2023年も終わり2024年に入ったが、昨年も豊かな個性で多彩な面白さを届けてくれるVTuber~バーチャルタレントが登場した。

【動画】赤見かるびのスト鯖GTAシーズン2総集編

 約1年とすこしのあいだで同時視聴者数が大幅に増加したタレントたちには、新人ながらそのパーソナリティやトークで人目を引きつける者、得意なゲームジャンルを通して一気に注目された者など、ブレイクのきっかけとなったさまざまなポイントが存在する。

 今回は、そんな「2023年にブレイクしたタレントや新人」にスポットをあて、筆を進めていきたいとおもう。

 12月10日からクリスマス直前の23日夜まで開催されていた『VCR GTA2』は、年末を盛り上げる大型イベントとして大きな注目を集めた。

 招待制ゲームコミュニティ・VAULTROOMとプロゲーミングチーム・Crazy Raccoonが主催する『VCR』イベントは、「あらゆるシーンから多種多彩な人物を集める」というシンプルなアイディアを根幹とし、VTuberやストリーマーから俳優やミュージシャンなど、ジャンル問わずさまざまなゲーム好きのタレントを集め、用意された専用サーバーでひとつのゲームを一緒にプレイさせる内容となっている。

 こうした経緯から『VCR』は大きな注目を集める人気のイベントとなっており、幅広いタレントが集うことでさまざまな化学反応を見せてくれる同イベントは、これまでに数多くのドラマ/名シーンを生み出してきた。

 参加者の配信も視聴者数がグっと伸び、普段から1万人~2万人の視聴者を集めている者ですら、この期間中は3万人以上、ときには6万人もの視聴者を集めるほど。

 今回開催された『VCR GTA2』の期間中、多くの視聴者をあつめたことが影響し、「Twitch」において12月2週および3週目に“最も視聴された女性ストリーマー”が生まれることになった。

 それが、女性VTuber~バーチャルタレントの赤見かるびだ。彼女をこういったイベント・情報で初めて知った方のために、あらためて彼女についての詳細を書いていこう。

 赤見かるびは2021年1月15日から活動をしているVTuberで、主にTwitchにて配信活動をしている。

 彼女はホロライブにじさんじぶいすぽっ!といった、企業が主導するプロジェクトや事務所には所属していない「個人勢VTuber」であり、今もっとも勢いのあるタレントの1人といっても過言ではない。

 猪突猛進かつ突拍子もない行動を起こすのが彼女の代名詞で、さらには時にマナーやモラルを無視した言葉やアイディアを口にすることがあり、品行方正なイメージ作りを求められがちな企業所属のタレントに比して、“あらくれ者”というイメージがついてまわる。

 そのアウトローかつ危なっかしい一面を見ていると、シーン黎明期にたまに見られていた数々の“尖ったVTuberたち”の姿を重ねてしまう。その姿が「攻めたVTuber」にも見えるためか、そこにワクワクしているリスナーの方も一定数いることだろう。

 普段は『VALORANT』を中心にFPSゲームをプレイしており、ほかにもさまざまなゲームをプレイしているが、その見どころは意外なところにある。配信中に時折みせてしまう珍プレイの数々が、リスナーの笑いを誘うのだ。

 特徴的な声で強気な言動をみせている姿とはあまりにも対照的で、猪突猛進かつアウトローな一面をも見せる彼女の“やらかし姿”はどこかコミカルで、小物感すら漂わせてしまう。

 こういった面もあり、彼女のゲーム配信に寄せられるコメントのなかには、遠慮のない率直な言葉が並ぶことがしばしばある。時には見ているかるび本人や他リスナーにとっても、憤慨したり、悲しくなるような言葉も並ぶ。

 だが、こういった部分からは「彼女の配信をリスナーが本音・本心・本気で見ている」「彼女との距離を近く感じていて素直に言葉を交わせる」という一面も透けてみえてくる。

 そんな彼女は、デビュー当時はTwitch内では当時まだ少なかった日本人、しかも女性のVTuberということもあって徐々に注目を集め、2022年6月に初めて開催された『VCR RUST』に参加することになった。

 そこで、「赤見かるび」の危なっかしい一面がいきなり炸裂することになったのだ。

 ことのあらましは、かるびが同じサーバーでプレイしているプレイヤー(ストリーマーやVTuberら)の家へ勝手に侵入、アイテムを強奪しようと試み、失敗したことを逆恨みして馬を殺した、というものだ。

 この行為が賛否を呼んだのは言うまでもない。『RUST』というゲームの世界観・プレイングとしては正しいという声もあれば、招待制という限定的なコミュニティにおいては「友好的なムード」を壊さぬように守るべきマナーやモラルもある、さまざまな声があがった。

 この時かるびと共にプレイしていたストリーマー・しんじが注意をすると、長々とした話しに飽きたのか「うるさいなぁ」とボソっと一言。

 後日リスナーにこう返されたときの心境を問われたしんじは、「言われると思ってなかった言葉過ぎて聞き取れていなかった」とのことだったが、このエピソードを振り返ると当時の彼女がいかに無法者であったかがわかる。

 もちろんだが、このあと彼女はしっかりとこの件を反省。その後の『VCR』イベントにも招待され、この時に被害をうけていたアルス・アルマルにも無事直接謝罪の言葉を述べている。

■赤見かるびの運命を分岐させた、ストリーマー・スタンミの存在

 「無法者」なイメージがついてしまった赤見かるびだったが、2023年にはいってからは、喜怒哀楽さまざまな感情を沸き立たせる名シーンを作ってきた。

 2023年4月末に開催された『VCR RUST2』では、先述した騒動の影響もあり、運営から注意を受けた上で参加。ストリーマー・スタンミと共にチームを組み、昨年までのイメージを払拭するようなおもしろシーンを生み出し続け、最後に彼女はスタンミにこのような言葉をかけたのだ。

「スタンミがわたしを拾ってくれなかったら、こんなに長くスト鯖を楽しむことはできなかった」
「わたしたちはスト鯖で一番弱いかもしれないけど、一番楽しんだ自信があるよ!」

 いちどついてしまった「無法者」のイメージ、それを知りつつも彼女とともに行動したナイスガイも、このような感謝の言葉が告げられ、思わず感極まる姿を見せた。

 こうした出会いと成長を経て、彼女の猪突猛進なプレイングやおバカな一面は愛される要素となり、一気に人気に火がついたのだ。

 くわえて、彼女が『ストリートファイター6』をプレイし、これまで関わることのなかった格ゲー界隈のプレイヤーらと交流をした際のエピソードも忘れることはできない。

 上記の感動的なシーンから約1ヶ月ほど経ち、2023年6月9日に行われる『REJECT FIGHT NIGHT』に出場することが決定した赤見かるび。ほとんど格ゲーをプレイしたことがない彼女は、日本格ゲー界の第一人者・梅原大吾とチームを組むと、いきなり梅原を「ウメちゃん」と呼びはじめ、チームメイトだったけんきをあわてさせることに。

 ゲーム内でも指折りの重量級&高火力キャラ・マリーザをメインにしてプレイすることを決めた赤見かるび。アーマーを使って猪突猛進していくマリーザの戦法は、日々の配信で赤見かるびが見せるプレイスタイルと重なる部分がある。強引な打撃で勝利を奪い取っていくスタイルで大いに大会を盛り上げた彼女は、その後の格ゲー企画・大会にも毎回のように呼ばれるようになったのだ。

 また、梅原からの紹介でプロ格闘ゲーマーであるShutoを紹介されると、みごとに意気投合。明るく振る舞うかるびと、それに引っ張られるように軽い口調で次々と冗談を言って笑わせるShutoという関係が生まれ、良好な師弟関係を築いたのだった。

 そんな赤見かるびが、リーダーとして一大勢力を率いたのが、12月末に催された『VCR GTA2』だった。以前から交流のあったSHAKAとsasatikにくわえ、直近のFPS大会でチームを組んで良好な関係を結んでいた葛葉、『GTA5』を使ったサーバー企画「ストグラ」に参加していてゲーム慣れしていた鈴木ノリアキとファン太などが加わり、自身のプロフィールをもじったギャング「お肉の国」を結成した。

 ゲーム強者かつ大物が揃ったギャングの長となったことや、連日に渡る長時間配信で徐々に疲れが蓄積していたこともあり、ここでもかるびは何度となく珍プレイをみせ、ギャングメンバー及びリスナーを笑いの渦に巻き込んだ。

 もはや笑いの神が彼女の後ろにたっているのではないか? と思えるような場面も多く、彼女の周りにはいつもハプニング・事件がつきまとっていたことがアリアリと見えてくる。

 こういったこともあり、彼女は期間中普段の配信よりも倍近い視聴者数を集めることになり、12月2週・3週において「Twitchにおいて最も視聴された女性ストリーマー」となったのだ。

 一時の炎上騒動や失態からマナーやモラルを身につけ、ジョークや笑いを生み出すVTuber~バーチャルタレントとして成長し、いまや「いま最も旬なVTuber」と呼べるまでに飛躍した赤見かるび。

 過去に交流した相手からは「過去にあったイベントで炎上していた」「ちょっとしたタイミングで関わった時に危うそうだった」という負のイメージを強く持たれてしまい、「用心深く接しようと距離を取っていた」と、警戒を直接口にされることもあった。

 トラブルを起こした際、彼女はしんじとの会話のなかで「面白ければいいっていうけど、面白いってなんだ?」という風に切りかえしていた。そこからしばらく経ち、いまの彼女はうまく言葉にできなくても「なにがリスナーにとって面白いのか?」ということを体感でわかっているのかもしれない。

 彼女がどのような形で“2024年の台風”となるのか、いまから楽しみである。

ネオポルテから登場した新星 「つるび」の「つる」こと柊ツルギ 

 続いては、『VCR GTA2』でそんな赤身かるびに負けず劣らずの珍プレイ、迷プレイを見せたルーキーを紹介したい。

 Neo-Porte所属の男性タレント・柊ツルギである。

 2023年8月29日にSNSに初投稿、2023年9月4日にYouTubeで初配信、9月11日にはTwitchで初配信し、無事に活動をスタートさせたばかり、デビューしたてのタレントだ。

 彼の名前が最初に注目されたのは、デビューしてすぐの11月に開催された『VTuber最協決定戦2023 Ver VALORANT Act1』であろう。

 この大会ではリーダー8人によるドラフト制を採用しており、主催者・渋谷ハルを中心にした選考によって独自に決められたランク内にいる出場者を指名し、5人チームを組んで大会に臨むという内容であった。

 ここで選ばれたリーダー8人は、これまでの配信活動を通じて実力を示してきた『VALORANT』上級者/FPSプレイヤーばかり。にじさんじからはローレン・イロアス/風楽奏斗、ぶいすぽっ!からは花芽なずな/八雲べに/白波らむね/夢野あかりNeo-Porteから水無瀬/久我レオが選ばれ、ゲーム内ランクでいえば平均してイモータル、最高でレディアントという超ハイレベルな面々が揃ったのだ。

 渋谷ハルが大会メンバーを発表した際には、「Neo-Porteの新人は入らないのか?」というコメントがいくつかあがっていた。というのも、柊ツルギ(及び同期である青桐エイトの2人)は『VALORANT』のランクがイモータル~アセンダントに到達している実力者であり、Neo-Porte所属ということでこの大会に呼ばれていても不思議ではなかった。

 そんなコメント・期待に対して、渋谷ハルはこのように返している。

「実力的にはたぶん、Neo-Porteの新人2人・ツルギ君とエイト君はTier1に入れるくらいにはめちゃくちゃ強いんだけど、デビューしたばかりでイベントに出て、リーダーとしてチームをまとめてくれっていうのは、いくらヴァロが上手いからといってもちょっと重い」

 こういった判断もあり、残念ながら同大会に出場することは叶わなかった柊ツルギ。だが、直前に開催されていた第6回・第7回『Crazy Raccoon Cup Valorant』なども含め、スクリム・練習相手のメンバーとして呼ばれるように。

 また両大会が連なって開催することもあり、出場者の何人かは早い段階から『VALORANT』をプレイして勘を取り戻そうとしていた。そういったタレントとコラボ配信を組み、ランクマッチをプレイすることもあった。

 また、ツルギはほぼ同時期にソロプレイでのイモータル達成にチャレンジしており、かなりプレイングにキレがあったのはいうまでもない。

 同時に、彼のおちゃらけた発言はそれ以上の“キレ”を見せていたのだ。

 とくにぶいすぽっ!所属の橘ひなの/一ノ瀬うるはを含めて、軒並み活動歴4年目から5年目を迎えている面々と配信していた際には、会話の弾みとして他事務所の先輩であるひなの/うるはの2人を「お局さん」と呼んでみたり、休憩する時間があったのにも関わらず、マッチが始まってから「すいません! トイレ行ってきます!」とトイレにいくなど、自由奔放な言動をみせつけ、大いにリスナー・コラボ相手を笑わせた。

 相手からの返事を待たずに次から次へと速射砲のように言葉を発し、ようやく会話になったかと思いきや斜め上な切り返しをして笑いを誘うなど、テンションの高さだけでなくトークセンス/ポテンシャルがしっかりと垣間見えていたのだ。

 そんななかで参加した『VCR GTA2』で、彼はより注目をあびることになった。

■新人タレントながらトップオブザトップに負けない活躍を果たした柊ツルギ

 キッカケは、赤見かるびがボスを務め、SHAKA/葛葉らと結成していたギャング「お肉の組」にひょんなことから柊ツルギもメンバーとして加わったことにある。

 FPSのプロとしてキャリアを積み日本を代表する人気ストリーマーとなったSHAKA、男性VTuberイチの人気者である葛葉、そこにこの企画で人気を集めることになる赤見かるび……他の面々も長く活動してきたベテランメンバーが揃っており、文字通り“大先輩”たちの中に入ることになった。

 そんな状況に置かれれば、誰であれ緊張しないわけがない。

 ファーストコンタクトの時点で「肩にかかる重力が半端ない」と口にしていたが、その後正式にギャングメンバーとなると、先輩たちからは「オモロイ反応をしてくれる後輩」としてイジられ続けることになる。

 緊張のせいか、はたまた初めてプレイするゲームだからか、緊迫した状況やミッション途中で先輩や視聴者すら予想してなかった珍プレイを披露するツルギ

 ボスである赤見かるびがそういったプレイをすることは想定済みだったギャングメンバーたち。だがそこに、この後輩も加わっていくとは。「まさかお前もなのか……」というノリや温度感も相まって、「つるび(かるび+ツルギ)」と呼ばれることもあったほどだ。

 人気ストリーマー・VTuberが集まったこともあり、さまざまな角度からボケを生み出していくツルギのキャラクターは自然と浸透。それまでの同時視聴者数から大きく伸びることになり、認知度を高めることになった。

 ストリーマーサーバー企画に今回初めて参加した柊ツルギ。当然初対面である先輩たちと会話し、ともにゲームをプレイ/面白い配信を作り上げることが求められる、しかも数万人以上の視聴者が見ている前で……。デビューして数ヶ月の新人タレントの身に降りかかるミッションとしては、トップレベルに難しいものだったはず。それでも、彼は見事に役回りをこなしきったのだ。

 そんなツルギの配信には、企画参加中に数千人の視聴者が集まっており、コメントが荒れてしまうことも多々あったようだ。そういったリスナーに丁寧に言葉を返すこともあれば、売り言葉に買い言葉とばかりに「お前らこの場所経験してみぃ!!」と黙らせたこともある。

 自分を知らないリスナーからも注目される場所に参加すれば、普段の配信よりも多く視聴者が集まり、その分だけ心ないコメントや強い言葉が届くことがある。

 見てくれるリスナーから受ける膨大なまでの期待やプレッシャーは、柊ツルギにとって本来もう少し先に経験するモノであったはず。それをデビューしてわずか数ヶ月で一足飛びに経験できたことは、彼にとって代えがたいものになったであろう。

 その後、彼は『GTA5』を使った「ストグラ」サーバーにも参加しており、彼らしいボケ盛り盛りなスタイルで面白シーンを作っていこうとしているようだ。

 2024年に入り、ここから彼の活動も本格的になるはず。得意のFPSゲームで本来の自分をみてもらうか、それとも多くの人と絡んで面白さを差し込んでいく自分をみてもらうか、それとも……彼の行く末に注目しよう。

(文=草野虹)

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