株式投資で儲けを得るには、安いときに買い、高いときに売ることが必要ですが、「安い」「高い」はどのように判断すればよいのでしょうか。本記事では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、各種指標から株の買い時・売り時を見定める方法について解説します。

「PER」と「PBR」と「配当利回り」で見分けるのが基本

株の買い時・売り時を見定めるために、投資家が参考にすべき指標は何種類もありますが、まずは、株価の「割安さ」を示す3つの指標をみていきます。

PER(倍)=「株価÷1株当たり当期純利益(EPS)」

→株価がEPSの何倍かを示す指標。低いほど株価が割安で、一般的にはPER15倍以下で「割安」とされる。EPSは予想値を用いるのが一般的であり、利益面での割安さを表す

PBR(倍)=「株価÷1株当たり純資産(BPS)」

→株価がBPSの何倍かを示す指標。低いほど株価が割安で、一般的にはPBR1倍以下で「割安」とされる。BPSは予想値を用いるのが一般的であり、資産面での割安さを表す

配当利回り(%)=「年間1株配当金額÷株価」

→1年間で得られる配当が株価の何%に当たるかを示す指標。高いほど株価が割安で、一般的には3%以上で「割安」とされる。配当面での割安さを表す

「PER」「PBR」「配当利回り」はもっとも有名な指標であり、よほどの初心者でない限り、多くの投資家が参考にしているものです。ゆえに、まずはこれらを基本として押さえておきましょう。「PERとPBRが低く、配当利回りが高い」ということは、その会社の実態に対して株価が割安になっているという状態です。

そんな局面は、「株の買い時」と判断できるかもしれません。

自分なりのほかの指標も加えて総合的に見分ける

ただし、現時点でのEPSやBPS、配当だけでその株を「割安」と判断するのは早計かもしれません。

たとえば安定性のない会社の場合、現時点で3つの指標から割安だと判断できても、後にEPSが急減したり、赤字になってBPSが減ったり、減配したりして、結局は割高だった、ということが起こりえます。逆に、今後の成長性も考えるべきでしょう。いまは割高に思えても、今後EPSやBPSや配当金額が伸びるならば、本当は割安だと判断できる場合もあります。

このようなことはよく起こりますので、基本の3指標に加え、ほかの指標も活用しながら「安いとき」と「高いとき」を総合的に判断してみましょう。ほかの指標の例をいくつか挙げますので、参考にしてみてください。

・過去のEPSをさかのぼってその平均値を出し、現在の株価に対するPER(のようなもの)を算出する

・自己資本比率が大きければ高く評価し(その会社の価値が高いとみなし、少々株価が高くても許容する)、逆に自己資本比率が小さければ評価を下げる(その会社の価値が低いとみなし、少々株価が低くなって当然だと考える)

・過去に増配が多ければ高く評価し、減配が多ければ評価を下げる

・ROEが高い傾向にあるならば高く評価し、低い傾向にあるならば評価を下げる

どの指標をどの程度重要視して判断すればよいか

基本の3指標だけでなく、自分なりのほかの指標も加えて総合的に判断したほうがいいと書きましたが、そこで「どの指標をどの程度重要視して判断すればよいか」と、迷う人もいるかもしれません。

たとえば、「PERは低いけど、PBRが高い」「PERもPBRも低いけど、配当利回りも低い」「現時点でのPERは高いが、過去のEPSの平均値からするといまの株価は割安にみえる」など、ある指標からは割安にみえても、別のある指標からは割高にみえる、という状況ではとくに迷ってしまうでしょう。

しかし残念ながら、この問いに確たる正解はありません。最終的な判断は、投資家それぞれに委ねられた領域だからです。ただし、少なくとも「あらゆる指標から判断して安い(高い)」ときにアクションを起こすのがベストだということはいえそうです。

たとえば「安いとき」を見分けるのならば、「ある指標では安い、別の指標では高い」というのではまだはっきり安いとはいえません。しかし、「ほとんどの、またはすべての指標からみて安い」ならば「十分に安い」といえるでしょう。こういうときこそが、投資のビッグチャンスとなるのです。

「どの指標をどの程度重要視して判断すればよいか」という疑問に対する正解はありませんが、複数の指標からみて「安い」「高い」が明白ならば、その判断には自信を持ってもよいのかもしれません。

株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO

川合一啓

(※写真はイメージです/PIXTA)