ゴジラをはじめレジェンド級の怪獣たちのバトルを描く “モンスター・ヴァース”の初ドラマシリーズ「モナークレガシー・オブ・モンスターズ」がApple TV+で配信中だ。『GODZILLA ゴジラ』(14)で渡辺謙演じる芹沢博士が所属していた秘密機関モナークを中心に展開する本作は、『GODZILLA ゴジラ』直後の世界(2015年)とモナークが設立されて間もない1950年代、2つの時代をつなぐ物語。謎の大怪獣(タイタン)を追い求めるモナーク初期メンバーの冒険と、モナークの謎を追う現在の若者たちの活躍がスリリングに描かれる。

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本作の配信にあたり、第1話と2話の監督であるマット・シャックマン、製作トップのクリス・ブラック、脚本家マット・フラクションと中核メンバーにインタビュー!エグゼクティブプロデューサーも務める3人が、シリーズに込めた想いやゴジラ愛を熱く語ってもらった。

■「魅力的な怪獣を生み出す作業は、フランケンシュタイン博士になった気分でした」(ブラック)

――モンスター・ヴァースのスピンオフとしてモナークチョイスした経緯を教えてください。

ブラック「モンスター・ヴァースをベースとしたドラマシリーズを作ることになった時、映画をスケールダウンした作品にはしたくなかったんです。シリーズならではの壮大な物語を動かすのは、魅力的なキャラクターです。人間たちの物語を展開させるためにモナークを登場させることにしました」

フラクション「モンスター・ヴァースと同じ世界の物語ですが、私たちは視点を変えることにしたんです。これまでの映画では主人公たちはモナークという組織を外側から見てきました。モナークの人間たちが何者でどこから来たのか、そもそも敵か味方かさえもよくわかりません。そんな視点を180度切り替えることで、同じ世界に存在する別の物語にできました」

シャックマン「この視点によって、ファンたちはパズルのピースを埋めるようにこの世界を楽しめるし、初めて見る人はシリーズを通してモンスター・ヴァースを知ることができるんです」

――ゴジラや『キングコング:髑髏島の巨神(17)のバンブースパイダーのほか、カニ怪獣マントクローなど新怪獣も登場しています。シリーズのオリジナル怪獣はどのように生みだされたのでしょうか?

フラクション「製作にあたり、ファーストシーズンではゴジラを出すことだけは決まっていました。『GODZILLA ゴジラ』で描かれたサンフランシスコの惨劇(=G-DAY)が、主人公の1人であるケイトトラウマになっているからです。ゴジラ以外の怪獣たちは、人間たちの物語のなかでどう絡ませたら効果的かという視点から探っていきました」

ブラック「物語が進むにつれ、シチュエーションごとに怪獣のアイデアが沸いてきて、『これはどうだろう、あれはどうだろう』とおもちゃで遊ぶ子どものような感覚でした。怪獣たちのデザインは、モンスター・ヴァース内での生物学がベースです。レジェンダリーのフランチャイズ開発担当バーナビー・レッグたちの協力のもと、実在する生き物の要素を掛け合わせるという『ドクター・モローの島』(77)スタイル。最高にクールで、不気味で恐ろしい、魅力的な怪獣を生み出す作業は、フランケンシュタイン博士になった気分でしたね」

シャックマン「シリーズの視覚効果を監修しているショーン・コンラッド(『ゴジラキング・オブ・モンスターズ』の視覚効果監修)たちと、ほかの怪獣たちと調和するか、この怪獣が好きになれるかなど検討ながら形にしていくのが基本的なプロセスです。スクリーンに登場した怪獣たちの仲間を作る作業は、本当にすばらしい体験でした」

■「無二の作品だと感じたのは『シン・ゴジラ』」(シャックマン)

――みなさんのゴジラとの出会いを教えてください。

フラクション「幼いころ、土曜の午後になるとリビングのカーペットに座ってテレビで怪獣映画を観ていたものです。最初に観た作品がなんだったのかはわかりません。私にとってゴジラは常にそばにいる存在で、ポップカルチャーの一部だったからです」

ブラック「ゴジラには、力強さ、興奮、ワクワク感、恐怖、すべてが混ぜ合わさった感情が味わえます。大人になって世界に対する見方が変わっても、怪獣映画はこれらの感情を詰め込める枠組みとして心に残るのです。これからもゴジラ映画を通し、それは繰り返されていくでしょう。怪獣映画を観て育った私にとってなにより嬉しいのは、親になったいま自分の子どもたちを怪獣たちの世界に連れて行くことができたことですね」

シャックマン「私がゴジラを好きになったのは5歳ごろで、子ども時代の一番幸せな思い出は父とソファーに座って『怪獣王ゴジラ』(『ゴジラ』を再編集した海外版)を観たことです。ゴジラは長年にわたって何本も作られてきましたが、『ゴジラ-1.0』までどのゴジラ映画にも強い感銘を受けてきました。なかでも無二の作品だと感じたのが『シン・ゴジラ』です。政府が危機に立ち向かう様子が緻密に描かれ、何層にもわたって物語が展開していきます。映像的にも、進化をした独創性もすばらしいですね。ゴジラというキャラクターをどう捉えどう表現するか、その方法論が工夫され続けているからこそ、ゴジラはいつの時代にも感動を与えてくれるのです」

――ゴジラが誕生して70年が経ちました。時代を超え多くの人々を引きつけている魅力はなんだと思いますか?

シャックマン「ゴジラは私たちが理解しきれないミステリアスな存在で、心躍る体験を与えてくれます。これは私が映画に求めるもっとも大切な要素です。ゴジラは善でも悪でもなく、守護者であり破壊者でもあります。最初の『ゴジラ』が誕生後、映画製作者たちは何世代にもわたってゴジラメタファーに使うことで、自身の世界を見つめ様々な問題に目を向けてきました。私たちのシリーズは単に怪獣スペクタクルがあるヒューマンドラマではありません。怪獣たちが人間たちの物語に深く関わり、登場人物に影響を及ぼし続けるのです」

■「ゴジラジェームズ・ボンドのような存在です」(フラクション)

――ゴジラ映画に登場した怪獣のなかでお気に入りを教えてください。

ブラック「ゴジラは別格で、という前提で『ゴジラvsデストロイア』のデストロイアです。わりと最近の怪獣ですが、両肩から生えたクリスタルのような結晶体などデザインや、悪のゴジラのような見た目も大好きです。私の家にはコツコツ集めたデストロイアのグッズがたくさんありますよ(笑)」

シャックマン「つまらない答えになってしまいますが、やっぱりゴジラですね。怪獣の元祖であり、彼こそがシリーズの主役だからです。最近の作品では『シン・ゴジラ』のゴジラがとても好きです。映画のなかでゴジラが進化することで形態が変化していくのですが、そのデザインが挑戦的ですばらしいんです。あとはラドンもお気に入りです」

ブラック「ラドンといえば『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の炎はかっこよかったですね」

フラクション「やっぱり私もゴジラですね。子どものころに観た初期作品から『シン・ゴジラ』まで様々なゴジラを何度も繰り返し観てきましたが、ゴム製のスーツに人が入っているなんて思ったことは一度もありません。ゴジラジェームズ・ボンドのような存在です。たくさんの俳優がボンドを演じてきましたが、ボンドは1人のキャラクターなのです」

シャックマン「つまりゴジラは永遠に生き続けるわけですね」

ブラック「日本の東宝に行った時、歴代ゴジラを演じた中島春雄さん、薩摩剣八郎さん、喜多川務さんが並んだ写真を見ました。3人ともスーツを着ないで歩いている写真なんですが、彼らの演じたゴジラがよくわかる写真でした」

フラクション「東京で一番印象に残っているのが、東宝スタジオの前で写真を撮ったことです。スタジオの前にゴジラのブロンズ像が置かれているのは知っていたので、僕らは絶対に写真を撮ろうと決めていたんです。まさしく聖地巡礼でした」

■「東京でゴジラから避難するシーンを撮れたことが思い出深いです」(シャックマン)

――「モナークレガシー・オブ・モンスターズ」にはみなさんのゴジラ愛が込められている、ということですね。

シャックマン「私は東宝のゴジラ映画が大好きで、子どものころにプラスチック製のゴジラの人形で遊んでいました。手が飛び出したり頭の後ろを押すと口から舌のような小さな炎が飛び出したりする仕掛けがあるものです。手をなくしてしまいましたが、まだその人形を大切にしています。映画製作者としてゴジラを現実のものにしているのは夢のようであり、巨大な遊び場で遊んでいるようでもあり、とにかく信じられないような想いです」

フラクション「私も同じで、このシリーズに参加してゴジラで遊んだ子どものころと同じ喜びを感じています。製作に関して東宝もレジェンダリーも寛大で、『おもちゃを貸してあげるから、これで遊んでいいよ。ただし壊さないようにね』と言ってもらったような感じです(笑)。自分がゴジラに携わっていることが、まだ信じられないような気持ちもあります」

ブラック「いまは自分の子どもたちにゴジラ映画を見せる立場になり、彼らが興奮したり、枕を並べて作った建物をゴジラになったつもりで壊して遊んでいるのを眺めています。ゴジラ映画が作り続けられポップカルチャーのなかに存在し続けることで、こういう喜びがずっと続いていくんです」

シャックマン「今回の撮影で思い出深いのは、東京に訪れて人々がゴジラから避難するシーンを撮れたことですね。東京で映画を撮影することは私が死ぬまでにやりたいことの一つだったので、それが実現できてうれしかったし夢のような瞬間でした。いまもモンスター・ヴァースとしてすばらしい怪獣映画が製作されています。ゴジラは生き続け、これからも魅力的なキャラクターとして愛され続けていくと思います」

フラクション「私もそう願います。昨日も少しマットと話をしていたんですが、新しい世代の視聴者には、『モナーク』で初めてゴジラや怪獣に触れる人もいるはずです。それに気づいた時、責任の重さに少し身がすくむ想いがしました」

ブラック「身が引き締まりますね」

フラクション「歴史ある怪獣映画のレガシーを正しく引き継ぎ、その重責を果たしていきたいと思っています」

取材・文/神武団四郎

「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」の製作陣3人にインタビュー!/画像提供 Apple TV+/映像提供 Apple TV+