一度見たら忘れられない魔道士ピンヘッドの衝撃的なビジュアルでカルト的人気を博し、1987年から現在にいたるまで10作の続編や関連作が生みだされてきたホラーシリーズ「ヘルレイザー」。その原点となった第1作が『ヘル・レイザー 4K デジタルリマスター版』(公開中)としてスクリーンに復活を果たし、さらに続編3作品も2024年1月12日(金)より一挙に上映。そこで本稿では、新たに到着した続編3作品の場面写真と共にこの「ヘルレイザー」シリーズをおさらいしていこう。

【写真を見る】イギリス、ニューヨーク、そして宇宙へ。“地獄”はどこまでも拡大しつづける(画像は『ヘルレイザー2:ヘルバウンド』より)

■すべては“パズルボックス”から始まる…1980年代後半に現れた幻想ホラーの金字塔

イギリスの幻想ホラー小説家クライヴ・バーカーが、自身の小説「ヘルバウンド・ハート」を自らの手で映画化した『ヘル・レイザー』(87)から始まった本シリーズ。街で謎のパズルボックスを手に入れたフランク(ショーンチャップマン)は、そのパズルを組み合わせた瞬間に魔道士たちによって八つ裂きにされてしまう。それからしばらく経ち、フランクの住んでいた家には弟のラリー(アンドリューロビンソン)とその妻子が引っ越してくることから物語は始まる。

ラリーの先妻との娘であるカースティ(アシュレイ・ローレンス)は、継母であるジュリア(クレア・ヒギンズ)が家に男たちを連れ込んでいることに気が付く。実はジュリアはかつてフランクと愛人関係にあり、失われたフランクの肉体を男たちの血肉を捧げることで復活させようと目論んでいたのだ。パズルボックスを奪って逃げだすカースティ。しかしパズルを解いた瞬間に彼女の目の前に魔道士たちが出現することに。

およそ100万ドルで製作され、北米だけで1450万ドルを超える興収を記録したこの『ヘル・レイザー』は、批評家の間でも賛否両論を巻き起こすなど話題沸騰。すぐ翌年に続編となる『ヘルレイザー2:ヘルバウンド』(88)が製作され、バーカーは原作と製作総指揮として参加。1作目に編集スタッフとして携わったトニー・ランデルがメガホンをとり、魔道士たちから逃れることに成功して精神科病院に入院したカースティに再び訪れる惨劇が描かれていく。

パズルボックスを研究していた病院の院長のチャナード(ケネス・クラナム)は事件現場のマットレスを入手し、病院の患者たちを生贄にしてジュリアを復活させてしまう。さらにチャナードは、謎の美少女ティファニー(イモゲン・ボアマン)を使って魔道士たちを呼びだそうと画策。再び魔界への扉が開かれることとなり、異次元へと足を踏み入れたカースティの前に魔道士たちと地獄の王リバイアサンが現れることとなる。

■“地獄”はニューヨークから宇宙へと拡大!

シリーズ3作目『ヘルレイザー3:ヘル・オン・アース』(92)では、物語の舞台がアメリカのニューヨークへと移る。これまでイギリスで製作されてきた本シリーズは、ここからアメリカ資本となりバーカーは引き続き原作・製作総指揮としてクレジットされ、前作に続いてピーター・アトキンスが脚本を担当。『ワックス・ワーク』(88)のアンソニー・ヒコックス監督がメガホンをとり、後に様々な傑作ジャンル映画を輩出するディメンション・フィルムの第1回作品となった。

新人テレビレポーターのジョーイ(テリー・ファレル)は、救急病院での取材の最中に全身に食い込んだ鎖によって身体が引き裂かれていく男性の姿を目撃。独自の調査を開始した彼は、かつてのカースティの事件にたどり着くことになる。一方、ナイトクラブ“ボイラー・ルーム”のオーナーであるJ.P.(ケヴィン・バーンハート)はギャラリーで不気味なブロンズを手に入れ、ふとしたことでそこに封印されていたピンヘッドを目覚めさせてしまう。そしてピンヘッドが“ボイラー・ルーム”の客たちを次々と虐殺していくなか、その現場にジョーイが駆けつけるのだ。

作品を重ねるごとに徐々にスケールアップしていった「ヘルレイザー」シリーズは、4作目の『ヘルレイザー4:ブラッドライン』でついに宇宙へと飛びだす。引き続き原作・製作総指揮にバーカー、脚本にアトキンスが携わった同作は、編集上のトラブルによって監督が降板となり、“アラン・スミシー”名義になった曰く付きの作品としても知られている。

2127年、宇宙ステーション“ミノス”で、ポール・マーチャント(ブルース・ラムゼイ)博士はロボットアームを操作してパズルボックスを解き、ピンヘッドを呼び出す。しかしすぐに宇宙警備隊に拘束された彼は、代々魔道士との戦いを続けてきた自分の血脈とパズルボックスの歴史を語り始める。そして明かされるパズルボックスの誕生の秘話と、時空を超えて展開する地獄。新キャラクターのアンジェリーク(ヴァレンティナヴァルガス)も登場し、壮大な物語が展開していく。

その後も、『ドクター・ストレンジ』(16)のスコット・デリクソン監督が手掛けた『ヘルレイザー ゲート・オブ・インフェルノ』(00)や、カースティがカムバックを果たした『ヘルレイザー リターン・オブ・ナイトメア』(02)などシリーズが増えていくのに比例して熱狂的なファンが増加。近年では企画開発から10年以上の歳月をかけたリブート版『ヘル・レイザー』(22)が実現し、ドラマシリーズ化も報じられるなど人気が再燃。

なかでもシリーズの人気を確立した初期4作品を一気に劇場で目撃できるのは前代未聞の出来事。是非とも2024年の幕開けは、新年のめでたい空気を一蹴する“地獄”に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

「ヘルレイザー」2作目から4作目までの場面写真が大量に解禁!/[c] 2019 VINE LSE INTERNATIONAL IV, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.