2024年1月10日にスタジオ創立から記念すべき100周年を迎えたコロンビア・ピクチャーズ。アメリカの主要映画会社の一つとして数々の名作を生みだしてきたこの会社のトレードマークといえば、トーチを持った女性“コロンビアレディ”のロゴ。100年の歴史におけるその変遷を追っていきたい。

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コロンビアのロゴの女性が意味するものとは?

1918年にハリージャックのコーン兄弟と親友のジョー・ブラントの3人によって前身の会社、コーン・ブラント・コーン(CBC)フィルム・セールス・コーポレーションが設立されると、その後1924年の改名によりコロンビア・ピクチャーズがスタート。

CBC時のロゴはシンプルな文字だけだったが、社名がコロンビアとなるとおなじみの女性が登場。もともと“コロンビア”という言葉は、アメリカ大陸を発見したとされるコロンブスにちなんだアメリカの雅称。そしてアメリカ合衆国を女性キャラクターとして擬人化したのがコロンビアで、アメリカの象徴として歴史の様々なところに古くから登場してきた。

■初代コロンビアレディが掲げていたのはトーチじゃなかった!

そんな記念すべき最初のロゴでは、女性の出立ちは現在とは大きくかけ離れており、左手に盾、右手に小麦を持ったどこかローマ神話風。このロゴは1924〜28年まで使用された。その後は「COLUMBIA PICTURES」という文字が書かれた円のなかで女性がトーチを掲げるいかにもロゴといったものへと一時期的にチェンジ

さらに、その後は星条旗を肩から腰に羽織り、光り輝くトーチを手に持った女性が堂々と立ち、そしてバックに「A Columbia Production」(もしくは「A Columbia Picture」、「Columbia Pictures Corporation」)の文字がアーチ状に映しだされるものへと大幅にチェンジしていく。

これは現在まで続くロゴの原型ともいえるスタイルで、その後、布の模様が変わったり、真っ黒だった背景が雲になったり、「COLUMBIA」の文字が彫りの深い書体でデカデカと映しだされたり、とマイナーチェンジを繰り返していった。

なお、この2代目ロゴのイラストのモデルになったと言われているのがイヴリン・ヴェナブル。1930〜40年代に活躍し、『ピノキオ』(40)のブルー・フェアリーの声などで知られる彼女は、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにも名が刻まれている。

■現在まで使われるロゴの意外な誕生の裏側とは?

1977年になり、デカ文字「COLUMBIA」パターンが廃止されると、トーチにクローズアップしていき、その光がモダンなロゴへと変わっていくものと、トーチの光が強く輝くと「Columbia Pictures」の文字がコロンビアレディの後ろに出現するものの2パターンが誕生。マンネリ気味だったロゴに大きな変化をもたらした。

しかし、1992年にはクラシカルな路線へと戻すため、ニューオリンズ出身のアーティスト、マイケル・ディーズがデジタルで新たなロゴを作りだすことに。新たなロゴのモデルとなったのはなんとニューオリンズの新聞社で働くグラフィック・アーティストの女性ジェニージョセフという一般人。撮影したのはキャシー・アンダーソンという写真家で、アパートの一室を改造した小さなスタジオで、ジェニーのお昼休みを利用して撮影したそうだ。

トーチの光からズームアウトし、女性全体が映しだされていくこの新たなオープニングロゴは、1993年頃から使用されると背景の色味などのマイナーチェンジは繰り返しつつも、現在まで使われるおなじみのものとなった。

■作品のテイストが盛り込まれたユニークなロゴたち

マイナーチェンジに加え、人間がロゴに登場するという性質もあってか、数多くの映画でそのテイストが盛り込まれたユニークなアレンジ版が作られてきたコロンビアのオープニングロゴ。例えば『ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス』(59)は、いつも通りのイラストかと思いきや実は実写となっており、コロンビアレディが台座に現れたネズミに驚き、その場から去ってしまう意表を突くものとなっていた。

ジェーン・フォンダ主演の西部劇『キャット・バルー』(65)では、コロンビアレディがアニメテイストの強いウェスタン娘となって銃をぶっ放したり、ディスコを舞台にしたドナ・サマー主演作『イッツ・フライデー』(78)ではレディが音楽に合わせて腰をくねらせて踊ったりとバリエーション豊か。

トーチの光を劇中アイテム・ニューラライザーに見立てた「メン・イン・ブラック」シリーズ、伽耶子にちなんでレディの髪が伸びる『呪怨 パンデミック』(06)、襲い来るゾンビレディがトーチで殴り殺す『ゾンビランド:ダブルタップ』(19)、本編さながらの多彩なタッチの映像が次々と切り替わった『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)(『キャット・バルー』のロゴに登場するウェスタン娘の姿も!)…と数え上げれば枚挙に暇がないほど。

また『2999年異性への旅』(00)では出演者のアネット・ベニングの顔をコロンビアレディに重ねているが、これはアネットがコロンビアレディのモデルなのでは?と噂されていたことに対する粋なジョークとしてロゴがアレンジされるなど、コメディ系を中心に数々の作品に遊び心をもたらしてきた。

100年という歴史のなかで、ソニーの傘下に入るなど様々な変化を経験しながらも、決して変わることのなかったコロンビアレディ。伝統のロゴがどのようになっているのか、今後の作品はもちろん、過去作を観る際にも注目してみてほしい。

文/サンクレイオ翼

トーチレディでおなじみのコロンビア・ピクチャーズのロゴの歴史を辿ってみた!/[c]Columbia Pictures/Everett Collection