株式会社ロッテは「噛むこと健康研究会」(代表理事:松澤佑次) の理念に賛同し、活動に参画しています。この度、本会ホームページにて、第5回年会の講演動画(https://kamukotokenko.jp/lectures/)を2024年1月10日(水)~2月29日(木)までの期間限定で公開しましたので、お知らせいたします。本研究会は「噛むこと」と健康の研究実施と、その効果を世の中に広めていくことを目的として活動しております。第5回年会では、栄養学や高齢者歯科学、老年学の専門家らより、咀嚼の生活習慣病や肥満予防効果、咀嚼回数測定による行動変容、オーラルフレイル(お口の衰え)の全身への悪影響とガム咀嚼習慣による、その予防可能性などを講演していただきました。どなたでもすべて無料でご覧いただけます。ぜひ、この動画をご覧いただき、皆様の健やかな生活にお役立ていただきたいと考えております。
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第5回年会概要
●日時 2023年11月10日(金) 13:00~17:05 ●場所 東京マリオットホテル(東京都品川区)
●内容 ・開会の辞 住友病院 名誉院長・最高顧問 松澤佑次氏
・講演1 咀嚼と健康に関する研究 -栄養学の視点から-
静岡県立大学 食品栄養科学部 教授 桑野稔子氏
・講演2 咀嚼行動変容のためのアプローチ
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野 教授 堀一浩氏
東京大学 高齢社会総合研究機構 特任助教 田中友規氏
・講演4 噛むことの研究成果と活動について
株式会社ロッテ 中央研究所 噛むこと研究部 主査 菅野範
・パネルディスカッション
噛むことの研究分野の広がりと今後の展望
座長 住友病院 名誉院長・最高顧問 松澤佑次氏
・閉会の辞
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開会の辞
一般財団法人住友病院
名誉院長・最高顧問 松澤佑次氏
本日、第5回噛むこと健康研究会年会を皆様とともに開催できますことに大きな喜びを感じております。超高齢社会が急速に進行している日本においては、医学、歯学両分野から高齢者の口腔環境の改善のための「噛むこと」の意義に高い関心が持たれてオーラルフレイルの概念も生まれました。噛めないことが、食習慣や社会活動の変容をもたらし、様々な疾病のリスクを高めることが報告されています。「噛むこと」はすべての世代においてとても大切なことであり、私は「噛むこと」を通じて人々のQOLの改善に貢献できると考えております。本日は、各分野で最新の研究をされている先生方にご講演いただき、さらに皆様とディスカッションすることで「噛むこと」の科学的な意義を追究していきたいと思います。
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講演1
「咀嚼と健康に関する研究
-栄養学の視点から-」
静岡県立大学 食品栄養科学部
大学院薬食生命科学総合学府
教授 桑野稔子氏
<主な講演トピックス>
・女子大学生対象の研究で、噛み応えのある食物摂取量は、全体の1割以下であり、現代の食事は、軟性食物傾向
が明らかとなりました。最大咬合力は、除脂肪体重と運動歴有りとの間に有意な正の相関がみられ、運動などで
筋肉量を維持することで、良好な咀嚼能力が維持される可能性が示唆されました。
・中年男性を対象として、野菜が豊富で栄養バランスの整った昼食を3か月間摂取してもらうと、2日に1回以上喫
食した対象者の体脂肪率、血圧、総コレステロール、LDLコレステロールなどの数値が改善しました。行動変容
が難しい中年男性においても、昼食を変えるだけで、生活習慣病の予防・改善に有効であることが明らかとなり
ました。
・肥満/過体重の女子大学生に毎食食前ガムチューイングを10分間、9週間実施してもらった結果、総ガムチュー
イング時間の長かった群は、9週間後に体重、BMI、体脂肪率、腹囲、MRIによる腹部脂肪が有意に減少しまし
た。
・女子大学生を対象として、咀嚼能力低値群と高値群に分け、ストレス負荷試験を実施しました。その結果、咀嚼
能力が高い群は、一時的にストレスがかかってもすぐに自律神経バランスが安静状態へ回復し、ストレス耐性が
あることが明らかとなりました。咀嚼能力を高めることは、心理社会的ストレスの緩和に寄与する可能性が示唆
されました。
・健康的な生活を送るためには個人が意識的に噛み応えのある食事の工夫をする事が必要です。噛み応えを増やす
食事の工夫として、食材、調理方法、メニューの選択を意識していくことが大切です。
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講演2
「咀嚼行動変容のためのアプローチ」
新潟大学大学院 医歯学総合研究科
包括歯科補綴学分野
教授 堀一浩氏
<主な講演トピックス>
・シャープ株式会社と共同で咀嚼計測装置であるバイトスキャンを開発しました。バイトスキャンを使用すること
により、咀嚼回数、一口咀嚼回数、咀嚼速度、食事時間、姿勢などをモニターすることが可能となりました。
・バイトスキャンによる4週間の噛むことの意識付けにより、おにぎり(100g)の咀嚼回数が有意に増加し、アン
ケート調査により92.8%の人が噛むことへの意識が高まっていることがわかりました。
・小学生のいる4人家族12組に対して、4週間のガム咀嚼(1回10分、1日3回)及びバイトスキャン(夕食時に装
着)による介入を行いました。介入前後で、咀嚼機能(咀嚼チェックガム評価)が有意に改善し、おにぎりの咀
嚼回数、咀嚼時間も有意に増加しました。家族皆で噛むことを意識しながら食事を摂ることの有効性が示されま
した。
・小学校5年生47名に対して咀嚼の実態調査を行い、本人へのフィードバック、対策の立案、1週間のバイトスキ
ャン装着(給食時に使用)による噛むことへの意識付けを行った結果、咀嚼行動(咀嚼回数、一口咀嚼回数、食
事時間、取り込み回数、咀嚼スピード、姿勢)に有意な改善が認められました。
・咀嚼行動を変容させるためには、噛むことに対する正しい知識の提供と、自分の咀嚼の実態を知ることが重要で
す。バイトスキャンの様なツールを活用することは有効な方法と考えます。
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講演3
東京大学 高齢社会総合研究機構
特任助教 田中友規氏
<主な講演トピックス>
・オーラルフレイルは、歯の喪失や口の様々な衰えの重複により口の機能低下の危険性が増加している状態です。
オーラルフレイルは適切な介入や予防行動により改善が可能であることから、歯科医療現場や地域の集いの場な
どでその対策が実施されつつあります。
・過去の調査において、自立して生活している方でオーラルフレイルと認定された方が16%存在しました。その
方々の2年後のフレイル、サルコペニアになるリスクは約2倍、また4年後の要介護や死亡のリスクが約2倍高い
ことが分かりました。
・オーラルフレイルの評価基準として、機器を必要とせず主観的に評価可能な新5項目、1.歯科・口腔状態、2.嚥
下困難感、3.咀嚼困難感、4.口腔乾燥感、5.滑舌低下が提案されており、2項目以上該当する方をオーラルフレ
イルとしています。
・平塚市においてフレイル予防・改善プログラム「カムカム教室」を実施したところ、口腔機能等だけでなく社会
性も向上することがわかりました。フレイル対策は、医療関係者だけではなく地域のボランティアや産業界の方
など、多職種の方々の協力で生活
面からしっかりとサポートしていく必要があると考えます。
・横断的な調査研究において、週30分以上のガム噛み習慣を持つ高齢者では、オーラルフレイルの有症率が低く、
身体機能や認知機能に良い影響があることがわかりました。
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講演4
「噛むことの研究成果と活動について」
株式会社ロッテ 中央研究所
噛むこと研究部
主査 菅野範
<主な講演トピックス>
・高齢者がオーラルフレイルの状態に陥ると、要介護認定、死亡リスクが高まることが報告されています。オーラ
ルフレイル対策として、高齢者にお口のエクササイズプログラム(ガムトレーニングを含む)を1日3回、1か月
間行ってもらうと咀嚼能力や舌の力が改善することがわかりました。
・東京医科歯科大学と共同開発した「キシリトール咀嚼チェックガム」は、咀嚼能力をガムの色変わりで判定する
ものであり、研究や歯科医院でも活用されています。近年、咀嚼チェックアプリも導入され、より簡便に正確で
客観的な評価が可能となりました。
・子どもの口腔機能の発達不全状態の一つである「お口ポカン」が注目されています。フーセンガムを用いて楽し
みながら口腔トレーニングを行うことで、「お口ポカン」状態が改善されることが確認されました。幼稚園で実
施した研究でも、咀嚼能力や唇の機能が向上しました。
・美容分野の研究では、ガム咀嚼習慣があるグループは頭頂部の毛髪が太いという結果や、成人女性がガム咀嚼を
継続的に行うことでフェイスラインが引き締められるという結果も得られています。
・すべての世代にとって「噛むこと」は大切であり、皆様の健康やQOLの改善に向け、今後も研究・啓発活動を進
めていきたいと思います。
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パネルディスカッション
噛むことの研究分野の広がりと今後の展望
座長 一般財団法人住友病院
名誉院長・最高顧問
松澤佑次氏
今年度のパネルディスカッションにおいて「噛むことの研究分野の広がりと今後の展望」というテーマを設定し、本研究会の理事、アドバイザー、講演者 計10名のパネラーの皆様にご登壇頂き、それぞれのご専門の立場から以下のご意見を頂きました。
・咀嚼能力の低下は肥満や糖尿病と関わっており、健康に大きな影響を及ぼす。今後、「噛むこと」の大切さを世
の中に広めていくためには、行政(厚生労働省)に働きかけ賛同を得る必要がある。また、啓発に向けたわかり
やすいワードづくりも大切である。
・オーラルフレイルの概念は日本でできたものであり、海外での注目度はまだそれほど高くない。国内で「噛むこ
と」に対する賛同者を増やしていくためにも海外での理解度・研究熱を高めていく必要がある。「噛むこと」の
啓発取組の全体像について本研究会で戦略的に考えていく時期に来ている。
・幼少期に口腔機能が発達していないと不正咬合が起きる。正しい歯列の形成には永久歯が生え揃う前に正しい噛
み方を覚えることが重要である。子どもの咀嚼の重要性については更なる啓発が必要である。
・「噛むこと」は、すべての世代の健康に大きな影響を及ぼす。「噛むこと」は広範囲な研究領域であることか
ら、様々な分野の研究者、企業の皆様がしっかりと連携し、啓発に向けたツール開発や生活者に向けた情報提供
を行っていく必要がある。
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研究会の様子
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理事・アドバイザー・講演者
前列左から
理事:芦谷浩明、理事:下村伊一郎
ロッテ社長:牛膓栄一、代表理事:松澤佑次
理事:水口俊介、アドバイザー:小野高裕
講演者:桑野稔子
後列左から
アドバイザー:宮下政司、アドバイザー:葛西一貴
講演者:田中友規、講演者:堀一浩
講演者:菅野範
(敬称略)
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噛むこと健康研究会役員
(五十音順)
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噛むこと健康研究会概要
発足の経緯
近年、「噛むこと」と生活習慣病や認知機能などとの関係が解明されつつあります。それらはさらに様々なアプローチで研究され、新たなエビデンスが積み上げられています。同時に、そのような有益な研究成果を社会に発信することは、社会課題の解決にもつながります。こうした中で、医学、歯学、栄養学、スポーツ科学など多分野の研究者が集まり、「噛むこと」を通じて健康寿命の延伸及び生活の質の改善に貢献するため、2018年「噛むこと健康研究会」が発足致しました。
会の目的
下記の理念のもと、「噛むこと」と健康に関する研究の実施、情報・意見の交換を進め、噛むことの大切さを発信することを目的としております。
エビデンスに基づいた情報の発信により、人々に「噛むこと」の効果について正しく伝える。
健康に資する噛む回数の目安を設定し、「噛むこと」の効果を分かりやすく伝える。
健康へのメリットの高い噛み方、食品等の効果を検証し伝える。
活動・取組
上記目的を達するため、以下の活動を行って参ります。
「噛むこと」の実態調査研究、及び「噛むこと」の健康効果に関する基礎研究・介入研究
「噛むこと」と健康についての情報収集及び提供
「噛むこと」の効果を啓発する為の研究発表会の開催
その他、目的を達成するための活動や事業
【この件に関するお問い合わせ先】
■一般の方からのお問い合わせ先
●TEL:0120-302-300(フリーダイヤル)
配信元企業:株式会社ロッテ
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