テレビシリーズ、劇場版に続く新作として制作&公開が発表された『劇場版 魔法少女まどか☆マギカワルプルギスの廻天〉』(2024年冬公開)。大ヒット作の正統続編として、再び主人公のまどかたち魔法少女の物語が見られるとあって期待も高まっている。今回はテレビシリーズと『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(13)のストーリーを振り返り、改めて衝撃の連続だったシリーズを再確認してみたい。新作に備えて作品世界のおさらいをしておこう!

【写真を見る】まどかを救うため、“悪魔”というべき存在となり世界を再構築したほむら

■願いを叶える代わりに、魔女と戦うことになった魔法少女たち

魔法少女まどか☆マギカ」は2011年に放送されたオリジナルテレビアニメ。主人公の中学生、鹿目(かなめ)まどか(声:悠木碧)が魔法少女と敵対する魔女の存在を知り、魔法少女になるのと引き換えに叶えてもらえる願い=希望について考えるストーリーが描かれていく。

まどかはごく普通の中学生で、少し気が弱い一面があるものの素直で優しく、家族や友だちを大切にする姿が主人公らしく、魔法少女が持つべき強さや正義感を感じさせる少女だ。

まどかの通う中学校に転校してくるミステリアスな少女、暁美(あけみ)ほむら(声:斎藤千和)や魔法少女としての経験も豊富な先輩の巴マミ(声:水橋かおり)、親友の美樹さやか(声:喜多村英梨)、隣町の魔法少女佐倉杏子(声:野中藍)など多彩なキャラクターが登場し、様々な形でまどかの選択に関わっていく。

忘れてはならないのがキュゥべえ(声:加藤英美里)の存在だ。「僕と契約して魔法少女になってよ」とまどかたちの前に現れ、契約と引き換えに変身するためのアイテム、ソウルジェムを渡し、魔法少女としてのルールを教えてくれるのが彼(?)の役割だった。

■かわいいのに残酷…。魔法少女たちのたどる過酷な運命

蒼樹うめ原案によるかわいらしいキャラクターも「魔法少女」を冠するにふさわしいビジュアルとなっている本作だが、“鬱展開”でも知られる虚淵玄の脚本が、やはり見事にその期待を裏切っていく。

魔法少女たちが魔女に立ち向かうファンタジーかと思いきや、まどからを指導していく存在に思えたマミが物語序盤で魔女に無惨に食い殺されるなど、ショッキングな描写が話題に。また、ストーリーが進むにつれて、魔法少女の末路が「ソウルジェムが濁り、魔女となってしまう」ことだと知らされる。その真実は、作中の少女たちと同じように視聴者にも衝撃を与えた。

自分が異質な存在に変化してしまったことや、無謀な戦いを続けるなかで想いを寄せていた幼なじみを友人に奪われる形となったさやかもまた大きな絶望を味わい、魔女となってしまう。一方、まどかキュゥべえと契約させないよう立ち回ってきたほむらの思惑も明らかになる。彼女は、まもなく街にやって来るという強大な魔女「ワルプルギスの夜」との戦いによって死んでしまったまどかを救うために、自身の魔法で何度も同じ時間をやり直していたのだ。

まどかほむらやマミ、さやかによってキュゥべえとの契約のタイミングを先延ばしにしており、最終話まで魔法少女にならなかった。変身ヒロインもので主人公が魔法少女にならないというのも驚きだが、まどかキュゥべえに願ったのは「すべての魔女を生まれる前に消し去ること」だった。

宇宙の摂理にも反するこの願いを叶えられたまどかは「鹿目まどか」としての存在を失い、すべての魔法少女が魔女にならないように導く“円環の理”になったことで、テレビシリーズは幕を下ろす。

■平和で理想的な魔法少女たちの日々に生まれる違和感

テレビシリーズを二部作で再編集した『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語』(12)と『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 後編 永遠の物語』(12)に続く劇場作品として製作された『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』は、まどか円環の理となり魔法少女の悲劇に終止符を打ったテレビシリーズ最終話の続編という位置付けだ。

ところが、まどかのクラスにほむら転校生としてやって来るなど、テレビシリーズと既視感のある展開に。ただ、彼女たちはすでに魔法少女であり、マミやさやか、杏子らと共に、ナイトメアと呼ばれる敵を倒す任務に当たっていた。

ファンタジックな魔法を駆使し、ナイトメアを倒す可憐な少女たち。いかにも理想的な魔法少女の世界に見えるが、どうも違和感が拭えない。人間ではなくなったはずのまどかが存在し、当たり前のように魔法少女として活躍している。隣町にいたはずの杏子がなぜ同じ中学校に在籍しているのか、なぜマミは自身を殺したはずの魔女と共にいるのか…?

ほむらもこの違和感に気づき、ついにその真相にたどり着く。この世界は現実ではない―。

■すべてはまどかを救うため…。ほむらによって新たに再構築された世界

実はこの世界はほむらによって創られた“偽りの世界”だった。魔女化しつつあった彼女は結界のなかに閉じこもり、円環の理を観測しようとするキュゥべえに利用されていたのだ。すべてを悟ったほむらは、円環の理に導かれず魔女になることを受け入れようとするが、さやかたちが助けに現れる。

そして、ほむらを導くために円環の理まどかも登場する。まさに浄化されようとしたその瞬間、怪しい笑みを浮かべ、差し伸べられたまどかの腕をつかむほむら。「まどかを救うこと」を望む彼女は、まどかから人間の記憶を引き抜くことで円環の理としての概念を引き裂き、新たな世界を構築してしまう。ほむらは魔女をも超越した、もはや“悪魔”ともいうべき存在となったのだ。

まどかに対するほむらの“愛”によって創られ、違和感を抱えながらも表面的には平和に回転している新たな世界を映しながら、本作の幕は閉じられた。

2024年冬に公開が予定されている『劇場版 魔法少女まどか☆マギカワルプルギスの廻天〉』はどのような物語になっているのだろうか。まどかほむらは救われるのか、また呪いを育ててゆくのか。先の読めない展開から目を離せそうにない。

文/藤堂真衣

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』に向けて、これまでのストーリーと衝撃展開をプレイバック!/[c]Magica Quartet/Aniplex,WR