不慮の事態で最愛の夫を失い悲嘆に暮れる62歳の未亡人が、死んだ夫から精子を採取する権利を勝ち取ったという。
オーストラリアのこの女性は昨年末に夫が亡くなった後、遺体から精子を取り出し、まだ生存可能なうちに保存してほしいという要求に、病院側が速やかに対応しなかったことから、裁判所命令を緊急申請した。
夫婦の2人の子供たちは夫が亡くなる前に亡くなっていて、夫妻はもう1人子供を望んでいたようだ。実行されるのならば年齢的に難しいので、代理母による出産になるという。
Western Australian woman to harvest sperm from dead husband
西オーストラリア州在住の匿名女性(62歳)は、昨年末に61歳の夫が亡くなった後、緊急に死亡した夫から精子を採取することを許可するよう裁判所に申請した。
夫の遺体はサー・チャールズ・ゲアードナー病院に運ばれたが、病院側は「夫の遺体から精子を取り出し、まだ生存可能なうちに保存してほしい」という女性の要求に対応できる「指定職員」を呼ばなかった。
そのため、女性は裁判所に命令を申請せざるを得なくなったのだ。
photo by iStock
夫婦は2人の子供を事故で亡くし、子供を産むことを考えていた
裁判所によると、この夫妻には2人の子どもがいたが、それぞれ別々の事故で亡くなっているという。
2013年に29歳の娘が釣り旅行中に溺死し、2019年には30歳の息子が交通事故で亡くなっており、夫婦はもう1人子供を持ちたいと常々話し合っていたそうだ。
しかし不妊治療の専門家は女性に対して年齢的に妊娠は無理だとアドバイスした。
そこで、代理出産による子供の妊娠を検討していたところ、61歳の夫が12月17日に西オーストラリアの自宅で急死してしまったのだ。
翌日の夕方、女性は最高裁に緊急の訴えを起こし、裁判所の判事はすぐにパースの死体安置所に保管されていた夫の遺体から精子組織を取り出す許可を与えた。
精子は無事取り出せたものの、代理母で出産するには他にも壁が
最高裁によって緊急申請は認められたが、受精のために精子を使用するには新たな命令が必要となる。
死後の生殖細胞の使用は、西オーストラリア州では法律違反となるため、女性は生殖技術評議会に申請して合法である他の州で精子を使用しなければならない。
また、女性は年齢的に妊娠が不可能と言われていたが、夫の精子は検査され、十分に使用可能であり、体外受精に適応できることが判明した。
フィリピンに住む20代の女性のいとこは、夫婦のために体外受精の代理出産を志願していた。
夫が死亡した時点では夫婦はまだ代理出産の法的障害と格闘中で、体外受精前にしばらくフィリピンに住む必要があった。
しかし、仕事の忙しさやパンデミック、そして女性の義母の死により、夫婦はフィリピンに引っ越す機会を逸してしまったという。
photo by iStock
死後受精の問題は賛否両論
フィオナ・シーワード判事はこの申請を認め、女性が精子を取り出すことは許可したが、それを使用することは許可しなかった。
これらの命令は、精子の取り出しを許可することに限定され、申請者が精子を使用することを許可するものではなく、また申請者がその点で法的基準を満たすことができるかどうかを検討するものでもない。(シーワード判事)
しかし裁判官は、なぜその決定がすでに病院側によって承認されていなかったのかにも疑問を呈している。
一方、生殖医療の専門家の間では、死後受精の問題についての意見が分かれている。
西オーストラリア州では現在、死後受精は認められていない。
次のステップに進み、その受精卵を使用するためには、女性はその受精卵を、その受精卵の移植を許可している他の司法管轄区に移送するよう申請しなければならない。
西オーストラリア大学のロジャー・ハート教授(生殖医療学)は、メディアの取材でこのように語っている。
これが正しいことなのかどうかが問題なのです。その判断を下すには、カウンセラーや心理学者が最適でしょう。
この女性は62歳で代理出産も予定しているため、卵子提供者を利用することになります。卵子提供者に卵子に精子を注入してもらい、その胚を代理母に移植します。また、年配の男性の精子を使うことにはリスクもあります。
高齢男性の精子は、死後精子であろうと新鮮な精子であろうと、精子内の染色体異常の欠失率が高いことがわかっています。
物議をかもしている最中のこの1件。続編が出たらお伝えしたい。
References:WA woman, 62, granted court permission to have dead husband's sperm extracted/ written by Scarlet / edited by parumo
コメント