というのは意識されますか。

 日付、曜日感覚は失いました(笑)。この仕事をしていると曜日感覚がなくなっていきます。季節をぼんやり感じるくらいで。

――それも作品の季節感で変わりそうですね。

 夏場に冬の設定で着込んだりとか、逆もたくさんあるので季節の感覚もあんまりないかもしれないです。『幽☆遊☆白書』もそうですけどスタジオに行って朝から晩まで篭りっきりで撮るとなると、自宅と現場の往復だけだと気温を感じることもほとんどないです。

――来年の目標とか考えたりされますか。

 取材とかイベントで12月、1 月頃になると「来年(今年)の抱負は?」と聞いていただくことがあるので、そのときは何かしら考えてお話しますが、1 年間それを意識することはほとんどないです。30年近くこの仕事やっているので、今年はこれができるようになろうとか考えなくなり、常に全力でやることを考えています。

――以前、取材させていただいた時に「役者を20年以上やっているので、新たな発見はそうそうない」とお話しされていたのが印象的でした。

 発見というところにつながるかはわからないのですが、『幽☆遊☆白書』はできあがった映像を見たときに今までとは違う感動がありました。自分が出演した映像作品を見て、こういう風に感動できるんだ、というのを気づかせてもらえて嬉しかったです。

――本当に映像すごかったです。さて、原作を読まれてみていかがでしたか?

 面白かったです。当時の子ども達が熱狂していたのがわかります。魅力的で面白いキャラクターがいっぱい出てきますし、キャラが成長してどんどん格好よくなっていくので、ワクワク感がずっと続くなか、全巻一気に読み終えてしまいました。

――今回、飛影を演じるにあたり背が小さい役なので低く構えていたというお話をお聞きしたのですが、どのように飛影を演じようと思っていたのでしょうか。

 低く俊敏というのが大きなテーマでした。みんなと一緒に立っている時は低くすることはできないのですが、 戦闘モードになった時は低く見せたいとイメージしていました。アクション部ともそれについて話し合って、それをベースにアクションを組んでいただきました。

――事前に準備された事は?

 浦飯幽助役の北村さんと桑原和真役の上杉さんの2人は体を大きくするためのトレーニングしていたとお話をされていたのですが、飛影に関しては体を作るという感じのキャラじゃないと思いました。線が細くてスピードに長けているというスタイルにしたかったので、体を大きくしてしまうのは逆にもったいないかなと思いました。ただ、アクション稽古に関しては人一倍やったと自負しています。

――飛影は剣も扱いますが、殺陣の稽古もやられました?

 はい。殺陣の基礎的なところから実践的なアクションに関してはたくさんやりました。クランクインが延びた関係もあって、1年以上を掛けてかなりの回数のアクション稽古のみをやっていて、体がボロボロで悲鳴を上げながらやってました。

――今作の飛影の目がは青っぽい感じなんですよね。この理由は聞かれていますか?

 衣装合わせのときに様々な色のカラコンを試して比較検討した結果、青色になったのですが、大きな理由としてそれが一番人間味がなかったからだとお話ししているのを聞きました。

――確かに無機質な感じもあります。

 幽助と桑原は人間、蔵馬も人間に憑依しているので人間のイメージです。その3人と比べると飛影だけが純粋な妖怪なんです。人間たちとちょっと違う異質な感じを残したかったみたいで、目が青いのが冷たさと無機質さのバランスが良かったみたいです。

本郷奏多が演じてみたいキャラとは?

――さて、今回登場するキャラクターの中で、もし役を選べるならやってみたいキャラはありますか?

 もし僕がこの作品に携わっていなかったとして、「どの役をやりたい?」と聞かれたら迷わず飛影と答えていると思います。ですので、飛影に選んでいただけて嬉しかったです。ただ、アクション内容として蔵馬の戦闘スタイルは楽しそうだなと思いました。幽助は肉弾戦、桑原は肉弾戦+霊剣、飛影は剣がメインで蔵馬だけ植物を操るというちょっと異質なスタイルなんです。見ていてできることの幅がいっぱいあるスタイルだなと思いました。

――クレバーな蔵馬らしい武器ですよね。

 蔵馬の武器、ローズウィップは相手を切り裂いたり拘束する手段としても使いますし、自分が逃げるときにも活躍します。現実には存在しない武器だからこそ、その利点を取り入れたアクションをしているのが羨ましくて。バリエーションの多さ、高所をビュンビュン飛び回るのも格好よかったので、楽しそうだなと思って見ていました。撮影で志尊さんは常に持ち手の部分が合成用の緑色の棒を持っていたのですが、完成した映像はすごい迫力でした。

――ちなみに飛影の必殺技「黒龍波」もVFXで迫力のあるものに仕上がっていますが、撮影はいかがでした?

 「黒龍波」を放った後の右手がすごく黒くなるのですが、それは特殊メイクで黒くしています。ですので、カラコンを入れるときは指先だけきれいにして頑張っていました(笑)。腕の特殊メイクは完成までに2〜3 時間くらいかかるんです。

――すごい大変な作業なんですね。

 みんな朝6時ぐらいに現場入りするのですが、僕は午前3時頃にスタジオに入って腕を作っていただいて。6〜7時ぐらいに出来上がって、さあ撮影を始めるかみたいな。思い出すだけでも大変な日々でした(笑)。

――浦飯幽助役の北村さん、蔵馬役の志尊淳さん、桑原和真役の上杉柊平さんの3人と共演されてみていかがでした?

 撮影が進むたびに仲良くなっていったなと思います。特に戸愚呂兄弟VS僕ら4人という構図のバトルシーンでは、4人のチーム感と言いますか、一緒に戦ってきた絆を感じました。撮影の前のアクション稽古もそれぞれ時間はばらけているのですが、頭と終わりが重なるときもあったので、その時にお互いがどれだけ努力してきたのかが伝わってきました。稽古の終わりがけに稽古場に着くと、みんな本当にヘトヘトでしたし、逆に僕も同じような姿を見られています。みんなの努力があってこの戦いが組み立てて来られたんだなと誇らしい気持ちですし、チーム感、仲間意識がすごく芽生えました。

――本郷さんが思う『幽☆遊☆白書』の魅力は?

 原作はあくまでもバトルマンガというのが主軸にあって、原作では暗黒武術会や魔界統一トーナメントのような、バトル漫画としてわかりやすい展開があったと思います。今回は5話にギュッと凝縮するという関係もありつつ、現代の映像作品というストーリーの組み立て方をしています。戦うことに理由があり、そこが明確になっている。幽助や蔵馬は大切な人を守りたい、桑原は仲間を守りたい、飛影は妹のためにと、それぞれ明確な目的があって戦っているというのがNetflix版『幽☆遊☆白書』の見どころで、そこがすごくいいと思います。

――本郷さんがいま戦(闘)っているものはありますか?

 役者という世界と闘っています。自分に能力がないと次のオファーが来ない世界だと思っていて、しっかり能力がある人だけが残っていると感じています。

――その能力というのは役者としての個性? それともお芝居がうまい?

 それもありますが、人間性が大事だと思っていて、そういう人が仕事としっかり向き合って、結果実力がある人しか残っていないと感じています。

――本郷さんがすごいなと思っている役者さんはいらっしゃるんですか?

 昔からずっとすごいなと思い続けているのは神木隆之介くんです。子役の時から出続けていて、周りから大切に扱われてきたところもあると思うのですが、天狗になった瞬間がないと言いますか、本当に人間ができているなと思います。そして、確かな実力もあって本当に素晴らしい方だなと思っています。僕はかれこれ20年ぐらい一緒にいますけど、悪口やグチを言ったり、弱音を吐いている姿を一度も見たことがないんです。この世界で残り続けるのはこういう人なんだなと常に尊敬しています。

――最後に、次にやってみたい役はありますか?

 同い年ぐらいの俳優さんを見ていると、4〜5年前ぐらいから自分と近い年齢の役、社会人役などをやり始めていて、僕は漫画原作が多かったので、等身大の役をそろそろやれたらなと話していたら、ここ 1 年でそういう役をたくさんいただけたので、引き続きという感じです。年齢相応な役のお仕事が自分にも来るようになったという安心感がありました。ただ、ド派手なキラキラした作品、漫画原作の役はそろそろ年齢的にオファーが少なくなってきてしまうのでは? と等身大の役をいただけてきた今だからこそちょっと感じています。

――バランス良くできたら嬉しいですよね?

 そうですね。やっぱり漫画原作のド派手な役はワクワクしますし、すごく楽しいのでまだまだやっていけたらいいなと思っています。

(おわり)

作品情報

Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書
Netflixにて独占配信中
©Yoshihiro Togashi 1990年1994年
原作/冨樫義博幽☆遊☆白書」(集英社「ジャンプコミックス」刊)