ANAが導入し、機内が公開された貨物専用機「ボーイング777F」。ボーイングの従来機「747F」と比べてはどのようなものなので、ボーイング側がこのシリーズの開発に注力するのはなぜでしょうか。

747Fと比べると容量も貨物室の広さも少なめ

ANA(全日空)グループの貨物専用航空会社、ANAカーゴが2機導入している大型貨物専用機「ボーイング777F」。この機内が報道陣へ公開されました。

ボーイング777Fは、旅客機777-200LRをベースにした大型の貨物機で、日本の航空会社が同型機を導入するのはANAグループが初めてです。「BLUE JAY(ブルージェイ)」という、北米に生息する青い翼の鳥、日本名「アオカケス」の名が愛称として与えられ、機体後部の左側には、そのマークも描かれています。

搭載重量は、それまでANAカーゴの主力機であったボーイング767Fと比較して2倍近い102tを誇ります。

ただこの数値、先代モデルにあたる、いわゆる「ジャンボジェット」の貨物機型747Fシリーズには及びません。747Fシリーズは747-400F113t(カーゴルクスより)、最終型の747-8Fで133t(日本貨物航空より)となっています。

ベースが半世紀前の機体である747Fシリーズを後継する大型貨物専用機が777Fですが、747Fシリーズは2階建ての胴体のメインデッキ(1階)をすべて貨物室にできることから、搭載重量や対応可能な貨物の大きさといった観点で777Fは比較されがちです。

777Fの貨物室は747Fシリーズとは異なり、メインデッキをすべて使用できるわけではありませんが、それでも「世界最大の航空機エンジン」といわれているゼネラル・エレクトリックGE90シリーズ(ボーイング777-300ERなどに装備)も搭載できるとのこと。747にも劣らないような大型の貨物室であることは間違いありません。

結局「ボーイングの超大型貨物機」は生まれるのか?

その一方で、エンジン4基の747Fシリーズとは異なり、777Fのエンジンは2基です。それゆえに燃費効率や騒音なども低く抑えることができます。

なお、製造元のボーイングは2023年、最後の747-8Fを完成させ、これをもって747Fを含めた747シリーズの生産を終了すると発表しています。

ボーイングは12月に実施した記者会見で、“747F後継問題”について幹部が次のように回答しています。

「実は超大型機を必要とするような航空貨物の需要は、全体の5%未満です。また、747Fシリーズは今後25年に渡り運用されていくでしょう」

つまり、747Fほどの搭載重量が必要な場面はそれほど多くなく、それは747Fで賄えるということ。ボーイングの大型貨物機としては、大きさと環境性能を兼ね備えた777Fが今後の主力となっていくことでしょう。

なお、ANAグループでは777Fのなかでも最新型の「777-8F」をすでに2機発注しています。こちらは777Fよりも燃費効率や騒音にさらに改善が見られる一方で、最大118トンの搭載重量を持つモデルです。

ちなみに、同社の777Fの機内には客室もあり、内部にはビジネスクラスのような座席やベッド、「ギャレー」と呼ばれる簡易キッチンなども存在します。

報道陣に公開されたANAカーゴのボーイング777F(乗りものニュース編集部撮影)。