※本稿は、チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

日経平均は昨日、バブル後高値を更新、株高継続のカギは企業業績、企業改革、賃金の動向。

●来週から東証要請への取り組みを開示する企業名が毎月公表、企業改革進展なら株高継続へ。

●3月中旬の賃上げ傾向確認で日経平均は34,600円も、4月以降は来年度の業績予想に注目。

日経平均は昨日、バブル後高値を更新、株高継続のカギは企業業績、企業改革、賃金の動向

日経平均株価1月9日、前週末比385円76銭(1.2%)高の33,763円18銭で取引を終え、昨年7月3日バブル経済崩壊後の高値(終値ベース、33,753円33銭)を約6ヵ月ぶりに更新し、1990年3月以来、およそ33年10ヵ月ぶりの水準をつけました。本日の取引では節目の34,000円を超えてきており、今回のレポートでは、株高継続のカギを握る目先の材料を整理します。

昨年12月26日付レポートでは、2024年の日本株を見通す上で重要なポイントとして、「企業業績」、「企業改革」、「賃金」の3つをあげました。このうち「企業改革」に関し、来週15日に重要なイベントが予定されています(図表1)。東京証券取引所(以下、東証)はこの日、東証の要請に基づき資本効率改善などの取り組みを開示している企業の一覧表を公表します。

来週から東証要請への取り組みを開示する企業名が毎月公表、企業改革進展なら株高継続へ

東証は昨年8月29日、上場企業による取り組みの開示状況を公表しましたが、具体的な取り組みなどを開示した企業の割合は、プライム市場で20%、スタンダード市場では4%にとどまりました(図表2)。来週15日に公表予定の一覧表には、証券コード、企業名、市場区分、業種、要請に基づく開示状況(開示済/検討中の別)、英文開示の有無、が掲載される見通しのため、開示がどの程度進展したかを確認することができます。

来週15日公表分は、2023年12月末時点のコーポレート・ガバナンス(CG)報告書の状況に基づいて集計が行われますが、一覧表はその後、各月末時点の状況に基づき、翌月15日を目途として毎月更新されることになります。これにより、国内外の投資家は企業改革の進展を毎月確認することができるようになり、企業の取り組み開示が着実に進展していけば、株高傾向が続く可能性は高まると思われます。

3月中旬の賃上げ傾向確認で日経平均は34,600円も、4月以降は来年度の業績予想に注目

東証が上場企業に要請した資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応や、その取り組みの開示は義務ではありませんが、要請に基づいて行動する企業は増加し、企業改革は進んでいくと思われます。そして3月中旬には、「賃金」に関する重要イベント、春闘の集中回答日が控えています。弊社は2024年の平均賃上げ率について、昨年の3.58%を上回る4.0%を予想しており、株価には好材料と考えます。

3つのポイントのうち、企業改革と賃金の改善傾向が早々に確認されれば、日経平均は1-3月期中にも、昨年11月13日付レポートで指摘した上値目途、34,600円近辺への到達が期待されます。なお、4月下旬からは3月期決算企業の2023年度本決算が本格化します。残りの「企業業績」は、そこで企業が公表する2024年度の業績見通しが注目され、業績の底堅さが確認されれば、株高基調を支える方向に作用すると思われます。

(2024年1月10日

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均は「バブル後高値」を更新 ~“株高継続のカギ”を握る材料を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

(※写真はイメージです/PIXTA)