『Up Poompat 2nd Fan Meeting in Japan "STEP UP”』
2023.11.25(Sat)ニューピアホール

11月25日(土)にニューピアホールにて、タイの人気俳優のアップ・プーンパット(以下、アップ)が、自身2度目となる日本単独ファンミーティング『Up Poompat 2nd Fan Meeting in Japan "STEP UP”』を開催。14時(第1部)、18時(第2部)の2回公演を通し、持ち前のサービス精神と優しさでファンを幸せにした、アットホームな空間をレポートする。

開演まもなく、「こんにちはー」とアップが1人で登場。ニコニコと優しい笑顔を見せ、四方にワイ(合掌してお辞儀をする、敬意を示す所作)をするアップの美しい所作に、会場からは声援に交じってため息がこぼれる。

司会・鬼頭由芽の進行で、アップの近況トークからイベントはスタート。第1部では、「毎日すごく楽しくて、仕事なんだけど友達と会っている気分だった」という近作『Step by Step』のエピソードをたっぷりと語った。本作でプロデューサー側の仕事も経験したことは、自身にとって糧になったという。

ファンから「(同作に登場するぬいぐるみ)シャーキーの声を聞かせてほしい」との要望が届いていると聞いたアップ。「まず汗を拭くね」とステージ上で汗を拭いてもらいながら、不意をついて「日本のファンの皆さんありがとう。海外から来てくれたピー(タイで年上の人を指す)たちもありがとう」と、シャーキーの声を披露。そのかわいらしさのみならず、「これで大丈夫だった?」と照れ笑いするアップの優しさに、ファンから大きな声援が飛んだ。

第2部では、これから本格的な撮影が始まる『My STAND-IN』についてトーク。スタンドイン(芝居などで立てる代役のこと)に関する話だというが、「あまり話すとネタバレになってしまう」とアップ。「ちょっと言い方を考えてみるね」と口唇を尖らせ、大きな瞳で空を見つめて考える。これはアップの癖なのか、イベント中にたびたび見られたシーン。1つひとつの言葉を熟考し大切にする、誠実な彼らしくもあり、キュートな場面でもあった。

アップは同作で演じるミンについて、「お金持ちのわがままなお坊ちゃま」と紹介。そして「本物(アップ)とは全く違うよ」と、笑って二度強調した。キャスティングに8ヶ月かかり、何段階ものオーディションがあったというミン役。原作ではひどい行動を見せるというが、これについて「(ミンは)そんなに悪い人ではないかも。そうした行動には、彼なりの理由があるのかも……?」と匂わせつつ、「オンエアを楽しみにしていてほしい」と結んだ。

プライベートの近況については「休日がないです(笑)。(日本語で)仕事、仕事、仕事」と笑いながら、最近はまっているゴルフの話を。本当はバスケットボールがやりたかったが、友人のライフスタイルの変化によりチームが組めなくなり、少人数でできるスポーツを、と始めたという。「自然の中にいると別世界にいるような気持ちになる」とその魅力を語り、ベストスコアは101。「日本のゴルフ場にも行ってみたいけど、もっと練習しないと」と謙遜するが、アップはこの後まもなく、ファンの前でその腕前を披露することになる。

初の日本単独ファンミーティングから1年。昨年からの変化について聞かれると「時間とともにシワも少し……」と目じりを指さして笑う。会場から「かわいいー」と声が飛ぶが、この日は「かっこいい」と言われたい気分のアップ。すかさずフェイスラインに手をあて、かっこいいポーズをとるも、そんな自分に笑ってしまう。当然、「かっこいい!」の声援は、またたく間に「かわいい」に変わった。

また12月4日(月)に29歳の誕生日を迎えることについて、「もうすぐ30歳だと思うとちょっと怖い」とアップ。20代のうちにしておきたいことを聞かれると「まじめに答えるね」と前置きし、「投資について学びたい」と、意外なようで、聡明な彼らしい回答が返ってきた。「投資について全く知らないのに、老いは刻刻と迫っている……」、「数字から逃げてきたけど、そろそろ向き合わないといけない(笑)」と、冗談を交えつつ展望を明かした。

スペシャルライブの1曲目は、甘い歌声がよく似合うミディアムポップ「Just Looking Up」。「一緒に歌ってね。難しかったらハミングでもいいよ」と声をかけ、ファンが気楽に参加できる空間を自然に作りあげる。なるべくファンの近くに行き、手を振り、ワイをするアップ。1人ひとりと、視線ではなく心まで通わせるような、優しい瞳が印象的だった。

第2部で披露したのは、おなじみのデビューシングル「Up to You」。なんとステージから降り、後方のファンのそばに歩み寄るサプライズも。会場からは自然とクラップが起こり、ファンからの「Up to You!」の掛け声に、こぼれるような笑顔を見せた。

各公演、2回ずつ設けられた撮影タイム。グッズのネイルシールを施した爪をアピールしたり、うさぎ耳のポーズをしたり、会場からは「かわいい」「น่ารัก(ナーラック=タイ語の「かわいい」)」の声が飛び交う。しかし、「あ、かっこいいの忘れてた!」と、ポケットに片手をつっこんだり、ライトを見つめて眩しそうに手をかざしたりと、慌ててかっこいいポーズを決めるアップ。飛び交う「かっこいい!」の声に満足げな表情を見せていたが、いざランウェイを歩けば、かわいいはどこへやら。その抜群のスタイルにため息がこぼれる。

この日大きな盛り上がりを見せたのは、パターゴルフでのホールインワンチャレンジコーナー。6球のうち1球でもホールインワンを決めれば豪華賞品が手に入り、失敗すれば罰ゲームとして「日本語で甘い決めぜりふを言う」という企画なのだが、第1部で失敗してしまい、賞品も罰ゲームも関係なく、ただただ成功させたい思いでいっぱい。とはいえ第1部の賞品「スターバックスコーヒーの日本限定ギフト」は相当ほしかったようで、賞品が入ったボックスをなでたり、賞品撤収の際には名残惜しそうに手を振ったりする場面も。罰ゲームのせりふは「君のハートをロックオン」。かっこよく言い切ったあと、恥ずかしそうに後方のスクリーンにもたれこんだ。

悔しさをばねに迎えた第2部。3球目、第1部から数えること9球目で見事ホールインワンに成功し、アップは大好物のマヨネーズの詰め合わせを獲得。喜びも束の間、罰ゲームであるはずの「愛の告白」も行うことになったのだが、「OK」と快諾し、雰囲気たっぷりに「君を食べちゃいたい」とささやいた。ここでアップ自身が、「(罰ゲームの候補に)「なんとか仔猫ちゃん」というのがあったよ」と申告。言ってしまったからには、やらなくてはならない。予定外の「こっちにおいで、仔猫ちゃん」も、照れながら披露した。墓穴を掘った形のようで、彼のサービスにも思える、思いがけないプレゼントだ。

もう1つのチャレンジ企画であるジェスチャーゲームでは、答えが分かったファンのもとにアップみずからマイクを持って向かい、正解者には手渡しでサインボールをプレゼントという大サービス企画。その分、お題は「読書をするマイケル・ジャクソン」「東京タワーに登るゴリラ」など難問ばかりなのだが、一言一句たがわず正答するファンに、演じたアップ自身も目を丸くして驚く。ファンが全問正解したことにより「(罰ゲームの)かわいいポーズの写真、撮れなくなっちゃったね」とポロリ。これも、うっかりなのか優しさなのかーー「何で僕、言っちゃったんだろう(笑)」とうなだれるも、口元に人差し指をあてた「あざとかわいいポーズ」をばっちり決めた。

アップが楽しみにしていたのは、「#UpJapanFM2023写真コンテスト」の作品紹介コーナー。この日までに多くのファンが、アップのアクリルスタンドや公式キャラクター「あぷらびくん」を様々な場所に連れていき、写真に収めた。きらきらした瞳でスクリーンを見つめ、「僕をいろんなところに連れて行ってくれているんだね」と、ファンの気持ちをうれしそうに受けとる。「ここはどこ?」「寒そうなところだね」など、1枚1枚の写真に言葉を添える。自身のアクリルスタンドと「どこでもドア」が一緒に写っている写真を見た時には、「ドアを開けたら日本に来れる?」とうれしい一言も。

事前にファンから募った質問に答えるコーナーでは、タイから参加したタイ人のファンのためにみずから質問を通訳する気配りも見せた。お気に入りのコーヒーやその飲み方を教えたり、最近知った日本の曲としてSPEEDの名前を挙げたりと、ファンからの質問だからこその貴重な答えが返ってくる。また「機嫌よくいるために心がけていること」など、いつも穏やかでニコニコしているアップにこそ聞いてみたい質問が続き、まさに「アップ・プーンパットのファンミーティング」を思わせる一幕だった。イライラしたときにはピアノでクラシックを弾き、気分転換をするというアップに、「次のファンミーティングではピアノを披露ですね」と司会者が提案すると、会場は大盛り上がり。「たくさん練習しなきゃ(笑)」と謙遜するが、実は今回のイベントではもう1曲、松原みきの「真夜中のドア〜stay with me」を日本語で披露した。シティポップの複雑な譜割りを歌い上げるために、たくさん練習を積んだのではないかと想像する。

そんな、努力家でファン思いのアップへの最後の質問。「アップにとっての幸せとは?」。「ここにいる皆さんが答えです」と、当たり前というふうに即答した。第1部で「誕生日にほしいもの」を聞かれた際にも「みなさんが健康で、また会えますように」と一言。「僕の幸せはシンプル。まわりの人が幸せでいるのを見るだけでハッピー」だと笑う。

第2部では、そんな彼の誕生日をサプライズでお祝いした。ろうそくならぬライトを、思いきり目を見開いて吹き消すユーモアを見せるアップ。誕生日のお願いごとは「言ったら実現できないから」としつつも、ファンが答えを待っているのではと察し、こんなふうに明かした。「僕の周りの人が幸せになりますように。今までいろいろ大変だった人も、いいことがありますように」。そして、ファンに「みんなもだよ」とジェスチャーで伝える。誕生日だというのに、自分よりもまわりの人の幸せを願う。どこまでも愛情深い人だ。

サプライズは第1部にも。それは、アップが出演したホラー映画『HOON PAYON』が、2024年に日本公開決定というビッグニュース。予告編が始まるとともに、察したファンから悲鳴に近い歓声と拍手がわきおこる。

当の本人は「怖い怖い」とステージの隅で怯えていたが、本作は「(タイに実在する魔術)フンパヨンについて理解が深まる作品」だとアップ。さらに「僕も飛行機に乗って日本に観に来ようかな?」と、うれしい言葉も。

終演に際し、何度も「ありがとう」と繰り返すアップ。日本のファンからのメッセージをSNSで読んでいると明かし、「心が落ち込んだ日にそういったメッセージを見るとうれしくなるように、僕も皆さんを応援したい」と優しい言葉を送った。

「僕(と、あぷらびくん)を変なところにいろいろ連れていくのを忘れないでね(笑)」「おいしいものを食べるのを忘れずに」「身体に気をつけてください、また会う日のために」と、名残惜しそうに言葉を続ける。裏方で支えた2名の通訳者が紹介されると、称えるようにステージサイドに向かって両手を差し出し、退場時には、司会者に丁寧なワイをし頭を下げる。優しく手を振りながらステージを降りるアップを、ファンは心からの「ありがとう」と拍手で見送った。

まわりを幸せにしたいという、ナチュラルな心配りと優しさにあふれたアップ。常に感謝の気持ちを忘れない、そんな彼の人柄が表れた、終始あたたかな時間だった。

取材・文=新亜希子 撮影=中村 功

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アップ・プーンパット(Up Poompat )