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 自分の部屋や学校の教室、あるいはオフィスの様子など、私たちは普段生活している場の風景を細かいところまで鮮明に思い出すことができる。

 だが脳はそうした知覚情報をどのように記憶しているのだろうか?

 このほど発表された研究では、脳の知覚領域と記憶領域との間で情報のやり取りをするために使われる、符号化メカニズムが明らかにされている。

 それによると、情報をやり取りする知覚領域と記憶領域は、お互いに対立しながらも連携するという、不思議な協力関係にあるようだ。

【画像】  これまでの説では、脳の知覚を司る領域(知覚系)は、目で見た世界を”ありのまま”に表現するとされてきた。つまり、光が網膜に入ってくると、視覚野はその刺激に素直に反応して外の世界を描き出そうとする。 一方、脳の記憶を司る領域(記憶系)は、それとは対照的と考えられている。つまり、記憶系は目で見た物理世界を素直に覚えようとはしない。世界の細かい様子は省略され、かなり抽象的な形に変換されたうえで保存される。 ところが今回の研究チームによるなら、そのような説は、脳が情報を変換して記憶したり、思い出したりするとき、知覚系と記憶系とで何らかの共通のメカニズムがある可能性を見落としているという。 ダートマス大学のアダム・スティール氏の解説によるなら、それはいわば「写真のネガ」のようなものだ。脳は世界をネガとして記号化し、それを使って知覚系と記憶系と間で情報をやり取りしていると考えられるという。photo by iStock対立しながらも連携する知覚系と記憶系 『Nature Neuroscience』(2024年1月2日付)に掲載された研究は、磁気共鳴機能画像法(fMRI)でそうした脳の働きを観察したものだ。 その結果、脳内の知覚系と記憶系は、お互いに対立しながら連動するという、興味深いメカニズムで働いていることがわかったという。 たとえば、光が網膜に入ってくると、脳の視覚野が活発になり、その光のパターンから世界を描き出そうとする。このとき記憶系も光に反応するのだが、視覚系とは逆にむしろ活動が少なくなるのだ。 つまり目で何かを見るとき、視覚野はその情報を処理するために大忙しだが、記憶系はヒマそうにしている。 ところが、目で見た風景の記憶を思い出そうとすると、それが逆転する。目を閉じて風景を思い出そうとすれば、今度は記憶系が大忙しになり、知覚系の働きは抑えられる。photo by iStock認知症を治療するヒントにつながる可能性 今回の研究が示しているのは、脳が目で見た情報を思い出したり、注意を逸らしたりするとき、記憶系が視覚の共有情報をどのように利用しているのかということだ。 研究チームは今後、こうした知覚系と記憶系のつな引きのような相互作用が、アルツハイマー病などの脳の病気を治すヒントにならないかどうか探っていく予定であるそうだ。References:Researchers identify new coding mechanism tha | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

 
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知覚から得た情報を脳に伝達して記憶する符号化メカニズムを解明