10人兄弟、12人家族のなかで育ったお笑いコンビ・LLRの伊藤智博。にぎやかな暮らしを送ってきた彼が、自身の半生を振り返りながら大家族ならではのエピソードを綴る連載っ!


兄弟随一の不思議な存在、6歳上の兄・ピーター

大家族をやっていると、たまに冗談半分で「そんなにいるんだったら、ひとりくらい増えても気付かないんじゃない?」なんて言われることがあるんですが、もちろんそんなことはありません。知らない人がいきなり家にいたら気づきます。

ただ、逆にひとり減ってたら、気づかないパターンはあったりします。細かいことはあまり覚えてないんですけど、小学生くらいの頃のある日、家の中で6歳上の兄(3番目・次男、通称“ピーター”)の姿を見かけたとき、「あれ? そういえばここ最近、ピーターの姿見てなかったかも……」と思った記憶があります。普通だったらそこで「どっか行ってたの?」とか聞くと思うんですが、もともとの僕の性格なのか、それとも大家族で育ったことによるほかの兄弟にあまり干渉しない性質なのかはわかりませんが、詳しい話はなにも聞かなかったです。

そのピーターですが、子どもの頃から今に至るまでずっと男前で、中学生の頃のバレンタインには母が「今日はピーターがチョコたくさん持って帰ってくるからお腹空かしときな!」などと言ってたくらいモテてたらしいです。僕も含め男兄弟はみんな歳を取るにつれてふくよかになっていってるのに、ピーターだけは体型がずっと変わらないです。あと、ピーターはどこかから落ちて頭をケガしたり、ダンプカーに轢かれて入院したりと、ケガの多い人だったという話も聞いたことがあります。今回は、そんなピーターのお話をしたいと思います。

うしろがピーターです

イケイケの先輩も恐れる(!?)ピーターにまつわる伝説が続々……

僕が中学1年生のとき、サッカー部のOBにアユハくんという3歳年上の先輩がいました。アユハくんは髪を茶色に染めていて、顔は当時のいしだ壱成さんみたいに男前で、僕らが学校指定の紺色のダサめのジャージで練習してるなか、当時は珍しい派手な蛍光色のジャージで僕らの練習に混ざっていました。サッカーもとても上手でしたし、噂によるとケンカもだいぶ強いとのことで、男子中学生からしたらすべてを兼ね備えた人でした。

そんなアユハくんが、あるとき少し険しい顔をしながら僕のところに近付いてきました。アユハくんとはそれまであまり喋ったことなかったし、「なにか怒られるようにことしたかな」とビクビクしている僕に、アユハくんは「おまえ、◯◯くん(ピーターの本名)の弟って本当?」と聞きました。僕が戸惑いながら「はい」と答えると、アユハくんは少し驚いた顔をしたあとすぐに表情を引き締めて、僕の耳元で「お前の兄ちゃん、ヤバい人だよ。俺らのなかで伝説になってるよ」と言って去っていきました。ピーターはアユハくんの高校のOBだったみたいで、そこからアユハくんは僕に優しく接してくれるようになった気がします。どんな伝説だったのかは結局聞いてないです。すみません。

こういう話を聞くと、ピーターはクールな人っていうイメージを持つかもしれませんけど、ピーターはコミュニケーション能力が抜群でした。これも噂なんですが、子どもの頃のピーター所ジョージさんのファンで、当時所沢にあった所さんの家まで会いに行って、所さんは不在でしたけど、奥さまからお土産にお菓子をもらったことがあるらしいです。

コミュニケーション能力抜群の兄が持つ驚きの交友関係

それから、なんと言ってもピーターはあの『ゲゲゲの鬼太郎』でお馴染みの水木しげる先生と友達だったんです! よく仕事場に遊びに行ったりして、水木しげる先生から可愛がってもらっていたとのことです。

あるとき、ピーターが僕に2枚の色紙を見せてきました。1枚はカラーで描かれた『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくるキャラクターたちの絵、もう1枚は色なしの『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターたちの絵でした。その2枚を見せながら「どっちがうまい?」と聞かれたのですが、僕から見たらどっちも同じくらいに見えて、迷いに迷ったあげく、色の付いてるほうを選ぶと、「本当に? こっちは俺が描いたやつで、白黒のほうは水木さんが描いたやつだよ」と教えてくれました。

当時は作者と同じくらいの絵を描けるピーターの画力に驚いてたんですが、あとから考えると水木しげる先生が直々に描いた色紙を持ってるって、本当すごいことだなと思います。さらにもっとすごいのは、『ゲゲゲの鬼太郎』のどのシリーズの何巻かはわからないんですが、著者近影の写真に水木しげる先生とピーターのツーショットが使われてるんです! すごくないですか??

このように、ピーターは昔からとてもミステリアスなかっこいいお兄ちゃんです。ピーターの奥さんもとても良い方で、いつも気さくに話しかけてくれて、話もおもしろくてツッコミも上手で、DIYをはじめなんでも自分で作っちゃうすごい人です。そして、ピーターの息子も赤ちゃんの頃から本当に可愛くて、僕は金もないのに無理して赤ちゃん用のスニーカーを買ってプレゼントしたりしてました。その甥っ子ちゃんは先日20歳になったんですけど、家族3人と猫2匹、みんなで仲良く暮らしていて、僕からしたら理想の家庭です。

その甥っ子ちゃんですが、このあいだまだ僕が行ったことのない海外へ友達だけで旅行してきたらしいです。すごいですね。

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伊藤智博(LLR)

いとうともひろ●1979年10月16日生まれ、東京都小平市出身。12人の大家族に生まれ、自身は10人兄弟の6番目。2001年、NSC東京校(7期生)に入学し、高校の同級生で同期の福田恵悟とお笑いコンビ・LLRを結成。ツッコミを担当している。2014年にはお笑い番組『THE MANZAI』の認定漫才師に選出。YouTubeチャンネル『LLRのYouTube Factory』では、趣味の漫画について独自の視点で魅力を語る動画を定期的にアップしており、漫画をテーマにした漫才も公開している。ツーリングが趣味で、レイザーラモンRGと福田光徳(チュートリアル)を中心とした芸人仲間で結成された『RGツーリングクラブ』のメンバーとして、バイクイベントなどでも活躍中。最近では舞台の脚本も手がけるなど、活動は多岐にわたる。

『LLR伊藤の大家族に生まれて良かった!』第8回:あの超有名漫画家の友達!? 数々の伝説を持つ男前でミステリアスな兄・ピーターの話