北朝鮮ではここ数年、覚せい剤取引などを理由にした処刑が増えており、公開よりは非公開で執行される処刑が多いくなっている。また、当局が自ら刑法を破って未成年者に死刑を宣告したり、妊娠女性に対して死刑を執行したりするなどの事例も見られる――。

韓国政府の統一研究院は10日、ソウル中区の韓国プレスセンターで記者懇談会を開き、こうした内容を含む「北朝鮮人権白書」の2023年版を公開した。白書は「2015年の時点で、北朝鮮刑法は8つの罪目に対して法定最高刑として死刑を規定していたのに対し、2022年に改正された刑法では11つの罪目に対して法定最高刑として死刑を規定している」と指摘。また「ここ数年間、迷信行為(宗教や占いなど)や麻薬(覚せい剤含む)取引行為と韓国の映像コンテンツの視聴・流布などを理由にした死刑執行が増えた」としている。

統一研究院は今回の白書編さんに当たり、韓国に入国した脱北者のうち、最近まで北朝鮮に滞在していた71人を対象にした深層面接を行った。

白書によると、深層面接に参加したある脱北者は、2018~2019年に迷信行為に対する政策的統制がなされる過程で公開処刑があったという話を聞いたと話した。 2018年に北朝鮮から離れた両江道(ヤンガンド)出身の脱北者は、最近、薬物関連で銃殺されるケースが多いと証言した。白書は、公開処刑より非公開処刑が増えたとする証言が多数得られたとも明らかにしている。

北朝鮮は刑法第37条で、犯行当時18歳に満たなかった者に対して死刑を宣告できず、妊娠した女性に対しては死刑を執行できないと規定している。 しかし、統一研究院などの調査では、北朝鮮がこれに違反した事例が多数、把握されている。

軍の冬季訓練を視察する金正恩氏(朝鮮中央テレビ)